
俳優舘ひろし(75)が、藤井道人監督(38)とタッグを組んだ映画「港のひかり」(11月14日公開)に主演することが16日、分かった。木村大作さん(85)が、全編フィルムで撮影を手がけ、寺島しのぶの長男で、映画初出演の歌舞伎俳優尾上眞秀(12)と共演した。
舘は、「ヤクザと家族 The Family」(21年)以来、藤井監督ともう1作映画を作りたいと熱望していたという。企画立ち上げから参加し、藤井監督、22年に亡くなった映画製作、配給のスターサンズ代表でプロデューサーの河村光庸さんと打ち合わせを重ねた。先輩である故渡哲也さんのような、無償で人生をささげる愚直な男を演じたいと言う舘の思いを受け止めた藤井監督は、オリジナル脚本を練り上げた。元ヤクザと、事故で両親と視力を失った少年との十数年間の友情を描いた。
舘は「約3年間にわたり企画について議論を重ねてきました。私が演じたのは、すべてを捨てた元ヤクザです。『人の強さとは何か』『誰かのために生きるとはどういうことか』。親分に教えられた思いを愚直に守り、漁師として孤独に生きようとする男を演じました。強い男とは何かを考えたとき、石原裕次郎さんや渡哲也さんの生きざまが頭をよぎりました」と、先輩2人を重ねた。
石川県の能登半島地震が起きる前の23年10~12月に、能登や富山県で撮影されたことに触れ、舘は「木村さんが、35ミリフィルムに地震前の能登半島の美しい自然を、役者の心情とともに焼き付けてくださいました。地元の皆さまの多大なるご協力をいただきながら完成した作品です。能登半島は復興の途上にありますが、本作を通じて少しでも恩返しができればと願っております」と話している。
○…藤井監督は初めての木村カメラマンとの仕事を振り返り「発見と勉強の連続で、たくさんの偉大な背中を見せていただきました」とし、35ミリフィルムでの撮影を「デジタルによって便利に、そして簡易になった現代へのメッセージともとれる大作さんの哲学を感じました」と話した。木村カメラマンは「撮影、編集を終え完成した今、この映画のために全てを懸けた自負がある」と語っている。
○…映画初出演の眞秀は約1カ月能登に滞在。「初めての映画だったので張り切ってやりました。撮影最後の日は本当に皆さんと別れたくありませんでした」と話した。視力を失った少年を演じるにあたり、撮影前に盲学校に行くなど準備を重ねたという。舘や藤井監督、木村カメラマンについては「舘さんはいつも優しくて、よく焼き肉屋さんに連れて行ってくださいました。監督、スタッフの皆さんにもとても良くしていただきました。木村さんは怖い方なのかなと思っていましたが、すごく優しかったです」。