
21年の「海辺の彼女たち」で知られる、藤元明緒監督(37)の長編映画3作目「LOST LAND/ロストランド」(26年春公開)が、イタリアで8月27日に開幕のベネチア映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門に選出された。22日に同映画祭事務局が開いた会見で発表された。出品するオリゾンティ・コンペティション部門は、世界の映画における新しい潮流や革新的な表現に焦点を当てた公式部門で、ワールドプレミア上映される。
藤元監督は、日本に住むミャンマー人家族の物語を描いた18年の日本・ミャンマー合作の長編デビュー作「僕の帰る場所」が高く評価された。さらに、ベトナム人技能実習生を題材にした「海辺の彼女たち」では、第3回大島渚賞、新藤兼人賞金賞を受賞。ミャンマーを題材に長年、製作を続けてきたことで知られる。
日本・フランス・マレーシア・ドイツ国際共同製作の「LOST LAND/ロストランド」は“世界で最も迫害されている民族の1つといわれるロヒンギャ”の人々の証言を元に紡がれた物語。全編、海外ロケで撮影され、無国籍の幼い姉弟が家族との再会を願い、いくつもの国境を命がけで越えていく希望のロードムービー。演技未経験ながら当事者である主演の姉弟をはじめ、総勢200名を超えるロヒンギャたちが出演する長編映画は世界初だという。容赦のない現実とファンタジーが入り交じる寓話(ぐうわ)的な世界観の中、子どもの視点から難民たちがたどる旅路を描く。
藤元監督は、コメントを発表した。
「平時とは程遠いこの時代に、自分たちにどんな映画を作れるのか、映画に何ができるのだろうか。悩み続けた先に、この作品が生まれました。映画の力を信じて支えてくださった方々のおかげで、本作を世界にむけてお披露目できることをうれしく思います。そして何よりも、出演してくれた人たちの願いが、どうか多くの人の心に届きますように」