
Insta360は2025年で創業10年を迎え、中国のハイテク企業向け「STAR Market」に上場を果たしました。7月に創業者のJK Liu氏が来日。取材に応じ、これまでの10年を振り返り今後の展望について語りました。
10年を振り返って
JK:この10年を振り返って、いくつか大きな動きがありました。ひとつは企業の方向性が定まったこと。人々の記憶に、よりよい体験を与える、ということです。360°カメラだけでなく、現在はアクションカメラ、ジンバルのようなより多くの人が手に取る製品も手掛けています。
挫折もありました。過去には品質管理の問題や、人員の拡大と管理の問題もありましたが、ひとつひとつ課題を解決してきました。
――最大のターニングポイントは何だと思いますか。
JK:ひとつは「Insta360 Nano」から、360°カメラの提供を開始したこと。もうひとつは、360°カメラから広角アクションカメラ、ウェブカメラ、ウェアラブルカメラ、ジンバルなど製品のプロダクトラインを広げることで売上を拡大できたことです。
日本市場での展開について
JK:日本市場では、最初は重視していなかったオフラインでの販売が重要だと気づきました。リサーチや改善を重ねてオフライン販売のチャネル展開やディスプレイに力を入れるようになり、ブランドイメージや製品を体験してもらうチャンスを大事にしています。

※「Insta360 X5」発売の際には、羽田空港第3ターミナルに新製品のタッチ&トライや撮影体験ができるポップアップストアを期間限定でオープン
――日本国内で一番売れている製品は。
JK:Xシリーズです。日本の360°カメラ市場ではシェア50%以上を獲得しています。
360°カメラの競合優位性
――Insta360の360°カメラの強みは何でしょうか。
JK:レンズが頑丈かつ、Insta360 X5ではレンズが交換可能になっています。これは他社では実現できていない特徴です。

360°カメラは動画の編集が大変ですが、Insta360はアプリやソフトウェアのアップデートでだいぶ編集が楽になっています。今回家族と日本を旅行した様子を360°カメラで録画したのですが、スマホアプリで自動編集すると、重要なシーンや角度をAIが自動で選んでくれます。初心者にとっても使いやすくなっているのではないでしょうか。
360°動画のデータを保存できるクラウドサービスも強みです。他社より低価格で提供できていると思います。
※ベーシックプランでは年額4990円で200GBのデータを保存可能
Insta360のフラッグシップ360°アクションカメラ「Insta360 X5」レビュー 低照度にも強い高画質と動画編集ワークフローの進化に注目https://t.co/00gBc2qpgXpic.twitter.com/uUKF92bnhz
—ガジェット通信(公式) (@getnewsfeed) May 2, 2025
クラウドに保存した動画は2Dで書き出してLINEでもシェアできるし、360°動画で残した記録は将来的によりクリエイティブな映像にできたり、360°動画を鑑賞するビジュアライゼーションの進化にも期待できると考えています。

――ビジュアライゼーションの技術で言うと、360°動画を再生しているスマホをARグラスにつないで見ると、画面のスワイプで視点を変えたり手軽に臨場感のある映像が楽しめるんですよね。たとえばカメラ本体のUSB-Cポートから直接ARグラスにDisplayPort出力できると、本体のプレビュー再生がもっと臨場感が増して楽しめるのではないかと思うのですが。
JK:私たちもARグラスのような技術を研究しているところです。詳細は申し上げられないですが、ご期待に応えられるよう頑張ります。
今後の展望
――上場による資金調達で、今後何を目指していくのでしょうか。
JK:プロダクトラインを増やしていき、より多くの消費者に製品とサービスを提供します。あと、製品の上流の工程にもチャレンジしていきたいです。チップやセンサーを独自開発するかもしれないです。流通はローカルの戦略を重視して、日本ではオフラインのブランドストアをオープンしたいと考えています。
JK Liuプロフィール
Insta360は、2015年に劉靖康(Jingkang Liu/JK Liu)によって設立されました。幼少期からテクノロジーに強い関心を抱き、「人々の創造を支える映像体験の革新」を志してInsta360を起業。360度カメラおよびアクションカメラ分野において、同社を世界有数のブランドに成長させてきました。Liuは、米Forbes誌の「30 Under 30(30歳未満の注目起業家)」に選出されるなど、イノベーションと起業家精神において高く評価されており、現在も製品の完成度を追求するプロダクト主導のリーダーとして開発現場を牽引しています。また、日本市場に対しても深い関心と理解を持ち、自らInsta360日本公式YouTubeチャンネルに出演し、日本のユーザーからの質問や要望に日本語で回答するシリーズ「教えてJK」などを行うなど、ユーザーとの距離の近さも特徴です。こうした姿勢は、多くの日本のファンやクリエイターからの信頼にもつながっています。