東京のFMラジオ局『J-WAVE』がネット上に配信しているサイトで、10月1日にオンエアされた特別番組『SAPPORO BEER OTOAJITO CHRONICLE』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)が9年半のライブラリーのなかから貴重な名トークを厳選したものをお届けしており、ここでは2009年にオンエアされた1回目のゲスト・布袋寅泰とのトークを振り返ったパートを紹介していた。
かなり興味深い記述が二つほどあった。一つは、「日常生活における音楽への接し方について」で、布袋は
「昔は自分の引き出しを満杯にするために、いろんなものから逆に影響されたいし、ビタミンを様々なジャンルから摂取してた。それが10代20代だったと思うんですけど、それがだんだん摂取しすぎてると、自分の音じゃなく何かの引用になってしまったりするから、ある瞬間からちょっと聴くのをやめた時期もありましたね」
……と語っている。「ビタミン」というあまりにベタすぎる表現も注目に値すべき点ではあるけれど、
「芸事に携わる者が他の“作品”をむやみやたらに摂取しすぎると、オリジナリティの呪縛が際立ち、その範囲が狭くなっていく一方で、いずれ身動きが取れなくなってしまう」
……というロジックは身に染みて理解できる。結果として二番煎じになったとしても、そこは開き直り、逆に(作為的にせよ無作為にせよ)“元ネタ”をどんなに巧妙に真似たとしても“ズレ”は必ず生じるもので、そのズレこそが個性となる……くらいの気概、潔さがあれば、その作品は仮に類似品があっても強く人の心を打つものだ。私は布袋のギターのそんな淀みない、オリジナリティの枠を、あと、運動神経を超えたトリッキーな動きが大好きだったりする。
もう一つは、「BOØWYというバンド名について」。なんと! 布袋は結成当初、『BOØWY』というバンド名に抵抗があったのだという。
「だって大好きなデヴィッド・ボウイの『ボウイ』ですよ? もう泣きたくなるくらいイヤでね。その前は『群馬暴威』って名前だったんですよ。『横浜銀蠅』がけっこう流行ってて、それに影響されたのかわからないけど、事務所に『群馬暴威』にしようって言われて。それは勘弁してよって。それが『BOØWY』となって。『BOØWY』でよかったなって思いましたけどね」
『群馬暴威』はともかくとして、あの布袋サンが憧れのデヴィッド・ボウイにちなんだ『BOØWY(ボウイ)』のバンド名をおこがましい……なんて思っていたとは!? 意外と普通のヒトと同じ感性を持っている一面もあるのね……と、ぶっちゃけ私はチョットだけ安心(?)して、より親近感を抱くことができた。天才(風)のアーティストが秘める“凡”な部分を垣間見られた、じつにいい話である。
とにもかくにも、セルフプロデュースに対する操作性が一切ない。第三者から「才人」と呼ばれようが「小市民」とガッカリされようがまったく関係なし! むやみに人を「天然」と形容する安易さは、原則としてあまり好きじゃないが、こんな布袋寅泰にこそ、私は「天才」……ならぬ「天然」なる最上級の称号を贈りたい!! ところでゴメス、オマエはいったい何様なのか(笑)?