
ミステリー作家上田春雨さん(38)が新刊「飛び込め地獄」(宝島社)を発売した。昨年、「呪詛(じゅそ)を受信しました」でデビュー、2作目となる。
「飛び込め-」は、新興宗教の教祖をしていた姉の失踪を機に、妹で刑事志望の女子高生が、殺し屋を名乗る少女とともに教団の真実を追うミステリー小説。女性同士の関係性が描かれ、シスターフッド(女性同士の絆)を描いた作品として注目されている。
上田さんは筑波大卒業後、新聞社に記者として勤務している。「私が昔、事件記者だった時の知識をフル活用しました。疾走感のある推理小説にするため、トリックをとにかく考えました。本当にできるのか、ろくでもない調べ物や取材をたくさんしたうえに、だいぶ体を張って実験したので、奇人変人度合いに磨きがかかったと思います。小説を読んでいただいて、こんなことを実際にやったのかと笑っていただくのも楽しいかもしれません」と振り返った。
2児の母であり、子育てにも奮闘中だ。「執筆は育児・家事や仕事が落ち着く深夜の0時から2時に、だいたい書いてますね。今回は前作と作風が変わっているので、いろいろな方に読んでいただきたいです。作家デビューしてから読んでもらうことのありがたさを感じ、期待を裏切らないという責任感が芽生えました。今後は新聞記者を題材にしたミステリー作品を執筆してみたい」と話している。
▼飛び込め地獄 「わたしは解脱した。探さないでほしい」。新興宗教の教祖だった姉が失踪した。刑事志望のすばるは、教団から次期教祖になるよう迫られ、姉の捜索を開始する。同じ頃、殺し屋を名乗る少女いよに出会う。彼女は「親友を殺したカルト教団に復讐(ふくしゅう)する」ため捜索を手伝うという。姉の失踪、いよの親友の不審死、次々と電車に飛び込む信徒たち、密室で変死した両親……。さまざまな謎をひもといて、2人は教団の闇に迫っていく。
◆上田春雨(うえだ・はるさめ)1986年(昭61)、北海道生まれ。現在は記者として新聞社に勤務。24年(令6)「呪詛を受信しました」(宝島社文庫)で作家デビュー。