おうちでゆったりとくつろいでいるとき、はたまた外へでかけたとき。いつでも、どんなときでも寄り添ってくれるビールたち。そんなビールと過ごすなにげない日常を、イラストレーターnatsuruが描きます。

(これまでの「いつもの日常に、わたしとビールと。」はこちら)
旅の入口

窓の外は雨。このじめっとした天気はいつまで続くのだろうか。トントントンと雨の雫がどこかに落ちる音をききながら、冷蔵庫のなかで出番を待ってくれていた『SORACHI1984』をグラスに注いだ。グラスに注ぐと立ちのぼる、爽やかで奥行きのある香りに、遠く離れた空知の風景が浮かんでくる。空知の広大な大地、ゆるやかに連なる山々、北海道をまわっていると見つけたひまわり畑。澄んだ空気を体いっぱいに吸い込む。初めて観る景色なのにどこか懐かしく、胸の奥が静かにあたたかくなった。そんな風景に思いを馳せながら、ゆっくりとビールを味わうこの時間。日常のすぐ隣に、旅の入り口があるような気がする、穏やかな雨の夜。今年の夏もまた、空知に行こう。
Illustration:natsuru(@NaTsuRuuuu)
Text:山吹彩野
