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フアイアは新たながん治療の希望となるか?今後の漢方研究に要注目


ある程度歳を重ねると、誰もが気になるのが健康。健康診断の結果で一喜一憂したりすると「ああ、俺もオッサンになってしまったな」なんて実感する人もちらほら(笑)。一方で気になるのは、近年死亡原因として特に高い率を示しているがんであります。医療の発達で生存率も高くなってきた感もありますが、やはりできれば長生きしたいもので、さまざまな情報は気になるところですよね。

そんな中、一つの漢方生薬が注目されています。2018年に、医学界でも権威のある医学専門誌「GUT」(※)に中国で抗がん新薬として使用されているフアイア(Huaier)と呼ばれる生薬を、肝臓がんの患者686人に飲ませたところ、飲まない316人に比べ96週後の生存率で明らかな差が出たという発表がされました。

この抗がん新薬の研究発表に大変衝撃を受けた西洋医、かつ漢方医の新見正則先生は、これががん治療に一石を投じる可能性があると考え、今年10月に福岡で行われた「第57回日本癌治療学会学術集会」で、学術セミナーの一コマとしてこの内容を発表、大きな反響を受けました。これを受け、11月7日に東京にて「抗がんエビデンスを積み重ねる『フアイア』記者会見」を開催しこの詳細と現在の研究状況について発表されました。

フアイアとは、カイ栓菌糸エキスと呼ばれるもの。槐(エンジュ)の老木に映えるキノコのうちの1種類が、この生薬の原料になります。主成分はPS-Tと呼ばれる6種類の糖と、18種類のアミノ酸が結合した多糖蛋白になります。現在はこのキノコを採取することはできませんが、中国ではこの元になるカイ栓菌の菌糸体で培養することに成功しています。

また中国では漢方第一類抗がん新薬として保険治療の適応となっていますが、日本では中国における医薬品と同等のものが、健康食品として輸入されています。副作用としては、現状の報告では軽い下痢症状が出る場合があるといいます。

「GUT」に発表されたものは39施設での根治手術後の肝臓がん1044例に対して、フアイア20グラムを毎日3回服用した群686例と飲まない群316例を比較(ただし、脱落例があるため、足し算は合いません)。これにより96週後までの無再発率、生存率ともに明らかな有意差を示したといいます。

ここで有用性を示すエビデンスについてですが、通常は実験室で動物やシャーレ上での実験という下のレベルから、各個人の経験(症例報告)の分析などに始まり、トップはRCT(二つの集団をくじ引きまで決めて、それぞれの効果を検証する方法)、DBRCT(実薬と偽薬を使用する方法)という段階にレベルアップしていきます。通常、明らかなエビデンスがあると主張するには、このRCT以上の段階の検証が必要とされています。

もともとは1970年代末に、末期の原発性肝臓がん患者がフアイアを服用して完治したという報告があり、中国衛生部は複数の医薬研究機関より100人近くの研究者を集めてフアイア研究をスタート、10年以上の歳月を掛けてフアイアエキスを作り上げ、1992年に漢方第一類抗がん新薬として認可されました。この試験はRCTレベルで行われ、その結果が「GUT」に示されています。

日本国内でフアイアが医療用医薬品として認可されるには、今後厳密な試験で得られる高いレベルでのエビデンスが示されていくことが必要となっています。今後の研究の動向にも注目していきたいところであります。

※GUT:イギリスの医学専門誌。医学の専門誌には権威性を図る数値としてインパクトファクター(IF)と呼ばれる数値が付けられています。通常の医学専門誌はIF 2〜3のものがほとんどですが、「GUT」は2018/2019年において17,943という非常に高い値となっています。

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