普段何となくやっているけれど「意外と難しい」と感じている方の多い、片栗粉でのとろみづけ。ダマになってしまったりとろみがつかなかったり……なんてお悩みをしばしば見かけます。今回はそんな片栗粉調理について、管理栄養士が解説します。
片栗粉とは
料理のとろみづけに欠かせない片栗粉。いったい何の粉かご存知ですか。実は片栗粉の別名は「ばれいしょでんぷん」で、その名の通りじゃがいもから作られる粉なのです。片栗粉は本来、ユリ科の「かたくり」の地下茎(地中にある茎のこと)から作られていましたが、採取が困難なためじゃがいものでんぷんで代用するようになりました。
なぜとろみが出るの?
片栗粉でとろみが出るのは、でんぷんの糊化(こか)によるもの。でんぷんに水を加えて加熱すると、60度前後で急激に水を吸って膨らみ始め、粘度を増して糊状になります。この現象を糊化といい、料理の液量に対してでんぷんの量が多いほど粘度は高くなります。
あんかけや汁物のような、たくさんの液量に少量のでんぷんを加えて加熱すれば、適度なとろみが出るのです。
失敗する理由は?
片栗粉でとろみをつける際に、固まってしまったりとろみがつかなかったりする失敗の原因は、片栗粉がしっかりと水分を含んでいないうちに加熱してしまうこと。
片栗粉でとろみをつける際には一度水に溶いた「水溶き片栗粉」を使います。水溶き片栗粉を使うのは、あらかじめでんぷんに水を含ませ膨らませることで、汁に入れた時に全体的に行き渡りやすくなるからです。
水を含む前のでんぷんを熱い汁の中に入れると、汁全体にでんぷんが行き渡る前に表面だけ加熱されて粘りを帯び、でんぷん同士がくっついてしまいます。そのため、固まってダマになったりとろみがつかなかったりしてしまうのです。
失敗しないためのポイントは3つ!
以上のことも踏まえて、片栗粉でのとろみづけの際は以下を意識するようにしましょう。
[1] 水溶き片栗粉を作り、でんぷんにしっかりと水分を含ませる
深さのあるカップなどに片栗粉を入れ、そこに片栗粉と同量〜2倍の水を入れてあらかじめ溶いておきます。時間が経つと沈殿してしまうので、汁に入れる際はよく混ぜてから加えます。
[2] 全体に回し入れ、手早くよく混ぜる
水溶き片栗粉を一カ所にいっきに加えると、汁全体に行き渡らないまま加熱されてダマになり、失敗の原因に。回し入れたら手早く全体をよく混ぜましょう。
[3]加えてから1分程度加熱する
でんぷんが最高潮に水分を含み糊状になるまで火を通すためにも、水溶き片栗粉を加え、よく混ぜたらすぐに火を止めず1分程度加熱しましょう。ただし、片栗粉は長時間煮込むと粘度が低下する性質があるため、とろみづけは完成間際に行うようにしましょう。
また片栗粉の分量が適量でないと、固くなりすぎたり、逆にとろみがつかなかったりします。汁物などに軽くとろみをつける場合には、液量の1%前後(1人分の汁に対して小さじ1/2杯程度)、あんかけなどの場合は液量の4%前後(100ccの液量対して小さじ1.5杯程度)を目安に加えます。
少し多めに水溶き片栗粉を用意し、少しずつ加えながら好みの濃度に調整すると良いでしょう。
かきたま汁の作り方
以上のコツを、かきたま汁のレシピを見ながらおさらいしていきましょう!
材料(2人分)
たまご 1個 / だし汁 360cc / 醤油 小さじ1 / 塩 小さじ1/4 / 片栗粉 小さじ1 / 水 小さじ2 / 刻みねぎや三つ葉 適宜
作り方
1. 片栗粉は深さのあるカップなどに入れ、水で溶いておく。たまごはボウルに割入れ、箸で溶きほぐしておく。
2. だし汁を熱し、醤油と塩で味を整える。
3. ふつふつと小さく煮立つくらいの温度にし、水溶き片栗粉を全体に回し入れる。手早くよく混ぜ、一度煮立たせる。
4. 溶きたまごを箸につたわせて回し入れる。
5. ひと呼吸置いてから箸で混ぜる。器に盛って好みで刻みねぎや三つ葉を散らす。
かきたま汁のふんわりとしたたまごを作るコツは、汁に軽いとろみをつけること。レシピの分量はさっぱりとしたとろみにしていますが、もう少し濃厚なとろみをつけたい場合は、片栗粉の量を小さじ1/4〜1/2ほど増やしてみてください。
コツはおさえられましたか? 皆さんの料理の失敗防止に役立てば幸いです。