8月13日に福岡市民ホール中ホールで上演された音楽劇「平和の鐘」は、満席の観客席の中で多くの涙を誘う公演となりました。その当日の本番公演が、実写VRとして完全に再現され、9月上旬から誰でもどこからでも鑑賞できる形で提供されることになりました。実写VRは、高精細な実写映像と立体音響を組み合わせ、まるで会場の「最高の場所」で観ているかのような没入体験を可能にする技術であり、スマートフォンやPCの画面では得られない臨場感を実現します。

2025年版の「平和の鐘」は、2005年に福岡の公立小学校の教諭が修学旅行後に生徒たちと作り上げた音楽劇を原点に、公募で集まった福岡の小中学生が自ら学び感じたことを台本やセリフに反映させた作品で、約100名のボランティアスタッフとクラウドファンディングや寄付による支援で上演に至りました。終戦80年の節目に上演された本作は、地域の平和学習の一環としての意義も深く、観客や関係者から高い評価を受けています。
今回の実写VR化では、本番公演の「空間丸ごと」再現に加え、2月から始まった公募や稽古の様子を追ったメイキング映像も撮影されており、本編とは別に関係者や出演キャストの家族向けに特別なメイキング映像を実写VRで提供する予定です。これにより、舞台裏のプロセスや出演者の成長を臨場感を持って記録・共有することが可能になります。

実写VRによる提供は、地理的・身体的制約で劇場に来られない人々にも本番の感動を届ける手段になります。たとえば病床にある人が劇場の雰囲気を体験したり、遠方の学校が同時に平和学習の一環として同じ公演を視聴したりすることが想定されています。従来の360度低解像度映像とは異なり、技術の進化により瞬間移動のような没入体験が可能になっている点が今回の特徴です。
実写VRの活用は、単なるエンタテインメントの拡張にとどまらず、地域活性化や教育分野での新たな応用を示しています。今回のプロジェクトを通じて、地方発の取り組みが最先端技術を活用して文化資源を保存・発信するモデルケースとなる可能性が期待されています。また、制作はクラウドファンディングや寄付を通じた市民参加型の支援で成り立っており、地域コミュニティと連携した持続的な運営の在り方も示唆されています。
詳しくは「株式会社ごきげんコーポレーション」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松