東京・小田急線と京王井の頭線下北沢駅南口の改札を右に出て、すぐまた右に曲がる徒歩30秒ほどのところにある商業施設「Recipe SHIMOKITA(レシピシモキタ)」の1F広場にあるモニュメント「こいぬの木」が、生誕1周年を迎えたことを記念して、12月3日に記念セレモニーが開かれ、デザインを手掛けたリリー・フランキー(53)が出席した。
同モニュメントは、1日20万人以上(※1)が利用する下北沢駅周辺に待ち合わせ場所がないことから、「会いにきたくなる場所」をコンセプトに、商業施設「Recipe SHIMOKITA」前の広場に2015年11月30日に設置。イラストレーター、作家、俳優など多方面で活躍し、若いころに下北沢で過ごしたことがあるというリリーがコンセプトからデザインまでを手掛けた。雲のイラスト部分は、実際に制作現場に赴いたリリーによる手描き。
リリーは、「若い時、下北にずっと住んでて、下北は『いつか何かになりたい、こうなりたい』という人たちがたくさん住んでいる街。子犬が木に生っていて、大人の犬になっていく。だから、下に大人の犬もいるんですけど。というイメージですね。あとは、待ち合わせといえば犬です!」と話す。
久しぶりにモニュメントを見たリリーは、「1年たっても全然劣化していなくて驚いた。下北は、こういうのあると酔っぱらいが蹴ったり殴ったりするんですよ。それが削れてない!3ヶ月くらいしたらバンドのステッカーが貼られたり、スプレー吹き付けられたりしてそうじゃないですか、それもなく大切にされているなと思って」と、喜んだ。
この日も、12月とは思えない暖かい日差しが降り注いだ昼頃から、親子連れやカップル、老若男女がひなたぼっこするように、ゆったりと腰かけたり、おひるごはん食べたり、待ち合わせなどで滞留するなど、憩いの場としても待ち合わせとしても広く利用されていることがわかる光景が広がっていた。
「この犬は小学生のころから描いている『ペロくん』という名前の犬で、NHKの教育番組に出ていた犬のパクリ。下北に住んだ時はイラストレーターになったばかりぐらいの時で仕事もなんにもなくて、この犬をしょっちゅう描いていたので感慨深いです。周りの人たちにいろいろごちそうになったり、お世話になりました」と、苦労時代を振り返った。
再開発が進む下北沢の街について、「何かになりたい人たちが集まってくるような街なので、あまり物価が高くなりすぎても良くないし、小さな商店がなくなって、複合施設やチェーン店ばかりができても良くない。お店でも人でも『個』が尊重される街として下北の文化が形成されてきたので、子犬が実って旅立っていくような街になってほしい。小さなお店を壊したり、街をどんどんきれいにしていったら、どこにでもあるちょっと大きな街になっちゃう。下北に来たら、いい感じに幼稚になれる街であってほしい」と、語るリリー。下北沢という街への思いが、「こいぬの木」にも集約されているようだ。
イベントの最後には、1周年を祝って誕生日ケーキが登場。子供たちとともにローソクを吹き消した。
※1)京王グループ発表の1日の駅別乗降人員及び小田急電鉄発表の「1日平均乗降人員」