File no. 108
《Spring Court/スプリングコート》
スニーカーは時代を象徴するファッションアイテムの1つだろう。
その時代のトレンドを映したデザインでありながら、道具としての機能性を日々進化させてきた。
いくらデザインが今風でも、軽くて履き心地に優れていなければ、それは一過性のモノとして時代のサイクルに消されてしまう。
だから、スニーカーのロングセラーというのは実は本当に難しい。
それでもロングセラーのスニーカーは存在する。
その代表例として、世界的に知られているのが《スプリングコート》のスニーカー「G2 クラシック」だ。その名作をもとに、フランスを代表するブランド《スプリングコート》の歴史を紐解く。
1870年、フランス・アルザスの樽職人であったセオドア・グリムメイセンは、故郷を離れてパリ近郊に工場を設立する。
彼の息子は樽の完璧な水密性を実現するため、ラバーに目を向ける。
セオドアの孫のジョルジュ・グリムメイセンもラバーに魅せられ、1930年に一体型で完全防水のラバーブーツ「コリブリ」を開発。
テニス好きだったジョルジュは、1936年にはクレーコートでプレーするためのシューズ「スプリングコート」を開発し、その製造をスタートさせた。
ソールに4つの空気穴が施された、この画期的なテニスシューズは瞬く間に広まり、プロ、アマを問わず、多くのプレイヤーたちに使用されるように。
その後、1970年代後半までコート上で一世を風靡した。写真のスニーカー「G2 クラシック」は、この歴史的なクレーコート用テニスシューズの後継モデルであり、時代の流れによって素材や機能に多少の改良は加えられてきたが、デザインに関しては当時のモデルとほぼ変わっていない。
1960年代に入ると、スポーツシューズの粋を超え、一般層にも広く浸透。
ロックスターやアーティストなど、多くの著名人にも愛用された。ビートルズ12枚目のアルバム「アビイ・ロード」のジャケット写真で、ジョン・レノンが「スプリングコート」を履いている姿はあまりにも有名。
また、彼はオノ・ヨーコとの結婚式においても同シューズを履いたという。
原型となったテニスシューズ「スプリングコート」の登場から、80年以上が経過した今現在もそのスタイルを変えることなく、長年発売され続けているロングセラー「G2 クラシック」。
クラシックなスニーカーを探しているならば、80年の歴史を秘めた一足はいかがだろう。
ちなみに、今では世界的に知られる《スプリングコート》というブランドネームは、1936年に登場したアイコニックモデルから取られたものである。