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スポーツを通じて社会に貢献する人材を育成、日体大学長が描くこれからの大学教育の姿とは?


デジタルシフトウェーブは2024年6月5日、定例のDX経営セミナーを開催しました。今回のテーマは「日本の大学改革の明日を考える~社会で活躍する人材育成への転換~」。日本体育大学の石井隆憲学長をゲストに迎え、大学教育の課題と、未来に向けた改革の実態に迫りました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください

社会情勢が劇的に変わる中、人材育成を主な役割とする大学に求められることも変わりつつあります。知識を習得するための場にとどまらず、社会課題を解決する能力や発想、さらにはこれからの時代をけん引する実行力など、社会の変化に柔軟に追随する能力を育む場としての役割がより強く求められるようになっています。

こうした変化に対し、現在の大学はどんな取り組みを打ち出しているのか。どんな人材をどう育成しようとしているのか。これからの時代に向けて授業はどう変わりつつあるのか…。

今回のセミナーでは、人材教育を司る大学の現状や課題に触れるとともに、未来に向けた具体的な取り組みにも迫りました。ゲストに日本体育大学 学長の石井隆憲氏を迎え、同大学の改革に向けた取り組みや、学生の育成方針などについて紹介しました。

少子化が大学を直撃、大学の枠にとらわれない教育が人材を育成するカギに

セミナーでは石井隆憲氏が日本体育大学の取り組みを紹介するとともに、日本の高等教育が直面する問題や大学改革の必要性にも触れました。

石井氏は日本の大学が直面している現状について解説。特に新型コロナウイルス感染症が大学に与えた影響から切り出します。「コロナ禍により、大学は大きな影響を受け、出生者数の減少が顕著になった。2023年には出生者数が75万人にまで減少し、大学の進学率が60%程度にとどまるという厳しい状況だった」(石井氏)と振り返ります。このような状況は大学経営に大きな影響を及ぼし、特に小規模な地方大学や短期大学は深刻な影響を受けたと考察します。

さらに石井氏は、日本の大学の約半数が定員割れを起こしているというデータも紹介。日本私立学校振興・共済事業団が発表したデータを引用し、「私立大学の約320校が定員割れを起こしているのが現状だ。特に18歳人口の減少がこの問題の主な原因で、この傾向は今後も続くと予想される。大学の再編成や統合も進んでおり、地方大学や小規模大学の存続が難しくなっている」(石井氏)と指摘します。

写真:日本体育大学 学長 石井隆憲氏

一方、大学教育のDXの遅れについても言及します。「大学教育は依然として伝統的な方法に依存し、DXの進展が遅れている。具体的には、オンライン授業の普及や教育の電子化が進んでいない」(石井氏)と指摘。コロナ禍でオンライン授業が一時的に普及したものの、それが継続的なDXの推進には繋がっていない状況を危惧します。大学がDXを推進するには、「教員一人一人が変革の必要性を認識し、実行に移すことが重要だ」(石井氏)と強調しました。

では、日本体育大学ではどんな取り組みを打ち出しているのか。石井氏は日本体育大学の取り組みについて、「体育やスポーツを通じた教育を重視する。これを通じて学生の人格形成や社会性の向上を目指す。特にスポーツが持つ教育的価値を強調し、スポーツを通じた人材育成に注力する」(石井氏)と述べます。スポーツは単なる競技や運動にとどまらず、社会貢献や国際交流、経済発展にも寄与するものと強調しました。さらに、「オリンピックや国際大会を通じて日本のスポーツ文化を世界に発信し、観光資源として活用されている。地域の健康増進や復興支援にもスポーツが重要な役割を果たしている」(石井氏)と、スポーツが持つポテンシャルを強調します。

そのほかの取り組みにも触れます。日本体育大学では、能登半島で発生した地震の際に教員と学生が現地に赴いてボランティア活動を実施。このような活動を通じて、「日体大は地域社会との連携を強化し、学生の社会貢献意識を高めている。スポーツを通じた地域活性化や健康増進プログラムも実施し、地域住民との関係を深めている」と、大学外でさまざまな活動に取り組んでいることにも言及しました。

日本体育大学は今後、どんな方向を目指すのか。石井氏は、「生涯学習の拠点としての役割を果たすことを目指すとともに、幅広い職業人の育成を推進していく。特に体育やスポーツを通じた教育を通じ、学生が社会に貢献できるような能力を身につけることを目指していく。例えば、スポーツを通じて得られるリーダーシップやコミュニケーション能力は、社会において非常に重要なスキルとなるはずだ。これらのスキルを実践的な教育プログラムを通じて学生に提供していきたい」と、これからの新たな教育の姿を描きます。

写真:デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏。セミナー後半は石井氏と大学教育の在り方について二人で議論した

さらに日本体育大学では国際交流にも力を入れており、海外の大学やスポーツ団体との連携も強化しています。「学生は国際的な視野を広げ、多様な文化や価値観を理解できるようになる。国際交流プログラムや留学制度を通じて、学生は異文化体験を積み、グローバルな視点を養うことができるようになる」(石井氏)と、グローバル化の流れに沿った人材育成にも注力するといいます。

石井氏は大学教育の未来の展望について、「DXの推進や国際交流の拡大を通じて、日本の大学はさらに発展していく可能性がある。スポーツを通じた教育の価値を再認識し、これを基盤にした教育プログラムを通じて、学生の成長を支援することこそ重要だ。日体大はこれからもスポーツを通じた教育の先駆者として、社会に貢献する人材を育成し続ける」(石井氏)と強調しました。

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