子どもの頃、お正月の楽しみだったお年玉。大人になり渡す立場になってみて、「相場はいくらか」「新札がない場合はどうするか」などの疑問に悩まされた経験はありませんか。そんな疑問を解消すべく、お年玉のマナーについてヒロコマナーグループのマナーコンサルタント・川道映里さんに解説してもらいました。
そもそも「お年玉」とは
お年玉は、新しい年の神様である年神(としがみ)様にお供えした餅を分けたのが始まりとされており、かつては「御歳魂」という漢字をあてられていたといいます。現在では目上の人から目下の人に贈るご祝儀で、「ポチ袋」と呼ばれるお年玉用の小さな封筒に、基本的には新札を入れて贈ります。新札は、事前に銀行へ行って準備するという手間がかかります。ですが、それだけ「あなたのことを想い、事前に準備していた」ということや、「新しい年もあなたにとって良い1年になりますように」といった願いが込められているとされます。
新札の用意がない場合の対応方法
そうは言っても、「初詣でたまたま子ども連れの知人に会った」「どうしても新札にかえる時間がなかった」など、新札を準備できないケースもありますね。その場合は相手との間柄にもよりますが、「ごめんね。持ち合わせで悪いけど、これで〇〇ちゃんの好きなものを買ってもらってね」「どうしても新札にかえる時間がなくて、ごめんなさいね。今年も〇〇くんが健康で幸せに過ごせるよう心から祈っています」といったように、お詫びと相手のご多幸を願っている旨を伝えましょう。何も言わずに旧札を入れて渡すと、失礼だと感じる人もいるかもしれません。大切なのは、自分の気持ちを言葉で伝えることです。
ワンポイントアドバイス
慶事のときに包む新札。必要になった際に慌てないよう、できれば普段から新札をいくらか用意しておき、自宅に保管したり財布に入れておいたりすると安心ですね。
ポチ袋を持っていない場合
ポチ袋がない場合、お金をそのまま渡すのは失礼です。手持ちの懐紙や紙、封筒などに包みましょう。また最近は、和柄や子どもたちの好きなキャラクターが描かれた折り紙でお金を包む人もいます。
その他、どうしても包むものがない場合は、ティッシュペーパーで代用するのも良いでしょう。形ばかりにとらわれることなく、あなたの心を一緒に包むことが重要です。
ポチ袋の入れ方にルールはあるの?
ポチ袋にお札を入れる際の入れ方にも、実はルールがあります。なお、お札は肖像がある方が表です。
入れ方の手順
- お札を表に向け、お札の左側から1/3を内側へ折ります(写真上)。
- お札の右側から1/3を左側へかぶせるように折ります(写真左下)。
- 三つ折りのお札の右上を封筒の表側にし、肖像が逆さまにならないようにポチ袋に入れます(写真右下)。
これはお年玉を受け取った相手にとって見た目が美しいだけではなく、お札を開きやすく、いくら入っているのかすぐに分かるという相手への配慮からなる入れ方です。
なおポチ袋に相手の名前を書く欄がない場合は、ポチ袋の表に相手の名前を、裏に自分の名前を書きます。そうすることで誰からのお年玉か一目瞭然になり、相手は自分の名前を書いてもらえていることで特別感が増して喜んでくれるでしょう。
さらにはポチ袋に「今年もよろしくお願いします」や「〇〇ちゃんにとって輝かしい1年になりますように」とひと言書いておくと、相手に気持ちが伝わります。
本人および家族と会わない場合
お年玉を渡す相手と、お正月の期間に会えない場合もありますね。その際はあなたと相手やその家族との関係性により、お年玉を贈った方が良いかどうかが変わってきます。
もちろんお年玉を贈りたいと思えば、現金書留で送っても大丈夫です。しかし、あなたに子どもがいる場合、お年玉を現金書留で送るとことで、かえって相手に気を遣わせてしまうことになるかもしれません。渡す相手が親戚などの親しい間柄であれば、親など相手の保護者に直接相談することをおすすめします。
またお金ではなく、新しい文具などのモノを贈るのも一つの方法です。その場合も「〇〇ちゃんへ。今年もよろしくお願いします。新しい年にふさわしい新品の文具を贈ります。〇〇ちゃんに会える日を心待ちにしています」といった具合に、メッセージを添えるとさらに喜ばれるでしょう。
渡す金額の相場
お年玉に包む金額も悩みの一つ。これは、相手との間柄や住んでいる地域によって大きく違います。ここでは一般的な相場を紹介しますが、あくまで参考として捉えてください。
- 未就学児: 1,000円前後。お金の代わりにお菓子や玩具を贈っても喜ばれます
- 小学生(1年生~3年生): 3,000円前後
- 小学生(4年生~6年生): 3,000円~5,000円
- 中高生以上: 5,000円~1万円
一般的な相場はあるものの、相手の保護者と親しい間柄であれば「小学生の間は〇円にしようか」など、あらかじめ額を決めておくと悩まずに済みます。また親戚同士の付き合いで、もらった分だけ返すという家庭もあります。その際、いつ・誰に・いくらもらったのかをノートに記録しておくと、今後の目安になるのでおすすめです。
お年玉は「必ずこの金額を渡さなければいけない」というものではありません。そのことばかり考えると、「相手を想う心」を忘れてしまい本末転倒です。家庭の事情や相手との間柄、地域や風習などを考慮し、あなたの気持ちを添えて渡しましょう。
何歳まであげればいい?
お年玉を何歳まで渡すかについても悩むポイント。こちらも家庭の事情や相手との間柄、地域によって考え方が違います。また、必ずこの年齢まで渡さなければいけないといったルールはありません。高校卒業まで・20歳まで・大学卒業までなどの区切りを決めて渡すと良いですね。相手およびその保護者と親しい間柄であれば、直接話し合って決めておくと安心です。
子どもがいない相手からお年玉をもらったら
子どもがいない相手からお年玉をもらうこともあるかもしれません。その際は、まずは多忙な中お年玉を準備してくれたことに感謝する気持ちを忘れないようにしましょう。
お年玉のお返しは基本的に必要ありませんが、うれしい反面、申し訳ないと感じてしまう人も多いのではないでしょうか。もし相手から毎年いただいているのであれば、あらかじめ「お年賀」として何か用意しておくのもおすすめです。また、お正月以外の時期に会った際、「手土産を渡す」「食事をごちそうする」など相手に気を遣わせすぎない程度の配慮をしても良いですね。他にはお中元やお歳暮の他、相手の結婚記念日などにプレゼントを贈るといった対応も喜ばれるでしょう。
前述しましたがお年玉のお返しは基本的に必要なく、「必ずこうしなければならない」という決まりはありません。ただし毎年いただいてばかりで気になる人は、感謝の気持ちをお礼という形で表してみてはいかがでしょうか。
お年玉を渡すのは何日まで?
お年玉は何日までに渡せば良いのでしょうか。一般的には「松の内」(=門松を飾る期間、関東では1月7日、関西では1月15日)までとされています。ただし、これも地域やその家庭の考え方によってさまざま。渡すのが遅れた場合は「遅くなったけど……」とひと言伝えると良いですね。
家庭の事情や立場、地域、相手との関係性によりさまざまな考え方があるお年玉。形式的な型ではなく、新年を祝うと同時に相手への想いを伝えることを大切にしましょう。来年も皆さまのご健勝とご多幸を心からお祈り申し上げます。