今回の勝手に映画薄口レビューは、7月3(金)にブルーレイ&DVDの発売が決まった『劇場版 おいしい給食 Final Battle』です。ドラマから追っていたこともあり、大変面白かったです。このレビューは薄口ですが、映画の味付けは望外に濃厚でした。給食だけに。ともあれ、映画版のほうの“隠し味”は、綾部真弥監督の絶妙なサジ加減が奏功していると思います。以下、ネタバレしていくので、気になる方は退避してください。
■公式サイト:https://oishi-kyushoku.com/
お話は非常にシンプルです。給食マニアの教師と生徒による“どちらが給食をおいしく食べるか”という熱いバトルを描いた学園グルメコメディーとなっています。学校というクローズドな空間が舞台なので、人間関係や状況把握も簡単で観やすい。とにかく観やすいです。ドラマ版があるので、もちろん観ていたほうが劇場版の感動がいや増しですが、仮に観ていなくてもそれなりには感動すると思います。給食あるあるも豊富なので、1980年代に子どもだった世代には、ノスタルジーも襲ってくるでしょう。
で、冒頭に述べた映画版のほうの“隠し味”ですが、これは市原隼人さん演じる給食マニアの教師・甘利田幸男のキャラクターについて、です。ドラマ初登場の段階で、とにかく給食のことしか頭にない突飛なキャラクターで、それを硬派なイメージが濃い市原さんが真顔で演じているので、余計に面白いわけです。かつての喜劇王バスター・キートンも一切笑わないことで観客の爆笑を誘っていましたが、市原さんのギャップも相当です。
で、そこだけ注目するとヘンな教師の物語になってしまうのですが、実は綾部監督は、それだけで終わらないようにしていた、というわけです。監督のほかの作品に『ゼニガタ』がありますが、ここでも(キャラ変まではいかないまでも)監督の想いが乗っているキャラクター(主人公)に最終的になっていました。映画ですので、映画用のエモーショナルな展開が用意されているものではありますが、もしかすると、この手の変更のサジ加減は、演出家や演じ手の人となりが出るもの、なのかも知れません。特に筆者は『ゼニガタ』を観ていたので、余計にそう思ったというわけです。つまり、甘利田先生のキャラクターを厚くすることで、観ているほうも、その変化に気づくわけです。映画の前半と後半でも違いがあります。この意味を、どう受け取るか、なのですが、筆者は<優しさ>と解釈しました。綾部監督の優しい眼差しが光る本作を観て、ぜひ何か感じてみてください。
ちなみにガジェット通信では、映画公開時にインタビューを行いました。本来ならば今回の薄口レビューも映画公開時に掲載の予定でしたが、世の中の未曽有の事態を経て、この時期に変更となりました。
■関連記事:「市原隼人という才能を無難にまとめてはもったいない」:『劇場版 おいしい給食』綾部真弥監督インタビュー [リンク]
■関連記事:市原隼人インタビュー「単純に監督に惚れていたんです」 『劇場版 おいしい給食』への熱い想いを明かす [リンク]
■関連記事:武田玲奈「作品の中で生きている人でありたい」 幾多の経験が変えた、女優としての意識と覚悟 [リンク]
『劇場版 おいしい給食 Final Battle』ブルーレイ&DVD 発売情報
発売日:2020年7月3日(金)
発売:「おいしい給食」製作委員会
販売:アメイジングD.C.
(執筆者: ときたたかし)
―― 面白い未来、探求メディア 『ガジェット通信(GetNews)』