
シリーズ第3作「ジョン・ウィック:パラベラム」(19年)では、追い詰められた殺し屋ジョンが最後に頼った古巣「ルスカ・ロマ」のエピソードが記憶に残っている。育ての親ディレクターの登場で、ジョンの過去も明らかにされた。
「バレリーナ:The World of John Wich」(22日公開)の主人公イヴ・マカロもゆえあって犯罪組織ルスカ・ロマの所属になる設定だ。「-パラベラム」の時系列に並行して進む物語にはジョンも絡んでシリーズファンの心を大いにくすぐる。
謎の武装集団に父親を殺されたイヴは、シリーズおなじみのニューヨーク・コンチネンタルホテル支配人の仲介でルスカ・ロマの戸をたたき、復讐(ふくしゅう)の機会をうかがっている。ルスカ・ロマが表向きはバレエ・ダンサーの養成を行っているところがミソで、暗殺者として指導を受けるイヴの動作は美しく、女性ならではの戦い方もたたき込まれる。ジョンとはひと味違うアクションが見どころとなる。
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(21年)の軽快な動きを見込まれたのだろう。イヴ役のアナ・デ・アルマスのアクションは屈強な男性に交じっても大きく見える。
スキー・リゾートの静かな村が丸ごと謎の武装集団の本拠地という設定に新味があり、アナは先輩ジョンさながらの「十倍返し」の大奮闘を見せる。とはいってもルスカ・ロマの命令を無視しての単独行動。お目付け役として派遣されたジョンはどう動くのか…これまでのシリーズ作品同様のハラハラ感がちりばめられている。
「ガン・フー」と形容される近接銃撃戦はもちろん、重火器の数々がこれでもかと登場。火炎放射器の圧倒的なパワーに加え、今作ではこれに対抗する放水機の水力が想像以上にすさまじく、火と水の「力比べ」は圧巻だ。
シリーズの監督を務めてきたチャド・スタエルスキが製作にまわり、メガホンをまかされた「ダイ・ハード4.0」(07年)のレン・ワイズマン監督の振り切った遊び心が楽しい。ジョンがスコープ越しにのぞき見る、イヴの「決意の表情」など、随所にシビれるポイントがある。
キアヌ・リーブスはもちろん、ディレクター役のアンジェリカ・ヒューストン、コンチネンタルホテルのイアン・マクシェーン、ランス・レディックのコンビというおなじみの顔、そして敵役ガブリエル・バーンと重鎮がそろってアクセントをつける。
新ヒロインの登場で、次作への期待もつながった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)