9月15日、人気お笑いコンビ・ライセンスの藤原一裕さんが処女小説『遺産ゲーム』を刊行する。
原と英次というチンピラコンビが主人公で、愚図の能無しだとばかり思っていた兄貴分が、実は所属する暴力団を転覆させ大金をせしめようと企む野心家だったというスリリングなストーリー。
『遺産ゲーム』あらすじ
バカだバカだと思ってた兄貴が、実は一番ヤバイ奴だった……! 狙うは、テレビに映る2億円。完全犯罪は完遂されるのか。原&英治のチンピラコンビ初お目見えの「別荘」含む7編の連作短編集!
これまでライセンスがライブで演じてきたコントの中からさまざまな要素が引用されており、藤原さんならではの世界観が楽しめる意欲作だ。
又吉直樹さんに続き文学界に一石を投じることはできるだろうか?
9月17日には東京都千代田区の三省堂書店神保町本店でサイン会が予定されるなど、関係者の間ではすでに大きな反響が予想されている。
『藤原一裕遺産ゲーム刊行記念サイン会』
【日時】
平成29年9月17日
14:00~【会場】三省堂書店 神保町本店
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-1
https://www.books-sanseido.co.jp/shop/kanda/【参加方法】
『遺産ゲーム』を三省堂書店 神保町本店で購入した方先着100名に参加整理券を配布します。
参加ご希望の方はウェブかお電話で予約してください。ウェブ予約:https://reg34.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=nfoc-lalilc-a76e24a8ac97ff532982c0b969c94022
電話予約:03-3233-3312(午前10時~午後8時)※会場での写真撮影不可
※『遺産ゲーム』以外へのサインはで不可
※購入は一人2冊まで
またメディア向けに『遺産ゲーム』の第一章『別荘』が先行公開されている。
ガジェット通信でも当記事に該当部分を掲載するので是非お読みいただきたい。
「別荘」
薄暗い厨房。輪切りにした木のまな板のすぐそばで男の声がする。「エビチリのケチャップ多め? 本当に? オススメしないよ。面倒くさいね。はい、了解」という言葉のすぐあとにものすごい速度と力で中華包丁がまな板に叩きつけられ、深く刺さった。
駿河湾に臨む伊豆半島黄金崎の高台。右手には漁を終えた海の男達が帰港する宇久須港。水面がキラキラと太陽の光を反射して思わず目を細めてしまう。視線をまっすぐ宇久須港から上に上げれば悠然たる富士山が望める。この景色を見ただけで、この地に白亜の別荘を購入した理由が分かる。それほどの絶景である。表向きは建設業関連の会社名義になっているらしいが、建物を取り囲む外壁の高さ、そこからまだ上に伸びる先端が槍状に尖った柵、車の出入り用に開閉する特注強化シャッター、その横にある観音開きの重い鉄扉、敷地の外周を全て見渡す事が可能な8台の防犯カメラ、それらの外観から、中にいるのが堅気の人間ではないのが分かる。
別荘の玄関前で兄貴分の原辰仁と俺は見張りを任されていた。
歌舞伎町雑居ビルの競売としのぎをめぐって他所の組との抗争がしばらく続いていたが、ウチの組が強引におしきり収束に至ったので、慰安会と称して組長、幹部、組員全員で別荘に訪れていた。だが慰安会とはいえ俺らのような下っ端の組員が楽しめる訳もなく、組長、幹部、数名の上に居座り威張るだけしか能のない組員が酒を飲み女を貪るのを背中に感じ、ほとんどの組員は見張りや雑用に駆り出されていた。
この世界に飛び込む前はもっと実力社会だろうと思っていたが、入ってみると年功序列が根強く残っており、結果を残している者ですらなかなか上へは上がれないのである。その上意地汚い人間の集まりなので手柄を横取りされるなんてこともしょっちゅうだった。だから意外にも、少し古いドラマで日曜の夜にやっていた、不遇にもめげず上司に食らいつき倍のお返しをする銀行を舞台にした物語にのめり込んだりもしてしまった。棲む世界は違えど人間関係が作り出す構造は何処も一緒かもしれない。サラリーマンと同様に無能な上司を持つと苦労する。
「おい」
「……」
「おい」
「はい、なんでしょう」
無能な兄貴分、原が声をかけてきた。1回目の呼び掛けで返事をしなかったのは聞こえなかったからではなく、馬鹿と話したくなかったから無視して真面目に見張りをしているように見せていたのだ。
「お前この別荘来んの初めてだろ」
「はい」
「わりと小さいじゃねえか、とか思ってんだろ」
「思ってないっす」
「ヤクザの別荘なんだからもっとでけぇんじゃねえのかよって思ってんだろ」
「思ってないっすよ、充分でかいっすよ」
「噓つけ、思ってるよバカヤロー。真面目に見張りなんかやってんじゃねえぞ、どうせ誰も来やしねえんだからな」
確かにそれは俺も感じていた事だ。こんなド田舎の見晴らしのいい別荘にこちらが招いた客以外が近づいてきたら目立って仕方がないだろう。気を抜いた見張りでも、その存在を見落とす事はないように思える。
背にしている玄関の中から俺達を呼ぶ幹部補佐の牛嶋の声がする。
「おい、見張りの奴いるか」
「へい」
長年の見張り癖なのか、上の御用聞きは自分と決め媚びへつらっているのか、素早い返事でドアを開け、馬鹿が入っていった。
「玄関の靴が揃ってねえじゃねえか。お前らの仕事だろ? 細かいところから徹底してやれ! 誰の計らいでこの別荘来れてんだよ、組長のお陰だろうが! 組長の別荘散らかしてんじゃねえ!」
「へい」
「だったらさっさと並べろコラァ!」
「へい」
おそらくは靴をしっかりと並べたであろう時間を要してからドアが開き、ゆっくりと戻ってきた原が何事もなかったかのように先程と同じく俺の横についた。
「おい」
「はい」
「今、コイツ怒られたなぁって思ってんだろ?」
「思ってないっす」
「平然と何事もなかったようにゆっくり帰ってきたけど、怒られた時の何とも言えない気まずい空気バンバン出てんじゃねえかって思ってんだろ?」
「思ってないっす」
この能無しの下に付かされて、そろそろ2年を迎えるだろうか。
俺にはこの能無しから離れない理由がある。いつでもコイツと立場を入れ替えられる自信も実力も俺にはあるが、手柄を横取りされてもそれをしない理由がある。この能無しに対して一切の尊敬も憧れもないが、偉そうにさせてやっている理由がある。
本人は気がついていないが、見張りや長時間に及ぶ幹部送迎のドライブなどの退屈しのぎにはもってこいの男だ。
原は何時如何なる時でも軽いミスや不手際で怒られ、そしてその様には他人にはない滑稽さがある。そう、笑えるのだ。怒られた時の言い訳やリアクションも絶妙だ。他の組員から、原のバカと組むのは嫌じゃないのか、辛くないのかと聞かれるが、全く嫌でも辛くもない。愉しくて仕方ないくらいだ。同じつまらない雑用をするなら、間抜けでおもしろい男といたほうがずっといい。しかも原が失敗してくれることでこちらの評価が上がるときもあるのだから。
「おい」
玄関からまた牛嶋だ。「へい」という返事と共に原が入っていく。
「おい、オヤジの車ちゃんと洗車したのか?」
「へい」
玄関から二人のやり取りが漏れてくる。
「ワックスがけは?」
「へい、やりやした。やっぱりオシャレな車にもオシャレな髪形にもワックスは欠かせないですからね」
「てめえ、余計なこと言ってんじゃねえ!」
「へい、すいやせん!」
「何だその謝り方は! はい、すいません、だろうが!」
「へい! すいやせん! あっ間違えた。はい! すいません」
「もういい、下がってろ」
またも原が何事もなかったように俺の隣にゆっくりと戻ってきた。
玄関の中で怒られていたビクビクした雑魚の雰囲気と、俺の横に悠々と戻ってきたときの堂々たる兄貴として醸し出す雰囲気の温度差が、またたまらなく面白味を増幅させてくれる。
そしてこちらに視線をくれず、正面を見据えたまま話し掛けてくる。
「髪の毛のワックスのくだりいるか? って思ってんだろ」
「思ってないっす」
「変な謝り方するから、その分余計に謝ってんじゃねえかって思ってんだろ」
「思ってないっす」
お見事なぐらい、こっちが思っていることを突いてくる。これが本当にたまらない。しかしここで笑ってしまうと兄貴分という名目を武器に羞恥心を隠すためだけの鉄拳が飛んでくるので絶対に笑えない。腹筋に力を入れて耐え忍ばなければ、原を腹の中で笑っているのがバレてしまう。
「おい」
牛嶋も人が悪い。1回にまとめて言えば良いのにと思うのだが、退屈しなくてすむ。原がドアを開けて素敵な所へ入っていく。
「お前、この前の上納金納めたのか?」
「へい」
「じゃあどうして俺んとこに誰も来てねえって上から電話かかってくんだコノヤロー! 間違いないんだろうな?」
「へい、間違いありやせん。ちゃんとATMから振り込みやした」
「あ? お前今何つった?」
「ですから、ちゃんと駅前の銀行のATMから振り込みやした!」
「バカヤロー! あの上納金は足がつかないようにちゃんとテメーで持ってけって言っただろうが!」
「すいやせん! あっすいません! 足が疲れないようにって言ってくれたんだと思って近くの銀行から振り込んじまいました! お気遣いありがとうございやす」
「何にお礼言ってやがんだテメー! ぶっ殺すぞ!」
「すいません! あっすいやせん!」
「ったく! 何が出来んだテメーは!」
「自分、店関係は大丈夫です」
「は?」
「ですから居酒屋、スナック、キャバクラ、ヘルス、ソープ、カラオケ特に問題ありません」
「意味わかんねえんだよ。何の話だよ!」
「だって、兄貴が何が出禁だって聞くから」
「ちげーよ! 何が出禁だじゃなくて、何が出来んだ!って聞いたんだよバカヤロー! 耳どうなってんだよ!ったく。いや、耳そのまま見せてくんじゃねえ! もういい外出てろ!」
「次から上納金は確実に自分で持っていきます!」
「当たり前だ!」
「それはそうと兄貴、ATMで振り込みにかかった手数料は経費で落ちますか?」
「落ちるわけねえだろ! 死にてえのか、テメー!」
声をあげて笑えないというのがこんなにも苦痛だとは原に出会うまで知らなかった。笑ってはいけないというのは気持ちに反して地獄のような苦しみをともなう。笑える快感というのは声を出して初めて感じるものなのだと思う。笑顔さえ作れない俺の顔面の全筋肉が悲鳴をあげていて、自分でもどんな表情なのか分からない。原が横に戻った。
「上納金をATMから振り込むって、コイツ馬鹿じゃねえかと思ってんだろ」
「思ってないっす」
「しかも訳わかんねえタイミングでお礼言って余計に怒られたなって思ってんだろ」
「思ってないっす」
「ちゃんと1回目ですいませんって言えてんのに間違えるのが癖づいちまって、すいやせんに言い直しちまって逆になってんじゃねえかって思ってんだろ」
「思ってないっす」
「どう考えてもあの流れで出禁になった店の話になるわけねえじゃねえかって思ってんだろ」
「思ってないっす」
「あのタイミングで手数料請求するって頭おかしいんじゃねえかって思ってんだろ」
「思ってないっす」
こんなにも苦しいのなら、いっそのこと敵対する組あたりがカチコミに来てくれたほうがどれだけ楽かと思ってしまう。今日の原は特に調子が悪くて絶好調だ。悲しくもないのに、愉しくて苦しくて涙が出てきた。
「おい」
牛嶋のその声に原は勘弁してくれと言いながら玄関のほうへ足を向けた。俺も違う意味で勘弁してくれと思いながら涙を拭った。次はどんな〝笑激〟が訪れるものやとある種の不安すら覚えたが、今回は少し違った。
「おめえじゃねえよ」
「すいません」
原が静かに戻った。
「コイツ、おいって呼ばれんのが癖づいちまって今回も俺だなって勘違いして玄関入っちまったなって思ってんだろ」
ここに来てこんな新しいパターンがあるなんて聞いてない。
「思ってないっす」
拭ってすぐにまた涙が出てきた。いつもベルを鳴らしてからご飯をあげていた犬が、ベルの音を聞くだけでヨダレを垂らしはじめたという条件反射の話「パブロフの犬」を思い出した。牛嶋の原だ。
「おい、英次」
どうやら牛嶋が呼んだのは犬ではなく俺だったようだ。原を見てしまうと我慢しているものが吹き出しそうだったので原に背中を向けて、玄関の中に入っていった。
「御用でしょうか」
「お前、うちのシマじゃねえのに地回りして、職安通り入ってすぐの風俗ビルしめたらしいな」
「はい、あそこしめたら組にとっても実入りがでかいと考えてましたんで」
「やるじゃねえか」
「ありがとうございます」
「これ、オヤジからだ。取っとけ」
「はい」
「あと今度からお前が上納金持って行け」
「承知しました」
確認しなくても、牛嶋からもらった分厚い茶封筒の中身が金であることは、持った感触から分かった。それを胸ポケットにしまいながら、聴覚を研ぎ澄ましていたであろう原の横に戻った。
「コイツ、俺が何もらったか気になってんだろうなあって思ってんだろ」
「思ってないっす」
「気になってるよ、何もらったんだよ」
「金です」
「いくらだよ」
「おそらく1本かと」
「何だよ10万かよ。たいしたことねえな」
「いえ、100です」
「100万!?」
目を丸くした原がこちらを見ていた。
この稼業をやっていればそのうち出合う金額だろうと思うのだが、間抜けの原からすれば拝むことのない金額であったのだろう。両手をズボンのポケットに突っ込んだまま驚きで両肩が上がり、膝が少し曲がったがに股の状態で、瞬間冷凍されたように固まってしまっていた。直視出来ないほど滑稽なポーズで固まっていたため、原がいるのとは反対方向の空を見てやり過ごした。しばらくすると落ち着きを取り戻した原が、今まで通りの兄貴風を吹かせた言い方で話しかけてきた。
「金額聞いて完全に引いたなって思ってんだろ」
「思ってないっす」
「お前がしめた風俗ビルの売り上げ考えたらボーナスとしては安すぎるなと思ってちょっと引いたんだよ。がっかりだ」
がっかりとはよく言ったものだ。先に1本に対して10万と判断した男の強がりのセリフにしては無理があると思いつつも、何処か「本心」「本音」とも聞こえる気持ちの入った言い方だったが、後ろから呼ぶ牛嶋の声に、また期待で胸が膨らんでしまっていた。
「おい」
「……」
「おい」
「……」
「おい」
原が正面を見たままピクリとも動かない。「牛嶋の原」条件反射は何処へいってしまったのか。聞こえていないわけではないはずなのに。
「原!」
即座に返事をすると玄関へと向かったが、すぐにこちらへ向き直った。
「二度と呼ばれ間違いしたくないから名前呼ばれるまで反応しなくなってんじゃねえかって思ってんだろ」
「思ってないっす」
不意打ちのようなタイミングに危なく吹き出すところだったが、何とかこらえて玄関での会話に耳を傾ける。
「いつもの中華屋で出前頼め」
「へい」
「俺らは回鍋肉定食2つに青椒肉絲定食1つ。それにラーメンと餃子のセットが3つだ。お前と英次も好きなもん頼め」
「分かりました、ありがとうございます」
外に出てきた原が携帯を取りだし電話をかけだした。なじみの店なのか、中華屋の番号を携帯に登録してるなんて原にしては意外だった。通話ボタンを押して数秒してから話しだした。
「出前頼みてえんだけど。エビチリをケチャップ多めで。ああ、頼むぞ」
いよいよ頭がおかしくなったのか、玄関の中で数十秒前に牛嶋から言われたのとは全く違う注文をして電話を切ってしまった。
しかも、今まで通り正面を見たまま立っている。
このままではちょっと酸味の利いたであろうエビチリが1皿運ばれてきて牛嶋にどやされるだけだ。いや、今日の原に対しての牛嶋の怒りなら小指を失うぐらいの話になってもおかしくないかもしれない。なのにこの男は平然と立っている。俺にもとばっちりが来るかもしれないと思い、原に注文のやり直しを促そうと思った時に原が口を開いた。
「回鍋肉定食2つと青椒肉絲定食1つ、ラーメンと餃子のセット3つ頼んでねえじゃねえか何やってんだコイツ、ケチャップ多めのエビチリなんて関係ねえだろ、このままじゃやべえぞお前、牛嶋に何されるか分かんねえぞ、何なら俺にまでとばっちり来るんじゃねえのかよ、勘弁しろよって思ってんだろ」
「思ってないっす」と答えようとしたとき、見晴らしのいいこの高台の別荘へと続いている道をこちらに向かって動くものに目が留まった。それは配達用バイクに岡持ちを積み、ヘルメットを被りコック服を着た男だった。先程頼んだ中華屋の配達ならあまりにも早すぎる。原が電話をかけてから、ケチャップ多めのエビチリを調理したにしてはあまりにも速いスピードだ。
「上納金」
バイクに気をとられていると、原はぽつりと、確かにそう言った。
「え?」
「上納金だよ。俺が本当に銀行のATMから振り込んだと思うか? 自分の足でも届けず、銀行からも振り込まず、未だに俺が持っているとしたらどうする?」
原が何を俺に説明しているのか分からなかった。内容もそうだが、話し方も今までの間抜けのそれとは違い、低く冷静に抑えたトーンに加え、肝に深く落ち込んでいく重みのある話し方だった。
道のうねりに見え隠れはするものの、配達用バイクは確実にこちらに近づいてきている。
「英次、この別荘の権利書と上納金合わせて幾らかお前に計算出来るか?」
「い、いいえ」
「軽く2億は超えている」
何と返していいのか分からなかった。するとそれを分かっていたかのように落ち着いて原が続ける。
「この組をどう思う? 実力社会のこの極道稼業で誰が作ったか知らんが年功序列が息づいて、下が上がれる訳もなく、甘い蜜を吸うのは上に居座る能無しだけ。違うか?」
「え、あっ、はい」
「慰安会で完全に気の抜けたアイツらに取って代わって2億の手土産持って本家に参上したら周りはどういう反応するんだろうな?」
別荘の門が開き、目の前に配達用バイクが止まり、コックというには強靭すぎる肉体が服の上からでも分かる男が原に声をかけた。
「原さん、糞馬鹿野郎お疲れ様でした」
「おう」
「コイツは誰ですか?」
コックが俺を見た。
「前に話した野心を持った可愛い弟分だ」
「ああ、コイツが。おい、何をびっくりした顔してるんだ? まだ状況が飲み込めないのか? 原さんが演じてた馬鹿より馬鹿なのか?」
何処から取り出したのかコックが青竜刀を持っている。
「ははは! 俺の馬鹿より馬鹿はいないだろう」
「そりゃそうだ!」
原が配達用バイクの岡持ちから自動小銃2丁を取り出し、1丁を俺に差し出すと、鼓膜に深く響く低い声で俺に言った。
「英次、お前だって天下取りたいって思ってんだろ?」
そう言って俺の横を通り過ぎながら原は怒声を上げて玄関へと入っていった。コックもあとに続く。
「思ってます」
玄関へと駆け出す振り返り様、俺はそう呟いた。
『遺産ゲーム』
【著者】
藤原一裕【発売日】
2017年9月15日【定価】
1,350円+税【発行】
KADOKAWA
※画像の一部を『Twitter』から引用しました。
―― 会いたい人に会いに行こう、見たいものを見に行こう『ガジェット通信(GetNews)』