
「暑さには強いんです」と小籔千豊(51)は胸を張る。逆に寒さには弱く、新幹線など冷房が入っていると、長袖の服がないと耐えられないという。大好きな夏、小籔は新たなイベント「トリプルインパクト」(8月24日)を立ち上げ、9月には恒例のKOYABU SONICが待っている。【三宅敏】
★3つめは「変顔」だ…
笑い飯と共演するラジオがきっかけだった。新しいお笑いの賞レースとして「ダブルインパクトというのができるらしい」と耳にした。
小籔 じゃ、俺はトリプルインパクトをやってみようかな、と思いついたんです。漫才とコントでダブルインパクトなら「3つめは何やねん?」と問われて「顔や!」と。30秒間、おもろい顔をして観客に見てもらいます。いわゆる変顔ですね。「そんなアホな」と言われそうですが、ノリのいいお客さんなら喜んでもらえると思います。
「ダブルインパクト」で優勝したのはニッポンの社長だったが「トリプルインパクト」に出場するのは、ななまがり、ロングコートダディ(ダブルインパクト準優勝)、コットン、エルフ。審査員は、笑い飯と天竺鼠の川原克巳が務める。
小籔 思いつきから始まった企画ですが、笑い飯と川原という「ふざけることの名人」が審査してくれるので立派に成立します。出場する4組も「先輩が企画したのだから」と遠慮気味に参加するのではなく、ふざけたイベントに思い切りふざけて参加するという納得ずくで来てもらいます。
トリプルインパクトのポスターには「漫才か、コントか、顔か」「いや顔だ!!」と趣旨が描かれ、少し控えめに「優勝賞金1000円」。え? 1000円?
小籔 本当は「賞金1000万円!」と派手に打ち出したかったんですが、このふざけた大会のスポンサーを探して欲しいとは、吉本の営業サイドに言えませんでした(笑い)。それでも、M-1グランプリやキングオブコント、ザ・セカンドやダブルインパクトに続く賞レースとして毎年の恒例イベントにしたいですね。高校生対象の「ハイスクール顔」だとか、結成16年目以上のコンビのための「ザ・セカンド顔」という形に発展していけば素晴らしいです。
注目のイベントは、8月24日、クールジャパンパーク大阪TTホールで行われる(午後6時30分開演)。
★宗教法人ではなく…
公式プロフィルには身長188センチ、体重63キロとあるが、若い頃から体重は激しく変動してきた。
小籔 若手の頃はゲームばかりしていて、ご飯を食べない日もありました。たばこは吸ってご飯はパスしたり、1日1食だったり。で、63キロ。新喜劇に入ってからは、川畑泰史さんらとご飯に行くことが一気に増えました。公演時間の関係もあって、いきなり規則正しく、毎日3食という生活が続いて、気がついたら83キロ! 娘からは「おなか出てる!」と何度も言われました。
子どもの頃から肉は食べなかった。「味が好きになれない」という理由で、非肉ライフが体に染みついている。それでも体重が激増したことで、45歳になった頃、自分の健康についてまじめに考えるようになった。その後、一念発起してダイエットを決行。わずか2カ月半で7キロの減量に成功した。
小籔 今は73キロです。「どうやって痩せたんですか?」と尋ねられるようになって、吉本のマネジャーや芸人仲間、スタッフ関係など約20人が、僕の実践するダイエット信者になりました。この経験を元に「小籔ヘルシー教」を立ち上げる予定です。もちろん教祖は、わたし自身です。誕生日(9月11日)をめどに、宗教法人ではなく、株式会社として発足するつもりです(笑い)。
軌道に乗れば、YouTubeなり、オンラインサロンを通じて信者に小籔流ヘルシー術を説いていくことになりそうだ。
ライフワークでもある主催イベント「KOYABU SONIC2025」が、今年も9月13、14、15日にインテックス大阪で行われる。RIP SLYME、山本彩、アイナ・ジ・エンド、ジュースごくごく倶楽部ら多彩なアーティストとお笑い芸人が集結するなか、教祖・小籔が華麗に降臨するかも。
★お客様の声伝える…
漫才コンビとして活動していた小籔が吉本新喜劇入りしたのは2001年。最初こそ出番に恵まれない時期もあったが、徐々に頭角を現し、06年には座長に就任した。新喜劇を全国区の存在にするべく汗をかく一方、多才なタレントとしてテレビでも広く活躍した。そして22年に座長を勇退。
小籔 辞めてからは新喜劇には一切、口出ししていません。高校を卒業したラグビー部のOBが、現役生の練習や試合にやってきて偉そうにするのって、うっとうしいやないですか。今になって僕が座員にあれこれ言うことはないんですよ。
小籔が勇退する直前に、間寛平(76)が新喜劇GM(ゼネラルマネジャー)に就任。以後、若手を登用したり、総選挙を実施。新たな新喜劇の可能性を追求している。
小籔 寛平さんがGMとしておられるので、なおさら僕がどうこう言うことはないんです。寛平さんは人智を超えたボケを繰り出しますし、池乃めだか師匠とのからみも爆笑を取ってました。ヨットとランニングで地球を一周するような人(寛平)には勝てません! 芸人のみならず、動物としてすごいです。
新喜劇から離れた小籔は、カンテレ「とれたてっ!」やフジテレビ「ノンストップ!」などに出演。情報番組のコメンテーターとして売れっ子になった。
以前、大阪の番組で専門家が社会問題について解説した際、視聴者の誤解を招きかねない表現があった。そのとき共演者だった小籔が的確にフォローするコメントを発した。
小籔 放送が終わってプロデューサーから「小籔さん、助かりました」と言われたんですけど、いつも僕みたいな芸人がコメンテーターやっててええのかな、と思うんです。街で「お前みたいなアホが偉そうに話すな」とクレームを入れられたこともありました。ただ、政治や経済の専門家も「伝える」ことについては慣れないこともあるんです。僕は視聴者の1人として「お客さまの声」を伝えているだけで、コメンテーターをしているつもりはないんです。
▼吉本新喜劇元座長の川畑泰史(58)
先輩でも後輩でもない“小籔千豊”って存在ですね。このラーメンじゃないとダメみたいな。誰かと飲みたいとかじゃなく、小籔千豊じゃないとダメなんです。(経年で)なかなか叱ってくれる人っていなくなってきますけど、小籔君は言うてくれる。なかなか勇気もいるし、気も使うと思うけど言うてくれるのはありがたい。まだまだ発展途上の人ですし、今後も活躍を期待してます。
◆小籔千豊(こやぶ・かずとよ)
1973年(昭48)9月11日生まれ、大阪市出身。NSC(吉本総合芸能学院)大阪12期。漫才コンビ「ビリジアン」解散後、01年吉本新喜劇入り。04年放送のNHK連続テレビ小説「わかば」に出演。06年2月、座長就任。22年8月の公演で座長勇退。
8月24日、クールジャパンパーク大阪TTホール「トリプルインパクト」(午後6時30分開演)でMCを務める。カンテレ「旬感LIVE とれたてっ!」テレビ東京「ソレダメ!~あなたの常識は非常識?~」フジテレビ「ノンストップ!」などに出演中。趣味はダーツ、ビリヤード、麻雀、将棋。身長188センチ。