「取引先はあくまで外注先」と考える人は少なくありません。しかし、リーダーはこうした考えではなく、取引先さえも仲間にすべきです。ゴールに向かって一緒に突き進む同士と考えるべきです。では、取引先を仲間にするためには何が必要か。リーダーは取引先に対し、どう呼びかけるべきか。取引先を巻き込むために必要な心構えについて考えます。【週刊SUZUKI #115】
リーダーが一人でいくら努力しても、プロジェクトを成功に導くことはできません。さらに言えば、プロジェクトチームのメンバーが一丸になって取り組むだけでも不十分です。社内外を問わず、プロジェクトに関わるすべての人と取り組むことが成功を大きく手繰り寄せるのです。
例えば、社外の取引先も仲間として一緒にゴールを目指すようになるべきです。取引先というと、特定の業務を補完したり、専門的な業務を委託したりするケースが少なくありません。多くの取引先はプロジェクトが成功するかどうかより、依頼された業務を無事に完遂できるかどうかに主眼を置いています。しかし、取引先を仲間に迎え入れるには、こうした局所的な関係を解消すべきです。取引先に依頼した業務がプロジェクトにどんな影響を及ぼすのか、その業務が最終的に顧客や社会にどんな効果を与えるのかなど、プロジェクトの目的やゴールを共有して業務の必要性を感じ取ってもらいます。取引先の「自分たちの取り組みによって未来が変わる」という気持ちを芽生えさせ、「一緒に成功させなければ」「ともに頑張らなければ」という感情を起こさせるようにします。業務の委託や受託といった関係を超え、プロジェクトを成功させる同士へシフトさせることが大切です。
とはいえ、取引先の中には「うちには関係ない」「言われたことだけこなせば十分」と考えるケースもあるでしょう。こうした考え方を変えて仲間になってもらうには、取引先の成長に寄与したり、取引先のビジョン達成に貢献したりできる恩恵を受けられることを説明すべきです。リーダーは取引先に対し、「このプロジェクトの成功体験が、御社に新たな仕事を呼び込むはずだ」「顧客の要望に的確に応えた御社の姿勢が業界で評価されるはずだ」など、取引先の姿勢がどんな効果をもたらすのかを具体的に示します。取引先が目の前の業務だけをこなすのではなく、その先の効果や影響まで明確に描けるようにします。これにより、取引先の「うちには関係ない」といった考えを払しょくできるようになるのです。
専門性の高い事業を強みにする取引先を仲間に巻き込めば、今後はより大きく難しいプロジェクトに立ち向かえるようになります。社内のメンバーだけでは太刀打ちできなかったプロジェクトにも前向きに挑めるようになるのです。
【リーダーの心得 その23】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。