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積水ハウスから63億円を騙し取るほどの闇! 根強く残る「地面師詐欺」のヤバい手口!



どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。


今から遡ること3年前、2017年の8月―—不動産業界に激震が走りました。


東京五反田の600坪の一等地を舞台にした巨額地面師詐欺事件が起こったのです。被害に遭ったのは、大手住宅販売メーカーの積水ハウス。その被害額はなんと63億円


地面師詐欺とは、土地所有権者が知らないうちに本人確認のための印鑑登録証明証やパスポートが偽造されてしまい、それを使った成りすましの詐欺師が手付金を受け取るというもの。



<※写真はイメージです>


今回は、昔から根強く生き残っている「地面師詐欺」の手口について触れていきたいと思います。


昔は登記所の登記簿を偽装できた


土地というのは、登記所にある登記簿に「所有者は誰なのか」ということで、登記されています。もちろん、借金などで抵当に入っているかどうかということも、その登記簿をみれば一発でわかります。


ちなみに登記所というのは通称名です。登記所の正式名称は《法務局出張所》といいます。



かつて、登記簿の原本はバインダー方式で、簡単に閲覧ができました。地面師の手口は、申請者の対応に追われている職員を尻目に、登記簿原本の用紙をごっそりと引き抜き、自宅へ持ち帰って地面師の仲間であるなりすまし役の名前を登記用紙へ記入します。つまり偽造ですね。今度は再び登記所へ舞い戻って、偽造した“登記簿”とすり替えるのです。


それから土地を売りに出せば、(偽造された)登記簿を確認して信用した買主(カモ)に売れるわけなんですね。


登記簿には「公信力」というものがない


地面師が偽装したウソの登記簿を確認して騙された買主は、その地面師が逮捕されない限りは救われることがありません。しかも被害額を海外に逃がされていたりすれば、お金を取り戻すことなどできないんですね。



前述の積水ハウスの一件も、海外の口座に63億円の多くが逃がされているために、口座を凍結させて、取り戻すということは難しいようです。


実は、登記簿というものには公信力(登記表示を信頼し、不動産取引する者は、例え登記名義人が本物ではない場合でも、一定要件の下でその権利の取得が認められること)がないんですね。もともと登記所という場所は、登記申請の書類審査などは行っておらず、ホンモノの所有者かどうかなんて調査はしていないんです。


ですから、「登記簿なんていい加減なものだから騙されても助けてあげられないよ!」と初めから謳っているわけなんですよね。



登記簿の電子化に伴い、手口が変わった


しかし、最近の登記簿は電子化が進み、このような手口が使えなくなりました。では、地面師は絶滅してしまうのか? いえ、登記簿の電子化に伴って、地面師たちの手口が様変わりしたのです。


積水ハウス事件の手口として使われたのは、登記簿の改ざんなどはまったく行わず、登記されている所有者に成りすますという方法をとりました。東京オリンピックや大阪で行われる万国博覧会などで地価が高騰した現在、この手口での地面師詐欺が横行しています。



積水ハウス事件での積水側の落ち度は、東京の土地高騰に欲に目がくらんで、しっかりと裏ドリを行わなかったことでした。事件を紐解くと、なんと営業部長レベルを飛び越えて、常務や社長たちまでもがその土地にかじりついてしまったというのです。


実際にその土地に建っていたのは廃業した旅館でした。その旅館の女将に成りすましていた女は、やりとりの際に干支を間違えたりしたといいます。その時点で地面師の存在を疑うべきなのですが、積水ハウスは突っ走り続けました。


しかも担当の営業マンは、その土地の周辺エリアへの聞き込みを怠ったりと素人目に見てもお粗末な売買契約をしてしまい、63億円という巨額地面師詐欺事件に発展してしまいました。気づくべきポイントをいくつもスルーしてしまったことを考えると、騙されて当然といえば当然だったわけです。



この地面師詐欺事件はほんの一部


地面師が起こした詐欺事件、実は調べれば調べるほど多くの被害が出ていることがわかりました。


井之頭通り富ヶ谷交差点にある147坪の空き地を舞台にした地主の台湾華僑なりすまし事件。これは、日本在住ではない台湾華僑の土地に地面師たちが目をつけ、デベロッパーを騙したというもので、地面師と弁護士が組んでいたとして注目されました。


さらに、赤坂にある駐車場を巡って、ホテルチェーン『アパグループ』が12億6千万円を騙し取られた事件なども明るみになっています。



このような地面師詐欺事件の難しい部分は、おおよそ被害総額の数%程度の報酬を受け取るなりすまし犯を除く、不動産ブローカーや売買仲介業者、不動産会社、デベロッパー、買主、弁護士、司法書士のすべてが「私は知らなかった、見事に騙された」といえば、全員「善意の第三者」として無罪放免になるということなんです。


今後は、登記所のデータ改ざんであったり、フィッシング詐欺のような登記簿のなりすましデータを使うケースなんかも出てくるかもしれません。「そんなのできるわけない」と思ってしまう心理が、地面師をはじめとした詐欺師たちの目のつけどころなのです。



地面師たちは生き残りをかけて、日々様々なアイデアを生み出し続けているはず。不動産業者の方はお気をつけください!


(C)写真AC


(執筆者: 丸野裕行)


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