結婚したい気もするけど、しなくてもいいような気がする。ときどきふっと、ひとりでいるさみしさを感じる。これ、独身男性のひとりごと。男だからって寂しくないわけではないのだ。
■経済状況を考えると結婚を諦めざるを得ない
大学を卒業して、誰もが知る有名企業に入社したショウタさん(43歳)だが、3年経たずに退職した。人間関係につまづいたのだという。
「今思えば、上司のパワハラですね。当時は、組織になじめない自分がいけないんだと思っていたけど」
花形の営業職だったが、要領がよくない自分には向いていなかったのだと彼はつぶやく。その後はアルバイトで飲食業についたが、そこでもうまくいかなかった。
「しばらくアパートでひとりぼんやり過ごしていましたね。でも働かなければ暮らしていけない。そこでまたバイトをして、少し貯金ができるとひきこもって。そんな生活をしていました」
だが28歳のとき、このままではいけないと大学時代の先輩のツテで、とある中小企業に勤めることにした。ここでも営業職だったが、周りの人間関係は良好で、ショウタさんは適度に先輩にいじられながらかわいがってもらったという。
「社長が本当にいい人だったから、楽しかったですね。町工場に近いような職場だったけど、そのアットホームな感じが僕には合っていたんだと思います」
そこそこ生活できるくらいの給料ももらえたから、このままこの会社に骨を埋めたいと思うようになっていった。
■職を失い、恋人にも去られ…
32歳のとき、職場の先輩が紹介してくれた同い年の女性とつきあい始めた。穏やかで、だが笑顔の素敵な女性だった。半年ほどつきあい、結婚を考えたところで社長に話すと、とても喜んでくれたという。だがその1ヶ月後、社長が急死。副社長が社長になったが、ここから会社の業績がおかしくなっていく。その後、リーマショックも重なって会社は一気に縮小することとなり、ショウタさんもリストラされた。
仕事を失ったことを恋人に話すと、彼女は「ふたりでがんばろう」と言ってくれた。だが彼女も契約社員として働く身。ふたりの生活を支えるのはむずかしい。失業保険をもらいながら職業訓練校に通おうとしたが定員からはみ出して受講できない。焦燥感が彼を苛立たせ、彼女との関係にもヒビが入っていく。
「もう結婚はやめよう。そう言ったら彼女がほっとしたような顔をしたんですよ。自分から別れたいと言えなかったんだと思う」
それからは契約社員として働いていたが、今は体調を崩して自宅療養中だ。関西に住む高齢の両親のために実家に戻ることも検討している。
「両親とは折り合いが悪いから、大学からずっと東京で暮らしてきたんです。今さら帰りたくはないけど、両親が僕を必要としてくれるなら帰るという選択肢もありかなと。ただ、そうなるとますます自分の家庭を持つことはできなくなるでしょうね」
どう転んでも自分に輝く未来はないとしか思えない。ショウタさんは低い声でそうつぶやいた。