「塩分を控えめに」というのはよく聞きますが、1日の塩分摂取量はどのくらいが目安なのでしょうか?また減塩となると難しそうなイメージもありますよね。この記事では、1日の塩分摂取量の目安や平均的な摂取量について、また減塩のコツについても管理栄養士が解説します。
1日の塩分摂取量の目安
健康な方の1日の塩分摂取量(食塩相当量)の目安は、成人男性は7.5g未満、成人女性は6.5g未満です。なお、子どもについては、年齢によって細かく設定されています。
【1日あたりの食塩相当量の目標量】
ただし、これはあくまで健康な方の目安。高血圧などの病気がある場合はさらに減塩が必要となります。
ちなみに小さじ一杯の塩が概ね5~6g程度。醤油などにも含まれるので、料理をするときの参考にしてみてくださいね。
※参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
高血圧な人の目安
高血圧な方の塩分摂取量目標は、1日6g未満。
減塩することで血圧が下がることがわかっているため、健康な方より塩分摂取量を少なくすることが推奨されています。
通院治療を行っている方は、個人によって塩分の目安が異なることがあるため、一度医師に確認しましょう。
※参照:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
血圧が高めの場合はどの基準を目安にすればよい?
高血圧ではなく、血圧が高めの「高血圧予備軍」の場合、塩分摂取量の目安は健康な方と同じです。1日あたり成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満となります。
高血圧の方の血圧の基準は140/90mmHg以上で、血圧が高めといわれるのは、120/80mmHg以上となります。
日本人は塩分を摂りすぎている傾向にあるため、まずは健康な方の目標量を目安にして塩分摂取量を減らしていきましょう。
日本人の平均的な塩分摂取量
令和元年の調査によると、日本人の塩分摂取量は、成人男性は10.9g、成人女性は9.3gです。
年々減少傾向にはありますが、それでも目標量より2.8~3.4gオーバーしており、まだ塩分を摂りすぎている状態です。
また日本では、20歳以上の約2人に1人が高血圧ということもわかっており、塩分の摂りすぎが問題視されています。
自分だけでなく、家族全員で減塩に取り組んでいく必要があるでしょう。
※参照:厚生労働省 令和元年「国民健康・栄養調査」
塩分を摂りすぎるとどうなるの?
塩分を摂りすぎると、血圧が上がり高血圧の原因となります。
さらに高血圧の状態が続くと、動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、心不全などの心疾患、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害や認知症のリスクとなります。
ほかにも、塩分の摂りすぎが胃がんのリスクとなることもわかっています。
日本の塩分摂取量目安は少しゆるい!?
先ほどご紹介した塩分摂取量の目安を厳しいと感じるかもしれませんが、じつはWHO(世界保健機構)は1日5g未満と、日本よりさらに少ない塩分摂取をすすめています。
日本の塩分摂取の目標量も年々下げられてきており、まだまだ減塩は必要です。健康を守るためにも日ごろから減塩を意識しましょう。
※参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
とくに塩分が多い食品・調味料は?
とくに塩分が多いのは、おもに下記の食品です。
・梅干しやたくあんなどの漬物
・ラーメンやうどんなどの麺類
・ベーコンやウインナーなどの肉加工品
・ちくわやかまぼこなどの練り製品
また醤油、みそなどの調味料も、使いすぎると塩分の摂りすぎになります。
1食あたりの塩分量は以下のとおりです。
塩分が気になる方は、なるべくこれらの食べ物を避けるか、食べる頻度を減らすようにしましょう。
※参照:文部科学省ホームページ「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
塩分を減らすコツ
減塩は日ごろの小さな積み重ねが大切です。
普段から薄味を心がけるほかに、以下のコツを取り入れると塩分摂取量を減らせますよ。自分が取り組みやすいものからはじめてみましょう。
塩分の多い食品は避ける
先ほど紹介した、漬物、ベーコンやウインナーなどの肉加工品、ちくわやかまぼこなどの練り製品は塩分の摂りすぎになってしまうため、なるべく避けましょう。もし食べる場合は、量を減らす、食べる頻度を減らすなどして、今までより減らせるように工夫してみましょう。
また、これらの食べ物の「減塩タイプ」が販売されていることがあります。そのような商品を探してみて利用するのもよいでしょう。
麺の汁は残す
ラーメンやうどんなどの麺類は、汁を残すことで塩分摂取量を減らせます。麺類の塩分が多くなってしまうのは、汁がたっぷりなのが理由です。
汁を一口程度にしておけば、塩分摂取量を半分ほどにカットできます。とくに麺類が好きでよく食べる、という方は意識してみましょう。
汁物は具だくさんにする
みそ汁やスープなどの汁物は、具だくさんを心がけましょう。汁物は汁の部分に塩分が多いため、薄味を心がけていても、たくさん飲んでしまうと塩分を摂りすぎてしまいます。
野菜やきのこ、海藻類をたっぷりと入れると、汁を飲む量を減らせるだけでなく、塩分を排出してくれるカリウムも補給できますよ。
しょうゆやソースはかけずにつける
焼き魚や揚げ物などにかけるしょうゆやソースは、小皿に入れて「つけて食べる」ようにしましょう。
しょうゆやソースを直接かけてしまうと、ついたくさんかけてしまいがちに。
小皿に入れることでかけすぎを防ぎ、しょうゆやソースの量を減らせます。
なるべくしょうゆやソースを使わずに食べるのが一番よいのですが、まずは小皿に入れて量を減らすことからはじめてみましょう。
塩分の排出にはカリウムを摂ろう
減塩を心がけると同時に、「カリウム」というミネラルを意識して摂ることも大切です。カリウムには摂りすぎたナトリウムを排出してくれる働きがあり、塩分の摂りすぎを調整してくれます。
カリウムは以下の食材にとくに多く含まれます。
・ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、枝豆などの野菜
・里芋、さつまいも、じゃがいもなどの芋類
・わかめ、ひじきなどの海藻類
・豆腐、納豆、大豆、あずきなどの豆、豆加工品類
・アボカド、バナナ、キウイフルーツなどの果物
このような食材を積極的に食事に取り入れるようにしましょう。
塩分摂取量に関するよくある疑問
塩分の摂取量のよくある疑問について解説します。
塩分は減らし過ぎても大丈夫?
塩分を減らし過ぎると身体に悪いのでは?と考えるかもしれませんが、実はヒトに必要な塩分(食塩相当量)は多くありません。
最低限必要と考えられる量は、世界保健機構(WHO)のガイドラインではナトリウム量で200~500mg(食塩相当量で約0.5~1.3g)、日本人の食事摂取基準では1.5gとされています。
食材自体にナトリウムが含まれていることもあり、少々の減塩では最低限必要な量を下回ることはないと考えられています。
ただし、多く汗をかく場面では熱中症対策として適量の塩分摂取がすすめられているため、全く塩分を摂らないというのは控えた方がよいでしょう。
夏の塩分摂取量は増やした方がよい?
熱中症対策で、夏は塩分を多く摂取した方がよいのでは?と思うかもしれませんが、通常の食生活を行っている方は増やす必要はないとされています。
日本人は塩分を摂りすぎていることもあり、3食きちんととっていれば塩分の量は十分です。水分補給をしっかりと行い、熱中症対策をしましょう。
しかし、屋外での作業や、運動する場面などで多量に汗をかく場合は、水分と一緒に適度な塩分摂取がすすめられています。この場合でも、普段の食事でたくさん塩分を摂るというよりは、汗をかいたときに水分と一緒に塩分を補給できるよう工夫するとよいでしょう。
※参照:日本高血圧学会「夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防と高血圧管理の観点から」
1日の塩分の目安を知って減塩に取り組もう
塩分の摂りすぎは、身体へさまざまな影響を与えてしまいます。1日の塩分摂取量を目安にして、できるところからでよいので、少しずつ減塩に取り組みましょう。