File no. 100
《Sperry Top-Sider/スペリー トップサイダー》
レザーシューズやスニーカー、登山靴にランニングシューズなど、着用シーンや使用用途により、シューズのカテゴリーは数え切れないほどある。
今回は、少しニッチなカテゴリーに属する「デッキシューズ」に注目したい。
ちなみにデッキシューズとは、ヨットやボートなどのデッキ(船の甲板)で着用するためのシューズのことで、水に濡れた甲板上で滑らないよう特殊な工夫が施されたものだ。
別名「ボートシューズ」とも呼ばれる。このデッキシューズを世界で初めて誕生させたのが《スペリー トップサイダー》だ。
創業者であるポール・スペリーは、海をこよなく愛する家族のもとに生まれた。
彼の祖父は幾度となく南太平洋を旅してきた船乗りで、幼いポールにさまざまな冒険の物語を語ってくれた。
それらのストーリーは彼の好奇心に火をつけ、航海への強い憧れを抱かせるきっかけとなる。
成長したポールは、航海を楽しむようになり、次第により安全・快適に航海を行うためのツールの必要性を強く感じた。
水に濡れた甲板は滑りやすく、海が荒れている状況では命をも落としかねない。
その危険な甲板に頭を悩ませたポールは、長きにわたる研究と試行錯誤を重ね、1935年遂に世界初のデッキシューズを誕生させた。
この世界初のデッキシューズの開発には、彼の愛犬が大きく関わっている。
氷の上を難なく走り回る愛犬の足裏に特徴的な溝があることに気づいたポールは、開発途中のシューズに特殊な溝を刻んだラバー製ソールを採用。
これが、荒れた海上の甲板でも滑りにくく、世界でもっとも優れたデッキシューズ誕生の瞬間だ。
開発した翌年の1936年から1940年代にわたり、ポールの開発したデッキシューズは、アメリカ中のクルージング・クラブからの注文が殺到した。
甲板上における安全性を第一に考え開発したことがセーラーたちの心を捉えたのだ。
その後の第二次世界大戦中には、アメリカ政府によりアメリカ海軍のオフィシャルシューズに認定された上、デッキシューズとしてだけではなく、ファッション的側面からも大いに注目を集めることに。
1981年に発行されたファッション界のバイブル、世界的ベストセラーの「オフィシャル・プレッピー・ハンズブック」にも、伝統的なプレップ・スタイルを象徴する正真正銘のフットウエアとして紹介されている。
現在は伝統的なデッキシューズの展開に加えて、幅広いライフスタイルシューズを提案中。歴史に名を刻むブランドの一足を、ぜひ手に入れてほしい。