『家呑みよりも、気になる町で独り呑み』
今回は「せんべろ」「昼呑み」の聖地と称される葛飾区の京成立石へ繰り出します。
現在、立石駅北口地区は再開発の真っ只中。
あと数年で2棟の高層建築や交通広場が出現することに…。
そのため“立石らしさが残っているうちに”と、訪れる人が増えているそうです。
“立石らしさ”の筆頭は東京遺産ともいえる「呑んべ横丁」ですが、こちらは既に一部が取り壊され、営業している店はおよそ10軒を残すのみとなっていました。
もうひとつは線路を挟んで反対側にある「立石仲見世商店街」。「仲見世」という名称は、戦火を逃れて立石に店を写した店主たちが名づけたものだそうです。その商店街には「宇ち多゛」「鳥房」「栄寿司」など有名店が目白押し。特に人気の「宇ち多゛」の行列に並ぼうかな…と思いましたが、「独り呑みはサッとは行けてスッと座れる店がいい」ということで、今、テレビや雑誌で話題の『町中華』へ。
その町中華をテーマにしたBS-TBSの番組『町中華で飲ろうぜ』に登場した店が、すぐ近くにありました。
その名も『中華酒房 宝塔』は、老店主がひとりで切り盛りする小さな町中華。
奥には小上がりもありますが、独り呑みなのでカウンター席へ。
店の名物は選ぶ楽しさが味わえる「ほろ酔いセット」(Aグループ〈酒類〉と肴Bグループ〈点心・一品料理類〉肴Cグループ〈前菜類〉というA~Cの各グループから1品ずつ頼めるシステム)
ここから「玉露ハイ」と「餃子5個」と「むし鳥四川風ソース」をチョイス。
まずは玉露ハイをひと口飲むと…その濃さにびっくり。下町は濃い目が多いとよく聞きますが、さすがは中華酒房。(幸い、胡麻が効いた四川風ソースとの相性が良かったので結果オーライ)
ここで店主に再開発について聞くと、実はこの『宝塔』も十数年前の開発で店の規模は3分の1になったそうです。
そして、現在も店のすぐそばで新たな再開発が進行中…そんな中でも店を続ける気力と体力に頭が下がる思いでした。
ちなみに「宝塔」の隣には、麻袋を再加工する製造所(畳屋さんのような雰囲気)があり、斜め向かいには「鯉ぶし 大もり」というカツオぶしなどを売る古い商店(店内で削っている)があるせいか、古い町の雰囲気が界隈に少しだけ残っています。
餃子が焼けたのでアツアツをいただくと…アンがやわらかくて口の中でほぐれていきます。皮ももちもちで美味でした。
立石で40年以上鍋を振り続けているという店主の背中を見つめながら、2杯目の玉露ハイを呑んでいたら“中華鍋を振る音”が聞きたくなったので、シメの一品は炒め物。
野菜も食べたかったので「豚肉と野菜のトウバンジャン炒め」をお願いしました。
立石価格のお会計を済ませ店を出ると、すぐに線路と踏切。
遮断機の前でお母さんに手を引かれた小さな男の子が電車を楽しそうに見ていました。
その姿を見ながら、あの子がもう少し大きくなる頃、どんな町になるのか…
その時、この街並みを覚えているのだろうか…と思いつつ、はやいうちに「呑んべ横丁」へ行かなければ…と焦りつつ、駅に向かいました。
店名:中華酒房『宝塔』
住所:東京都葛飾区立石3-31-6
電話:03-3695-0867
営業: 月~土 11:00~20:30
定休日:日曜
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Fujisan.co.jpより