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新種のティラノサウルス「竜の王子」をモンゴルで発見!


ティラノサウルス・レックスの進化過程がまだ完全に解明されていない中、北海道大学とカルガリー大学のチームが「カンクウルウ・モンゴリエンシス」という新種のティラノサウルスを発見しました。この種はティラノサウルス・レックスの獰猛さを持たない中間的な特性を持ち、進化の「空白地帯」を埋める鍵となる可能性があります。研究では、ティラノサウルスの祖先がアジアで進化し、北米へ渡った後に巨大化し、再びアジアで新たに進化したと提唱されています。この発見により、ティラノサウルスの進化の全貌がさらに明らかになることが期待されています。

ティラノサウルス・レックスといえば、史上最も有名な恐竜の代表格です。

その巨大な肉体、鋭い牙、凄まじい咬合力。図鑑や映画でもおなじみのその姿は、まさに“恐竜界の王者”といった風格です。

そんな王者たるティラノサウルスにも当然ながら祖先がいたはずですが、意外にも、彼らがどのような進化のプロセスを辿ってきたのかは完全には解明されていません。

しかしそんな中、北海道大学とカナダ・カルガリー大学の研究チームが、そんな疑問に答えてくれる「新種のティラノサウルス」を発見しました。

名前は「カンクウルウ・モンゴリエンシス」、直訳すると「モンゴルの竜の王子」

この新たな恐竜が、ティラノサウルスの進化の謎を解く鍵になるかもしれないのです。

研究の詳細は2025年6月11日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次

  • ティラノサウルスはどう進化してきたのか?
  • 新種のティラノサウルス「竜の王子」

ティラノサウルスはどう進化してきたのか?

ティラノサウルス科の巨大な捕食者たちが活躍したのは、恐竜時代の最後にあたる白亜紀末のことです。

北アメリカではティラノサウルス・レックスが、アジアではタルボサウルス・バタールが、 それぞれ陸上生態系の頂点として君臨していました。

これらの巨大捕食者たちは「エウティラノサウルス類」と呼ばれ、体重は1トンを超え、分厚く頑丈な頭骨で、強烈な咬み力を持つなど、驚異的な進化を遂げた大型ティラノサウルス類のグループでした。

エウティラノサウルス類は、白亜紀最後の1500万年間(約8600万~6600万年前)に繁栄しましたが、では彼らはどこからやってきたのでしょうか。

そのルーツは、体重500キロ未満の通称「中間型ティラノサウルス類(mid-grade tyrannosauroids)」にあるとされます。

このグループは、ジュラ紀〜白亜紀前期にかけて存在した「初期型ティラノサウルス類」と、白亜紀後期の「エウティラノサウルス類」の間をつなぐ“進化の中継点”とされています。

しかしながら、中間型ティラノサウルス類は化石記録に乏しく、どのような進化プロセスを辿っていたのかがよくわかっておらず、長らく「進化の空白地帯」とされてきました。

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カンクウルウの見つかった骨の位置(白色)と人間とのサイズ比較/ Credit: 北海道大学 –大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~(2025)

そんな中、今回新たに注目されたのが、1970年代にモンゴルで発掘されたいくつかの骨格標本でした。

研究チームは博物館の倉庫で眠っていたこれらの化石を改めて詳しく分析。

すると驚くべきことに、既存のどの恐竜にも当てはまらない、まったく新しいタイプのティラノサウルス類が見つかったのです。

体の大きさは中型、形もユニークで、これまで見たことのない特徴をいくつも備えていました。

新種のティラノサウルス「竜の王子」

チームは、この新種に「カンクウルウ・モンゴリエンシス(Khankhuuluu mongoliensis)」との学名を与えました。

これはモンゴル語で「モンゴルの竜の王子」を意味します。

なぜ“王子”なのかというと、それはこの恐竜が「ティラノサウルス・レックスのような巨大な王に至る前の段階」にあるからです。

つまり、まだ小さい存在だけれど、確実に“王の血”を引いている―そんなイメージから名づけられたのです。

カンクウルウは全長4メートル、体重およそ750kg、腰の高さは2メートルほど。

走るのに適した長い脚と、軽くて細い頭蓋骨を持っていたと考えられています。

つまり、がっしりとしたティラノサウルス・レックスとは違って、より俊敏で機敏な動きをしていたと見られます。

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カンクウルウ(中央)とその他のティラノサウルス類(左、アリオラムス;上、ティラノサウルス;右、ゴルゴサウルス)/ Credit: 北海道大学 –大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~(2025)

ここで重要なのは、この恐竜が「中間的な特徴」をもっていたことです。

頭の骨や歯の形は幼いティラノサウルス・レックスに似ていますが、一方で骨の一部にはティラノサウルス類に特有の進化した形質も見られました。

まさに、ティラノサウルス類の進化の“橋渡し”となる恐竜だったのです。

さらに研究は、新種の発見のおかげで巨大ティラノサウルスの進化シナリオも明らかになってきました。

これまでティラノサウルスの進化は北米起源説が濃厚でしたが、研究者らは「ティラノサウルス類の祖先がまずアジアで誕生し、そこから北米に渡って巨大化。さらに一部がアジアに戻って新たなグループに分かれていった」という可能性の高いシナリオを提示しました。

その中でカンクウルウのグループは、巨大なティラノサウルスを生み出しただけでなく、アジアに戻った後に体重750キロほどの「アリオラムス類」という細身のグループも生み出したと考えられています。

「竜の王子」の発見により、今後さらにティラノサウルスの進化史の全貌が明らかになっていくと期待されています。

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参考文献

大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/06/post-1917.html

New Tyrannosaur Species Could Be a Missing Link to The Giants
https://www.sciencealert.com/new-tyrannosaur-species-could-be-a-missing-link-to-the-giants

元論文

A new Mongolian tyrannosauroid and the evolution of Eutyrannosauria
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08964-6

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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