今回は安岡孝一さんのブログ『yasuokaの日記』からご寄稿いただきました。
日本の法令における「一日」と「二十四時間」(yasuokaの日記)
ネットサーフィンしていたところ、『東京五輪終わっても「サマータイム」恒久的運用へ』*1(スポーツ報知、2018年8月8日)という記事に、面白いことが書いてあるのを見つけた。
*1:「東京五輪終わっても「サマータイム」恒久的運用へ 議員立法による成立を目指す」2018年08月08日 『スポーツ報知』
https://www.hochi.co.jp/topics/20180808-OHT1T50025.html
◆夏時間への切り替え方 導入初日を4月の最初の日曜日とした場合は午前2時に2時間進め午前4時に合わせる。夏時間が始まる日曜日は1日が22時間になる。10月最後の日曜日をサマータイムが終わる日とした場合は午前4時に2時間戻し午前2時に合わせる。この日は1日が26時間となる。
いや、それは、かなりマズイことになると思う。現在の日本の法令は、そのほとんどが「一日」を「二十四時間」だと仮定していて、しかも、同じ時刻が二度存在しないことを、大前提としているからだ。たとえば、戸籍法施行規則第二十一条第七号。
死亡又は失踪の届出については、死亡の年月日時分又は死亡とみなされる年月日
ここで「サマータイムが終わる日」の「午前2時5分」に死亡した人は、「最初の午前2時5分」か「2回目の午前2時5分」なのかをちゃんと記録しないと、死亡の前後関係が狂ってしまって、相続関係に問題が生じる。しかしながら、現在の電算戸籍システムは、そんな死亡記録が書けるようになっていない。戸籍法施行規則を誰がどう改正して、システム改修を誰がどうおこなうつもりなのか。そのための費用と時間は、誰が負担してくれるのか。
あるいは、戸籍法第四十九条第二項第二号。
出生の年月日時分及び場所
これも同じく「サマータイムが終わる日」の「午前3時」に生まれたりすると、とんでもなくヤヤコシイことになる。サマータイムを推進したがっている人たちは、そんな時間に子供が生まれたりしない、とでも思ってるのだろうか。
あるいは、刑事訴訟法第五十五条。
期間の計算については、時で計算するものは、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。但し、時効期間の初日は、時間を論じないで一日としてこれを計算する。
月及び年は、暦に従つてこれを計算する。
期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、これを期間に算入しない。ただし、時効期間については、この限りでない。
この法律に出てくる「二十四時間」「四十八時間」「七十二時間」とかは、それぞれ「一日」「二日」「三日」と等しいことが前提になっている。でも「サマータイムが始まる日」は「一日」が「二十二時間」になってしまうし、「サマータイムが終わる日」は「一日」が「二十六時間」になってしまうので、そこの矛盾を誰がどう解決するのか。それは、現実の「拘留」という場面において、ちゃんと現場において機能するのか。
立法府においてサマータイムを議論する、というのは、本来は、こういう作業であるはずだ。既存の法令との矛盾を全て徹底的に調査して、どこをどう直せば全体として整合性が取れるのか。その結果、既存のシステムにはどういう影響が出て、それは改修可能なのかそうでないのか。それに要する費用と時間は、いったいどのくらいになるのか。そういったことをちゃんと議論すべきなのだと、私(安岡孝一)個人は思うのだが。
執筆: この記事は安岡孝一さんのブログ『yasuokaの日記』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年08月09日時点のものです。
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