「寄生獣」や「ヒストリエ」などで人気を博す岩明均が、1996年から1999年にかけて小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて不定期連載したSF漫画「七夕の国」。 岩明の作品の中でもカルト的人気を誇り、その壮大なスケールと刺激的な表現から「映像化困難」と言われ続けていた“怪作”が、 『ガンニバル』などの話題作を手掛けるディズニープラス「スター」にてドラマシリーズ化され、現在独占配信中です。
“あらゆる物に小さな穴を空ける”という何の役にも立たない超能力を持つ平凡な大学生、南丸洋二:通称ナン丸を細田佳央太さん、ナン丸と次第に心を通わせていく女性・東丸幸子役に藤野涼子さん、幸子が恐れる兄・東丸高志役に上杉柊平さんと注目の俳優陣が熱演。木竜麻生さん、三上博史さん、山田孝之さんと豪華な面々が集結しています。
ガジェット通信では細田さん、藤野さん、上杉さんにインタビュー。本作の魅力についてお話を伺いました。
――本作大変楽しく拝見させていただきました。私はもともと原作のファンなのですが、原作の要素を活かしつつ、もっと見たかった部分が膨らんでいてとても素晴らしかったです。
細田:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。面白いですよね。
上杉:僕も完成したものを観た時に「面白かった」という率直な感想が出てきたので。
藤野:自分が出させていただいている作品ですが、客観的にに観ても本当に面白くて。
上杉:1話1時間で10話に分けてくれているからこそ描けている要素も多いと思います。カラッとしていない世界観、ジメっとしたこの国特有の空気みたいなものを丁寧に描けたのはディズニープラスというフォーマットであることも大きいのかなと思いました。
細田:しっかりと描いているのに、テンポ感もすごく良くて。「丸神の里」に行くまでの展開を1話で描いていることで、2話から10話で人物描写もミステリー描写も丁寧に描くことが出来て。監督も多分そこはすごく意識されたんだと思います。
藤野:原作にはない要素であったり、私が演じた幸子の過去などまだ深掘りされていなかったところを描いたことによって、人物の深さがさらに増したのかなと感じました。
――日本でしか作れない作品だと感じましたし、ディズニープラスで配信ということで全世界の方がご覧になるのも素晴らしいなと。
細田:上杉さんがおっしゃった様に、日本人が作るからこそのジメっとした感じがあって。皮肉が効いていますよね。海外の方がご覧になったら、日本人が作るからこその面白み、説得力を感じるのだろうなと思います。
上杉:神様に対する考え方も違いますものね。日本人には神様という存在がたくさんいる。八百万の神というか、それぞれの土地に神様がいるという考え方をしますよね。信じるものがたくさんあることは、僕らにとっては自然だけれど、海外の方から見ると丸神の里で行われていることっておそらくカルト的な感じがするのかなと思います。そういった文化の違いも面白く感じてもらえるのではないかと。
藤野:色々な国の方にがこの作品に触れてくれるのはいただけるのは、ディズニープラスならではで、楽しいですよね。
――撮影が一年ほど前ということでしたが、現場ではどの様に撮影を進められていたのですか?
細田:大学のゼミ室での撮影はすごく和気藹々としていました。
藤野:私は途中から撮影にインしたのですが、すでに大学生チームの関係性が出来上がっていて、本当に一緒の大学に通う仲間みたいに仲良しで楽しそうでした。結構アドリブもあったのですよねりましたよね?
細田:台本に書かれているシーンが終わってもカットがかからずお芝居を続けたり、そういう演出もあって素の会話もありましたね。
藤野:そうだったんですね。私はそういうナチュラルな雰囲気がすごく好きで、完成した映像を見ても素敵だなあと思っていました。
細田:高志さん(上杉さん)は頼之さんとご一緒しているシーンが多いですよね。高志さんはナン丸に能力の使い方を教えてくれて、ナン丸は高志さんに特別な感情を抱いているので、上杉さんと絡むシーンは特に大事でした。上杉さんご本人の雰囲気もあって、心のガードも無くご一緒出来たのでありがたかったです。
上杉:僕、個人的に細田さんのファンだったんですよ。細田さんの出られている作品も好きなものが多くて。「七夕の国」でる“ことなかれ主義”の青年(ナン丸)をこんなにリアルにお芝居出来るんだと思っていました。そこから様々な出来事を経て変わっていく様子に説得力があって、目が綺麗で、言葉の出し方もすごく綺麗だなと見ていました。
細田:本当に嬉しいです。ありがたいです。
上杉:藤野さんの作品もずっと観ていて。幸子の弱い部分と、強い部分を演じるえんじることってとても難しいと思うのですが、藤野さんの目を見た時にすごいなって。いち観客として観ていて好きだったお二人お2人とお芝居が出来て、そりゃ楽しいわな俺って。幸せな現場でした。あと2人の声が綺麗で好きです。
藤野:私は声が低くて、自分としてはコンプレックスでもあったりするので、声を褒めていただけて嬉しいです。声に関していうと、山田孝之さんはと共演していく中で、頼之さんのは特殊メイクをしているので表情が見えないのに、声だけで感情が伝わるんです。抑揚もつけてないし、淡々と話しているだけでも心にガッと入ってくるのはなんでだろうと、すごく感動しました。
上杉:分かる。芝居って視覚情報じゃないんだなと思いました。どうしても視覚情報に頼っちゃうし、表情に意識がいってしまうんだけど、そうじゃないんだということを現場で山田さんの声を聴いて学びました。表情が見えなくても、悲しみとか怒りとか体から滲みでているんですよね。
藤野:声にも感情を入れちゃったりする時もじゃないあるのですがか、。それが余計なこともあるんだってすごく勉強になりました。
細田:頼之さんすごすぎたよね…。何を考えて、どう芝居をされているのか、純粋にお話を伺いたいなと思います。
――本作はエンタメでありながらも、現代社会へのメッセージもたくさん含んでいて、見応えを感じたのですが、皆さんは「七夕の国」からどの様なことを感じましたか?
上杉:僕らはナン丸君の視点で作品を観るから丸神の里って怖くて不気味だという見え方になるけれど、丸神の里のみんなから見たら他の街の人間の方が怖い。現実世界に置き換えて考えてみると、丸神の里側に近い人が多いんじゃないのかなと思っています。日本は島国で、もともと閉鎖的な部分もあったと思うのですが、今でもこの国の中だけで暮らしている人が大半のように思います。今、この「七夕の国」が映像化することはすごく意味のあることだと思っています。
藤野:幸子は丸神の里丸川町から出て行くことが難しい人間です。が、そうやって土地に囚われるとか、たり、何かに囚われていることってあると思います。ナン丸さんも、最初は普通の大学生と同じで就職どうしようかな、とかそういった悩みに囚われていますけれど幸子との出会いで丸川町丸神の里にも関わって自問自答しながら成長していきます。私は原作でもドラマでもナン丸さんのご最後のセリフがとても好きなんです。私たちと同世代の方がこの作品を見て、囚われていることから脱却するきっかけをつかんでくれたら嬉しいですし、「少しでも@進んでいこう」という気持ちを持ってくれたら嬉しいです。
細田:綺麗に言えば「伝統文化」みたいなものが根付いている国で、変化を恐れがちじゃないですか。今、日本の中で文化とか考え方、常識みたいなものを大きく変えようとしている途中なのだと感じています。
僕は日本生まれ日本育ちなので、悪く言えばそういった日本の古臭い考え方も感じてきたし、自分自身でもそういう考え方をしていた時があったと思います。「七夕の国」が配信されるタイミングと内容自体が今の日本において、意味がすごく大きいなと思っていて。未来を変えるために僕たちがどう自分たちの声を使っていくのかが注目されている今、この作品が世に出て良かったなと思います。ずっと俯瞰している物語なんですよね。
上杉:そう、“気付けるかどうか”がポイントになってくるのだと思います。
細田:エンターテイメント作品として楽しいですし、そういった大事なポイントもがたくさん含まれているので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。
――皆さんから素敵な言葉をたくさんお聞き出来て、光栄です。今日はありがとうございました!
『七夕の国』
「寄生獣」岩明均の怪作をディズニープラスが実写化。
ある日、ビルや人が、何者かが操る“球体”にまるくエグられた—— 事件の解明に巻き込まれた平凡な大学生ナン丸はある閉鎖的な町を訪れるが、 そこには、彼の運命を狂わせる数多の謎が隠されていた…。 この夏、日常をエグる、不気味な超常ミステリーが始まる。
(C)2024 岩明均 / 小学館 / 東映
原作:岩明均「七夕の国」(小学館刊)
ディズニープラス「スター」で独占配信中
公式サイト https://disneyplus.disney.co.jp/program/land-of-tanabata
撮影:たむらとも
<クレジット>
細田佳央太さん
HairMake:NOBU(HAPP’S)
Stylist:Satoshi Yoshimoto
藤野涼子さん
HairMake:Koichi Takahashi
Stylist:Saori Katayama
上杉柊平さん
HairMake:kazuma kimura(skavgti)
Stylist:RIKU OSHIMA