ヴィンテージ時計店『ファイアーキッズ』が提案する、次世代を作る若者たちへの提言
ヴィンテージ時計の販売・買取を行う『ファイアーキッズ』が、2025年3月10日に、東京都中央区銀座にある銀座ナイン2号館に、新しく3つ目の店舗をオープンしました。
CEOの遠藤元樹さんは、「ヴィンテージ時計に興味のないビギナーのお客様にこそ、時計の魅力を伝え、市場を広げていきたいです」と語ります。
魅力の一つとして挙げるのが、自分が生まれた年に製造された「生まれ年時計」。「生まれ年時計」を身につけて、経年変化や時の流れといったヴィンテージ時計の良さを味わってみてはいかがでしょうか。

ソトコト 2025年3月10日にオープンしたヴィンテージ時計専門店『ファイアーキッズ』銀座ナイン店は、1995年に創業した横浜本店、2023年に開業した中野ブロードウェイ店に続き、3軒目の店舗となります。銀座ナイン店のコンセプトを教えてください。
遠藤さん(以下遠藤) 『ファイアーキッズ』には“ミスター・ファイアーキッズ”というマスコットがいて、横浜本店は時計好きが唸るマニアックな彼のコレクションルーム、中野ブロードウェイ店は国産時計に焦点を当てたコレクションルームというコンセプトで運営しています。そして、銀座ナイン店は彼の「邸宅」というコンセプトで、海外・国内150以上のブランドの、1900年代から2005年までの約100年間に製造、販売されたヴィンテージ時計400〜500本を常時取り揃え、横浜本店と中野ブロードウェイ店を包括したような店舗として運営しています。
ソトコト 銀座ナイン店ならではの特徴はどんなところにありますか?
遠藤 私たちは、「時計好き仲間を増やす」というパーパスを掲げているので、店舗の敷居を上げることがいいことだとは考えていません。そこで、店舗の扉を取り払いました。銀座ナインの通路に沿って扉のない2か所の出入り口を設け、気軽に出入りしていただくことで、ご新規のお客様もご来店いただきやすい環境を作っています。
ソトコト 店内にも工夫が施されていますね?
遠藤 はい。店内の壁の角にも棚を設けて時計をレイアウトしたり、照明も美術館のように、時計が浮き上がるような光の当て方をするなど、「邸宅」としてのこだわりを細部にまで表現しています。
ソトコト ヴィンテージ時計のビギナーの方々に時計の魅力を広めたいという思いで運営されていると聞いています。なぜ、ビギナーのお客様を大切にされるのですか?
遠藤 私たちは、ヴィンテージ時計業界には2つの社会課題があると考えています。1つは、ヴィンテージ時計が枯渇資源であることです。ヴィンテージ時計は新たに製造されるものではないので、数が減少し、枯渇していくのは自然の流れです。ただ、その減少の仕方に課題があるのです。元々、日本は世界的に見ると時計が安い国で、さらに為替レートの状況もあって、おそらく今、日本は世界で一番安くヴィンテージ時計が買える国の一つになっていると思います。そのため、インバウンドのお客様が日本のヴィンテージ時計を数多く買い求められ、どんどん海外に流出しているのが現状です。私たちには、それを日本に留めておきたいのです。でなければ、腕時計のマーケットの1パーセントと言われているヴィンテージ時計の市場がますます縮小し、日本でヴィンテージ時計を選べない、買えないという未来が来てしまうからです。
ソトコト ヴィンテージ時計を日本国内に留めるには、どんな取り組みが必要でしょうか?

遠藤 一つが、ビギナーの方々にヴィンテージ時計の魅力を知っていただき、ご購入いただくことです。そのアイデアとして提唱しているのが、「生まれ年時計」です。私たちは、製造から20年以上が経った時計を販売していますが、なぜ20年かというと、20歳、つまり成人式を迎えられた年に、ご自分の生まれた年の時計を身につけていただきたいという思いを込めて販売しているのです。時計は、時を刻むもの。社会的に大人と認められる記念の年に、ご自分と同じ時を歩んできた時計をつけ、今後も一緒に歩んでいかれるというのは、時計を販売する私たちからしても、とても嬉しいことです。ぜひ、成人になられた記念に「生まれ年時計」をご購入いただき、ヴィンテージ時計に関心を持ってもらえたら幸いです。もちろん、成人を迎えた方々に限らず、35歳の方も、50歳の方も生まれ年時計を身につけていただき、経営者の方なら会社の設立年の時計をつけていただくことが、ヴィンテージ時計に対する関心を高めていただく一つのきっかけとなり、市場の広がりにつながるものと考えています。
ソトコト 日本の時計市場を広げることで、海外への流出を防ごうということですね?
遠藤 はい。1パーセントというヴィンテージ時計の市場を支えている方々に発信することも大事ですが、それ以上に、1パーセントの市場の外におられる方々、つまり、時計に興味がない方々や時計に興味を持ち始めたビギナーの方々に、ヴィンテージ時計の魅力を発信することがより重要だと考えたのです。そこで、『REAL VALUE(リアルバリュー)』に関わる取り組みを始めました。『REAL VALUE』は、実業家の堀江貴文さん、実業家の溝口勇児さん、実業家でYouTuberの三崎優太さんがチェアマンとして起業家や経営者に学びを届ける経営エンターテイメント番組で、『ファイアーキッズ』はそのスポンサーとなって番組に協力させていただいています。今回、アーバンライフメトロの記事でも、溝口さん、三崎さん、スペシャルアドバイザーで起業家の西川将史さん、実業家の中野優作さんの4名の方々にご登場いただきました。皆さんに、私たちがギフティングさせていただいた生まれ年時計を腕に巻いてくださっています。
ソトコト ヴィンテージ時計と『REAL VALUE』の方々は意外な組み合わせに思われますが?
遠藤 意外ですよね(笑)。意外どころか、私たちのSNSに『REAL VALUE』のことを投稿すると、「なんでこんな人たちと手を組むのか?」「『ファイアーキッズ』は変わってしまった」「もうお店には行きません」といったネガティブなコメントを多くいただいています。ただ、私たちは、1パーセントの市場の外にいる方々にヴィンテージ時計の魅力を知っていただきたいがゆえに、『REAL VALUE』と手を組み、発信しているのです。批判的なコメントをくださるのは、ヴィンテージ時計が好きな方々や『ファイアーキッズ』のファンの方々がほとんどです。でも、その方々が10年後も日本国内で時計を選べる、買える未来を作っていくためにも、ビギナーの時計好き仲間を増やして新たな国内市場を開拓し、海外流出を防ぐ必要があるのです。そのためのスポンサー活動だということをわかっていただければ嬉しいのですが。

ソトコト 「2つある」とおっしゃった、もう一つの社会課題とは何でしょうか?
遠藤 ヴィンテージ時計業界の人材不足です。高齢化と、専門性が高い業界なので未経験者が受け入れられにくいこと。蓄積された時計の知見が、若い人たちに受け継がれていないと感じることがよくあります。ですから、『ファイアーキッズ』では、スタッフの未経験採用にも力を入れています。ビギナーのお客様にご来店いただいた時に、対応するのが熟練スタッフだけでは視座が合わないからです。もちろん経験に基づく知識は宝です。他方で未経験スタッフの素直な視点というのも、ビギナーのお客様にとっては重要だと考えています。経験の浅いスタッフはビギナーのお客様と視座を合わせやすく、時計に関する初歩的なご希望や疑問に答えられる場合が多いのです。2025年になってから6名の新人スタッフを採用していますが、全員、時計に関しては未経験者です。もちろん、日々時計の知識は身につけていますが、ビギナーのお客様にとって居心地のいい空間を作れているのではないかと自負しています。ぜひ、視座や相性の合うスタッフを見つけて、身につけたい時計について楽しく語り合ってほしいです。
ソトコト そんなビギナーのお客様に、ヴィンテージ時計の魅力を一つ伝えるとしたら?
遠藤 経年変化、ですね。同じ経年変化をした時計に出会うことはほとんどありありません。文字盤が少しムラになっていたり、ベルトに小さな傷がついていたり。発売当時は量産品だったとしても、時を経て、希少価値の高い時計になっていたりもします。同じ個体を探すことはできても、同じ風合いの時計を探すことは難しいかもしれません。まさに、一期一会です。ちなみに、今日私がつけている時計は20年前に購入したものです。特にレアな時計でもなく、お店のスタッフに勧められて購入しました。20年が経った今、これと同じ時計は1本も見たことがありません。探しても出てきません。なぜかというと、レアではなく、プレミアム価格もついていない、いわば平凡な時計だからこそ市場に出てこないのです。レアモデルではないため、いつしかなくなってしまったり、修理用のパーツを取るためのドナーとなってしまったりといった理由で、逆に希少価値が生まれ、気づいたら世界に一つしかない自分だけの時計になっているという。それも、ヴィンテージ時計の魅力でしょう。
ソトコト ヴィンテージ時計というと男性的なイメージがあるのですが、女性のお客様はいかがですか?
遠藤 近年は女性のお客様も増えています。ファッションで、洋服やバッグ、アクセサリーなどヴィンテージのアイテムに価値を求めると同時に、時計にもヴィンテージの良さを見出される方が増えているからです。もう一つは、サイズ感。ヴィンテージの腕時計はレディースモデルだと30ミリ以下、男性もので34ミリや36ミリのサイズが主軸で、それは現行時計としてはかなり小さなサイズになります。ヴィンテージ時計のサイズ感は日本人の手首の大きさにも合うし、女性が男性ものをつけることもできます。そんな理由から、女性ファンも増えているのだと思います。
ソトコト ぜひ女性も、銀座ナイン店にご来店していただきたいですね。最後に、ビギナーのお客様にメッセージをいただけますか?
遠藤 ビギナーの方も時計をお買い求めいただきやすいように、最大60回まで無金利でのショッピングローンを無期限で実施しています。60万円の時計は高いと感じるかもしれませんが、月々1万円のお支払いだとするとそれほどのご負担に感じないのではと考えています。また一括購入で、10万円以上の時計でしたら、ご購入から1年間以内であれば、原則ご購入価格の80パーセントで買い戻しを行っています。別の時計が欲しくなった時にご利用いただくと、サブスク感覚で時計を手に入れ、楽しんでいただくことができます。ぜひ一度、銀座ナイン店にご来店いただき、ヴィンテージ時計の魅力を感じていただきたいです。スタッフ一同、お待ちしております。

【店舗情報】
ファイアーキッズ 銀座ナイン店
東京都中央区銀座8丁目7番地先銀座ナイン2号館
03-6264-6926
11時〜19時
水曜定休