ウォルマートは同社が開いた200の「ウォルマートアカデミー」において数々のプログラムを実施し従業員教育をおこなっている。スタッフたちに快適でコスト効率の良いマナーを身に付けさせることが目的だ。
そして同アカデミーが現在注目しているのが、VRシミュレーターを使用したトレーニングだ。
VRを使った従業員教育
決戦の日「ブラックフライデー」をシミュレート
以前からウォルマートはVRを使用した従業員教育の計画を公表していた。
そして現在ウォルマートアカデミーでは、Oculus Riftヘッドセットを用いたカリキュラムが試験的に実施されている。
カリキュラムは没入型パフォーマンストレーニングのプラットフォームを手掛けるStrivrが開発したものだ。StrivrのCEOであるBelch氏によれば、カリキュラムの中核にあるのは「現実世界で追体験するにはいろいろと困難が伴うような実際に起きた出来事を従業員に体験させる」という発想だ。つまりたとえば従業員に「ブラックフライデー」当日のシミュレーションを与えて訓練させることも出来る。
「ブラックフライデー」とは11月第4金曜日に開催される、安売りセールのこと。つまり小売業者にとっては正念場で、決戦の日のことだ。
この日に向けた準備がどれほど大切な意味を持つか、容易に想像がつくだろう。
VR導入のメリット
従業員教育へのVR導入に伴うメリットとはなんだろうか?
BelchはVergeに対して語ったところによると、VR教育においてはコンピュータービジョンを使用することで、従業員がどこを見ているのか、文字通り正確に把握することが出来るのだという。
つまり従業員が正しい方向を見ていなかったり、ボタンを押さなかったりすると、すぐにそれが分かるのだ。即座に適切な指導をとって従業員に修正させることができるわけだ。
メリットは他にもある。
たとえば従業員が周りを見渡しているときに「うっかりした見落とし」を発見すると、それが店全体に及ぼす影響について、複数選択式の質問の中から回答するような仕組みが備わっている。
言うまでもなく、こうした仕掛けは従業員に問題的な状況を具体的にイメージさせやすい。
実際のトレーニングの流れは次の通りだ。
VRセットにはOculus Riftが用いられ、従業員は一度に5分から20分のレッスンを受ける。もちろん全員が一斉にVR体験をさせるわけではない。しかし従業員がRiftの順番待ちをしている間も彼らは手持無沙汰になることもない。VR体験のライブ映像を別のスクリーンで閲覧出来るからだ。だからインストラクターは順番待ちをしている彼らにも指導をおこなう。効率性は十分に担保されていることが伺えるだろう。
VR教育にはポジティブな効果があることも証明されている。
試験プログラムに選出されたアカデミーは、VRを使用した従業員はバーチャルシミュレーションを体験しなかった従業員に比べて、より良いトレーニング情報を獲得できるという結果を得た。
良好な試験結果を背景にしてウォルマートは、2017年度末までに200のアカデミー全てでVRシミュレーターを導入することにしたという。
小売業におけるVRの可能性
Belch氏はアカデミーで従業員教育にVRを導入することを、彼自身が描く更に大きな構想の一歩として捉えている。数年以内にはVR教育をウォルマート全店へと展開することを目指しているのだ。
例えばVRを導入された店ではこういうことが起きる。従業員は、壁にいくつかのモバイルヘッドセットが掛けられている裏手の部屋へ行く。そこで従業員は毎月、VRモジュールを通じて教育されることになるのだ。
世界最大手の小売企業がVRシミュレーションの活用に大きな一歩を踏み出したことで、他企業がどのような反応を示すのか非常に興味深いところだ。
既にいくつかの大手小売企業は既にVRを活用し始めている。例えばARとVRを活用した「リアル店舗」の出店をAmazonが計画しているのではないか、というウワサは既に知られた通り。
商品の省スペース化と、消費者に多くの商品情報を伝達し、また複数のオプションを提示することが可能となるから、AR・VRと小売業との相性は悪くないはずだ。
問題はVR機器が全般的に高価格であることか。こうした取り組みは、大企業でないと取り組むことが困難な状況が当面は続くかもしれない。
参照URL:
HP
VR SCOUT
https://vrscout.com/news/walmart-black-friday-vr-simulator-train-staff/
engadget
https://www.engadget.com/2017/06/06/hp-omen-gaming-pc-acclerator/
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