私たちは本当は猫に「飼われて」いるのかも知れません。
「イエネコは捕食動物として、神業としか思えないパワーの持ち主だ。紫外線を見ることができ、超音波を聞くことができ、三次元の空間を把握する不可思議な理解力のおかげで音の高さを判断するなどの多彩な能力も備えている。」
と語ったのは、アビゲイル・タッカー。彼の著書では、ネコは人の脳からインターネット、生態系まで、まさに地球を征服していると書かれています。
確かに犬のように役に立ってくれるわけでも、鶏のように卵を産んでくれるわけでもない、この「小さな自宅警備員」は全世界のほとんどの人類(インド以外)から愛され大切にされています。
こんなに人の心をメロメロにするなんて、猫はどう考えても不思議ですよね。
猫が人間を飼いならすその手腕の秘密は、もしかしたら猫の出す「ゴロゴロ音」にあるのかも知れません。
■猫が喉をゴロゴロと鳴らす理由
満足げに目をつぶって、喉をゴロゴロと鳴らす愛猫。その姿を見る限り、「満足していて、幸せなんだな~。」と思ってしまいますよね。
猫はこの喉をゴロゴロと鳴らすことで脳内からエンドルフィン(脳内で働く神経物質で、鎮痛作用がある)が放出され、ヒーリング効果を得ていることがわかっています。
しかし2015年、アメリカジョージア大学のシャロン・クローウェル=デービズ博士は、猫は様々な気分のときにこのゴロゴロ音を出していることを突き止めました。
あなたの膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしている場合、それは
「どこにも行かないで」
という合図かも。猫は幸せな気分ではなく、病気や痛みを感じた時、飼い主に一緒にいてほしいとき、そして飼い主に何かをさせるときにもこのゴロゴロ音を出すことが分かったのです。
■戦略的なゴロゴロ音
猫は人を「ニャー」というひと声で飼い主を下僕にし、自在に操る油断がならない動物です。姿も性格も1万年も前から全く変わっていない猫が、唯一変化したのはこの鳴き声。
猫は人間と暮らす生活を選ぶときに、人間が赤ちゃんの泣き声に鋭く反応するのを見て、自らの声をこの赤ちゃんの泣き声に近い発音に変えた、という説もあるのです。
イギリスの心理学者、カレン・マコーナムは、さまざまなタイプのゴロゴロ音に対する飼い主さんの反応を調べたところ、
「甲高い叫び声かニャーという鳴き声がゴロゴロ音に混じっているか」どうかが重要だと突き止めました。
猫は食べ物を探す際にも高い音でゴロゴロ音を出していて、しばしば高い「ニャー」という鳴き声を含ませることで緊急性を感じさせるひびきを作り出して飼い主に反応させてもらう力を高めていることがわかったのです。
これは「要求のゴロゴロ音」と呼ばれるもので、猫と飼い主さんが1対1で暮らす家庭で特に使われているとか。
人の出入りが激しい家庭や、猫の多頭飼いをしている家庭の猫は、この「要求のゴロゴロ音」を使うことはずっと少なかったそうです。
■ゴロゴロ音はストレスや不安を教える
猫の出すゴロゴロ音は、ボリュームが簡単に変えられるって知っていましたか?
猫が飼い主さんの膝の上にいるとき、猫はほとんど聞こえない非常に小さな音でこのゴロゴロ音を出しているそうです。
飼い主さんが猫の喉などを撫でることでゴロゴロ音はどんどん大きな音になり、「幸せだニャ~」という気持ちを伝えます。
しかし猫が慣れない環境にいるときや、新しい猫が家にやってきた状態のときでこのようなゴロゴロ音を出すときは、よく注意して聞いてみてください。
その場合のゴロゴロ音は、いつもよりもリズムの早いゴロゴロ音のはずです。そう、猫はストレスや不安を感じているときも、このゴロゴロ音の音を調節して、飼い主さんに気持ちを訴えているのです。
■最後に
猫のこのゴロゴロ音。人間にはセラピー効果がある、宇宙飛行士の骨粗鬆症を予防するとも言われ、医療的な意味を持つという研究結果もありました。
このゴロゴロという音が骨の骨折を早期に治せると、実際にフランスの医療に取り入れられていると聞いたことがあります。
でももしかして、治療の効果があるのはゴロゴロ音ではなく、振動(バイブレーション)の方かも?
最近流行りの、乗ると体をブルブル振動させるマシーン。健康になる、痩せると評判になっていますが、これって猫のゴロゴロ音からヒントを得たのでは?猫ってやっぱり凄いですよね。