警察庁が昨年末から、自動車運転中の携帯電話の使用に関する内容を含むパブリックコメントを募集している。
ひとつは2020年頃の実用化が期待されている、SAE(Society of Automotive Engineers International )レベル3の自動運転導入を想定した道路交通法改正についてだ。
SAEレベル3について今一度簡単に説明しておくと、自動運転システムがドライバーの能力すべてを代替できる場合には、システムがすべての運転操作を行うものの、条件を満たさなくなったときや故障が生じたときは、ドライバーに運転操作を引き継ぐ必要があるレベルをいう。
警察庁の改正試案では、自動運転システムを自動運行装置と呼び、それを作動させての走行を道路交通法上の運転とみなすとともに、装置の作動条件を満たさない場合は装置での運転を中止することや、装置の情報を記録する装置(作動状態記録装置) の搭載と情報保存義務などを記している。
それとともに注目したいのは、自動運行装置を使用しているドライバーは、ただちに運転を代わることができる場合に限り、現行法では違反となる携帯電話を手に持って使用することや画面を注視することは禁止に当たらないとしていることだ。
■大型車運転中にスマホを使うと5万円!
もうひとつは運転中の携帯電話使用についての対策。こちらは運転中に携帯電話で通話したり画面を注視したりしたことが原因の交通事故が増えており、平成29年中は2832件と5年前の約1.5倍に増加していることを踏まえている。
具体的には、運転中に携帯電話を使用した際の罰則を強化し、危険を生じさせた場合は現在の3か月以下の懲役または5万円以下の罰金から1年以下の懲役または30万円以下の罰金、それ以外の場合は5万円以下の罰金から6か月以下の懲役または10万円以下の罰金と、格段に厳しくしている。
さらに一定期間内に反則金を納めれば刑事手続きの対象にならない交通反則通告制度の反則金限度額については、危険を生じさせない場合でも大型車が1万円から5万円、普通自動車が8000円から1万5000円、小型特殊自動車が6000円から1万円へと、こちらも大幅に引き上げられる。
なお現在は大型自動車2万円、普通自動車1万5000円、小型特殊自動車1万円となっている、危険を生じさせた場合は、反則金の対象から外し刑事手続きにするという。
今回のパブリックコメントには、これ以外にもいくつか見直しの項目が含まれているが、もっとも驚くのは運転中の携帯電話の使用について、現時点では罰則を強化しながらレベル3自動運転では違反に当たらないとしていることだ。現在と未来の法律を同時に尋ねるような内容に戸惑っている人もいるだろう。
ちなみに筆者は、現時点での罰則強化については賛成だ。やはり運転中の携帯電話の使用が問題になっている自転車についても、同等の罰則を導入すべきだろう。携帯電話はたしかに現代人の生活には欠かせない。しかし運転中の使用は、注意力を確実に散漫にさせる。特にスマートフォンは画面を見ながらの操作が一般的なので、その度合いが増す。飲酒運転に通じるところがあるのではないかと思っている。
ただ筆者も使っているスマートフォンのカーナビは、経験者なら分かると思うが、一度セットすれば音声案内もしてくれるので、たまに画面を見る程度であり、注視には当たらないと考えている。
では一方のレベル3での携帯電話使用はどうかというと、まず当初のレベル3自動運転車は高価になるはずであり、限られた富裕層だけが使用を許される状況を多くのドライバーが許すだろうかという疑問がある。
さらに現状でも人身事故を起こすまで前方を見ていないようなドライバーが、自動運行装置が要請した場面でただちに運転を代わるだろうか。同時に携帯電話が自動的にオフになるぐらいの措置は必要ではないかという気がしている。
パブリックコメントの受付締切日は1月23日。気になる方はどしどし意見や情報を届けていただきたい。筆者もここに書いたことなどを送るつもりだ。