鉄道ファンの楽しみとして「車両部品」のコレクションがあります。これらは鉄道事業者が販売する機会に入手するのですが、品物は実にバラエティ豊か。
中でも人気なものの1つが、特急や新幹線などで使われていた実物の座席。大きいこともあり、入手するにはそれなりの覚悟が必要ですが、これを2セット、そして壁面パネルも入手し、部屋の中に新幹線の車内を再現した方がいます。
鉄道事業者では時折、廃車解体された車両から取り外された部品や、車両の改修にともない不要になった部品などを愛好者向けに販売することがあります。小さなものでは車内に取り付けられた注意書きの板や吊り革、大物になると運転席の計器丸ごとなんていうものも。
数ある車両部品の中でも、大物かつ人気の高い品物が座席。大きいだけに保管場所を選ぶことと、販売されるタイミングが不定期なため、憧れの品でもあります。
この座席を2セット購入しただけでなく、窓の側パネルも入手して部屋の中に車内を再現してしまったのは、カメラマンのkobatonさん。秋田新幹線「こまち」で使われているE6系から出たことから、その名も「おうち新幹線」です。
以前から鉄道車両の座席が欲しかったというkobatonさん。JR東日本が運営するECサイト「JRE MALL」に秋田新幹線E6系普通車の座席と同時に、窓の側パネルも売られているのを発見し「これは車内が再現できそうだ」と思ったといいます。
1回目の購入をし、商品が届くまでの間にちょうど秋田出張があったとのこと。この機会に秋田新幹線E6普通車の車内を採寸し、座席と窓の隙間や壁からの設置位置、床からのパネル取り付け高などをメモしたそうです。
座席の背もたれにあるテーブルを使いたいという思いと、座席を1歳8か月になる娘さんが気に入ったため、E6系の座席再販に合わせ、もう1セット購入。これで背面テーブルだけでなく、回転させて前後向かい合わせにするといった「新幹線車内」っぽさを高めることができます。
2回目に購入した座席には「2021.11.1 Z22 14号車」と書かれたテープがついていました。どうやら、E6系のZ22編成(2014年1月運用開始)についていた座席のようです。14号車は7両編成(11号車~17号車)のうち、ちょうど真ん中に位置する普通車(E625-122)。
座席には個別の製造番号もついています。8桁のうち、どうやら最初の4桁は製造年を示しているようで、2つの座席の製造番号を照らし合わせ、kobatonさんは最初に買ったものはZ21編成(2013年12月運用開始)で使われていたのではないかと推測しています。
ホームセンターで購入した板と角材を組み合わせ、床部分と壁面の立ち上がり部分を作っていきます。床材にE6系車内と色味の似たクッションフロアを貼り、床面に開けた座席固定用の穴は実車のシートピッチと同じ980mmに設定。
座席を固定すると、俄然「新幹線」っぽくなってきます。背面ポケットに実際の列車と同じく、車内案内と車内誌「トランヴェール」が入っているのもポイント高いですね。
側パネルを仮置きした様子は、普通の和室に突然新幹線が飛び込んできたかのよう。実物の座席と内装用側パネルなので、非常に再現度が高くなっています。
この側パネル、床から18cm程度立ち上がった壁面に取り付けられているので、固定には苦労したとのこと。奥様に手伝ってもらいながら、なんとか取り付けを完了したそうです。
完成した「おうち新幹線」の車内。まるで撮影用のセットや、メーカーが内装を検討するための試作品みたいにも見えてきますね。しかし、これがあるのはあくまでも個人のお宅です。
座席背面のテーブルを展開して、食事だけでなくkobatonさんはお酒も楽しんでいる様子。宮城県の特急地酒「純米大吟醸 特急はつかり」と、JR東日本新潟支社のジョイフルトレイン「越乃shu*kura」特製のおちょこは、自宅での「飲み鉄」に最高の組み合わせですね。
筆者も鉄道部品や、航空会社の機内で使われていたグッズをいくつか持っていますが、座席を家に置けるという環境に羨ましさを覚えます。ご家族の理解あってのことですね。
普段は撮り鉄や資料収集、乗り鉄など幅広い「鉄活」をしているというkobatonさん。2021年12月に刊行された「探訪 貨車駅舎 かつて線路を走っていた建物たち」、2022年3月に刊行された「国鉄車両関係色見本帳+車両色図鑑」にも携わっているとのことです。
<記事化協力>
kobatonさん(@_kobakashi_)
(咲村珠樹)