リーダーは目の前のことだけに注力するだけでは不十分です。周囲の状況を常に把握する視野を持つことが大切です。状況に応じて柔軟に行動することが成果を呼び込むのです。そこでここでは、リーダーが備えるべき「道天地将法」の1つで、成功しやすい条件を揃えることを意味する「地」の意義を考えます。【週刊SUZUKI #120】
リーダーとして成功し続けるために必要なことの1つが、「道天地将法」の「地」です。「地」は、地形を意味します。つまり兵法でいえば、戦で勝つためには地の利を得るべきということを表しています。
プロジェクトを主導するリーダーにとって「地」とは、成功しやすい条件を揃えることを意味します。例えば、プロジェクトに精通するメンバーを集めるのもその1つです。モチベーションの低いメンバーを鼓舞して一丸体制を築くのも1つです。成功するために必要なことに取り組み、プロジェクトを確実に成功させられるようにすることが「地」という言葉に込められているのです。もし必要な取り組みを怠れば、地の利を得られずプロジェクトをゴールに導けなくなるわけです。
さらに、市場や競合を分析することも成功条件となります。新たな市場への参入を検討するなら、先行して参入するプレイヤーの動向や、市場に影響を与える社会的な動きも把握しなければなりません。競合がどんな強みを打ち出してシェアを広げているのか、一方でどんな弱みがあるのかを探ることもプロジェクトの成功確率を引き上げるためには必要です。チームの結束力を高めるだけにとどまらず、社外の競合の動きもつぶさに把握することがリーダーには求められるのです。
地の利を活かすなら、競合より先にアクションを起こすことも必要です。成功のための条件を揃えつつ、必要に応じて最適な行動を起こすようにします。地の利をどれだけ得ても、その状況を最大限活かさなければ意味はありません。地の利を得ることとアクションを起こすことをセットで考え、取り組めるようにすべきです。
いかなる状況でもプロジェクトを成功させられるポジションに導くか。「道天地将法」の「地」とは、成功させるポジションを作り出し、競合より有利な状況に持ち込むといった意味が含まれています。大切なのは、地の利を得られない状況だからといって、そのまま受け入れるべきではないということです。地の利がなければその状況を打破すべきです。改善を試みるべきです。優位なポジションに持ち込む取り組みが、成功を手繰り寄せるのです。
プロジェクトを主導するリーダーは成功を常にイメージし、そのために必要な環境を作り出し続けなければなりません。刻々と変化する情勢に応じたポジション取りをできるかどうかがリーダーには問われます。
【リーダーの心得 その28】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。