2025年のゴールデンウィーク(以下GW)は、多くの人にとって“計画の難しい連休”となっている。理由はカレンダーにある。今年は4月29日(火・祝)から5月6日(火・祝)の間に、平日が3日間も挟まる「飛び石連休」型。まとまった休暇を取りづらく、例年より旅行のタイミングを見定める必要がある状況だ。
そんななか、予定共有アプリ「TimeTree」に登録された“旅行”の予定をもとに、ユーザーの動向を可視化したのが『TimeTree未来総研』による未来データレポートだ。アプリの予定データという、リアルタイムに近い人々の「意志」が表れたデータからは、今年のGWにおける“動く日”と“動かない日”の明確な違いが浮かび上がってくる。
さらに今回の調査では、世代別の旅行スタイルや、旅行先のトレンド、そして旅行がコロナ前からどう変化してきたのかといった“旅の進化”にも触れている。休みの取り方や旅のしかたが変わりつつあるいま、私たちはどんな旅を選んでいるのか。
「4月26日」「5月3日」が人気のワケとは? GW移動日の傾向分析


2025年のゴールデンウィークは、カレンダー上に3つの平日が点在する「飛び石連休型」。これにより、長期連休を取得するには有給休暇の取得が必要となるなど、旅行の計画が例年以上に難しい年となっている。その実態は、予定管理アプリ「TimeTree」に登録された旅行関連の予定データにも顕著に現れている。
「旅行」というキーワードを含む予定の登録数をもとに分析したところ、旅行が最も集中していたのは「5月3日(土・祝)」で、次いで「昭和の日」直前の「4月26日(土)」となった。これらはいずれも土曜日で、平日を避けた行動が色濃く反映されていることがわかる。
一方で、4月29日(昭和の日・火曜祝日)を含む前後の平日、すなわち4月28日(月)から5月2日(金)までは、旅行の予定登録数が平均を下回る結果に。中でも平日が連続する5月1日(木)や5月2日(金)は、旅行の「谷間」とも言える静かなタイミングとなっており、日並びの影響が行動パターンに大きく関わっていることが読み取れる。
このように、今年のGWは「動く日」と「動かない日」の差が明確であり、多くの人が日程にメリハリをつけた旅行計画を立てていることがわかる。まとまった連休が取りづらいなかでも、行けるタイミングを見極めて動く姿勢が、アプリのデータからはっきりと浮かび上がっている。
若者は泊まって満喫、シニアは無理せず日帰り派

旅行スタイルにおける世代間の違いも、TimeTreeのデータから明らかになっている。特に顕著なのが、「日帰り旅行」と「宿泊旅行」の選択に見られる傾向の差だ。
「日帰り旅行」というキーワードを含む予定の登録数を世代別に見ると、最も多かったのは70代。次いで60代、50代と続き、シニア層の行動意欲の高さが際立っている。特に70代では、2024年の同時期と比較して2倍以上もの登録数増加が見られ、前年以上にアクティブな動きが見て取れる。
この傾向からは、遠出や宿泊を避けながらも、近場のレジャーや観光を楽しむ“無理のない旅”を求める姿勢がうかがえる。長距離移動や宿泊を伴わない分、体力的・経済的な負担を抑えつつ、季節の風景やご当地グルメなどを手軽に楽しめる点が、シニア層のニーズにマッチしていると考えられる。

一方で、宿泊を伴う旅行の登録数が多かったのは20代と30代の若年層。まとまった連休が取りにくい今年のようなGWであっても、泊まりがけでの旅行を計画している層が多く、旅行そのものに対する意欲の高さがうかがえる。宿泊を含む旅行は、体験価値や思い出づくりを重視する若者層にとって、日常からの“非日常”を味わう貴重な機会なのだろう。
このように、シニア層は無理をせずに近場で日帰り旅行を楽しむ一方で、若者は積極的に泊まりで遠出をするなど、世代ごとに異なる価値観が旅行スタイルに反映されている。生活リズムや体力、目的意識の違いが、選ばれる旅のかたちに表れている点が興味深い。
コロナ前の5割でも十分? 旅が“当たり前”になった今

旅行のあり方が、この数年で大きく変わってきている。TimeTreeの予定データをもとに2019年から2025年までのゴールデンウィーク期間(4月26日〜5月6日)の「旅行」関連予定の登録数を比較したところ、2019年(コロナ禍前)を基準とした場合、2025年の登録数はその約5割にとどまっていることが明らかになった。
一時的に落ち込んだ2020〜2021年の旅行需要は、2022年以降徐々に回復。特に2024年には回復のピークを迎えたが、2025年はそこからやや後退する結果となった。とはいえ、完全には元に戻っていないものの、旅行を“予定に組み込む”習慣自体は確実に定着してきており、「非日常としての旅行」から「日常の延長線上にある旅行」へと意識がシフトしつつあることがうかがえる。
背景には、旅行の目的や頻度に対する考え方の変化があると考えられる。大型連休に限らず、週末や1日休暇を利用して近場へ出かける“マイクロツーリズム”が浸透したことで、旅行は以前ほど構えたイベントではなくなっているのかもしれない。
また、予定アプリでの登録という行為自体が「移動を前提とした行動計画」として自然に組み込まれている点にも注目したい。旅行は特別なイベントというよりも、日常のなかの“少しだけ非日常な時間”として生活に溶け込んできているのだ。
数字だけを見れば“完全な回復には至らず”とも捉えられるが、その実態はむしろ、旅行がライフスタイルとして多様化・軽量化されてきた結果とも言える。旅をすることそのものが、以前よりももっと身近な選択肢として受け入れられているのである。
行ける範囲で、しっかり楽しむ!目的地に見える“旅の現実路線”

2025年のゴールデンウィークにおける旅行先の傾向をみると、多くの人が「現実的に行ける距離」を意識して目的地を選んでいることが、TimeTreeの予定データから見えてきた。
「旅行」という予定名に含まれる地名をもとに集計した結果、国内旅行先で最も多く登録されていたのは「沖縄」。続いて「北海道」、「大阪」が上位を占めた。特に「大阪」に関しては、2025年4月13日から開催されている大阪万博の影響もあり、「万博旅行」や「大阪万博旅行」といった予定名が目立った。ただし、前年2024年に国内1位だった大阪は順位を3位に下げており、万博効果があったとはいえ、それ以上に他地域への分散も進んでいることがうかがえる。
一方で、日帰り旅行でもアクセス可能な「静岡(熱海・伊東など)」や「神奈川(箱根・鎌倉など)」といった関東近郊の観光地が上位にランクインしている点も注目に値する。短期間・短距離でも楽しめることを重視した“現実的な旅行スタイル”が、選ばれる目的地にも影響を与えている。
海外旅行に目を向けると、「韓国」がトップに。次いで「台湾」「タイ」といった近隣アジア諸国が続き、年末年始の旅行先と同様に“距離と滞在期間のバランスが良い”目的地が高い支持を集めている。かつてのように欧米や長期滞在を前提とする旅行ではなく、短期間でも満足度の高い旅先が選ばれている傾向が強い。
こうしたデータからは、遠くへ行くことよりも「今の自分にとって無理のない範囲で、充実した時間を過ごせる場所」を求める、旅に対する価値観の変化が見て取れる。旅行の計画がより生活に根ざしたものになっているいま、人々は“身の丈に合った非日常”を上手に見つけているようだ。
旅は特別じゃなくてもいい。“行ける今”を大切にする時代へ
2025年のゴールデンウィークは、カレンダーの並びによって動きづらさが生まれた一方で、人々はその条件の中で「今できる旅」を工夫して楽しんでいる様子が、TimeTreeの予定データから浮かび上がった。シニア層は無理のない日帰り旅行を、若年層は積極的に宿泊を含む旅を選び、目的地も“遠すぎず、近すぎず”という現実的な距離に収まっている。
かつてのように、大きなイベントとして計画する旅行は減ったかもしれない。しかしその分、旅はより日常に寄り添った存在へと変化しつつある。アプリで予定を立て、スケジュールに旅を自然に組み込む──そんな風に、旅のあり方が静かに、しかし着実にアップデートされていることを、今回のデータは教えてくれる。
旅は特別な非日常でありながら、暮らしの中で“ふとした余白”をつくる行為でもある。その役割は、これからも変わらず私たちのそばにあるだろう。