starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

5億年前の「新種の三つ目モンスター」を発見!日本の怪獣から「モスラ」と命名


カナダのロイヤル・オンタリオ博物館のチームが、約5億600万年前の新種の節足動物「モスラ・フェントニ(Mosura fentoni)」を発見しました。この生物は三つの目、棘のある前脚、歯が並んだ円形の口、遊泳用のひれを持つ、小型のモンスターのような姿をしています。「モスラ」という名の由来は、体の左右に広がる姿が「海の蛾」のようであることです。この新種は、アノマロカリスに近縁で、ラディオドンタ類に属します。驚くべきは、その体節の多さや循環器系が詳しく保存されていたことで、昆虫のような開放血管系を持っていたとされています。また、体全体に広がるラキュナ構造により、酸素を効率的に取り込む仕組みがあったと推測され、多様な進化戦略を持っていたことが示唆されています。

太古の海にいた未知の古生物が、新たに見つかったようです。

カナダのロイヤル・オンタリオ博物館(ROM)らの研究チームは、同国にある有名なバージェス頁岩から、約5億600万年前の新種の節足動物の化石を発見したと報告。

三つの目を持つ小さな生物で、学名は日本の怪獣モスラにちなみ、「モスラ・フェントニ(Mosura fentoni)」と命名されています。

研究の詳細は2025年5月14日付で学術誌『Royal Society Open Science』に掲載されました。

目次

  • 新種のモンスターを発見
  • 体の内側までクッキリ保存されていた!

新種のモンスターを発見

新種の化石はカナダ・ブリティッシュコロンビア州にある「バージェス頁岩」から発掘されました。

この場所は約5億年前のカンブリア紀の海洋生物を驚異的な保存状態で伝えてくれる世界的な化石産地です。

研究チームは1990年から2022年にかけて、バージェス頁岩のある国立公園の採石場で数多くの化石標本を収集しました。

その中から新種として新たに発見されたのが、今回の「モスラ・フェントニ(Mosura fentoni)」です。

モスラ・フェントニは体長約15〜61ミリと小型ながら、見た目の特徴はまさにモンスター級でした。

三つの目、棘のある前脚、歯が並んだ円形の口、そして体の側面には遊泳用のひれが並んでいました。

モスラと命名されたのは、体の左右に広がった姿が「海の蛾」のように見えたからと研究者は話しています。

画像
モスラ・フェントニの復元イメージ/ Credit: Joseph Moysiuk and Jean-Bernard Caron., Royal Society Open Science(2025)

分類上は初期の節足動物グループであるラディオドンタ類に属します。

このグループには、かの有名なアノマロカリス(体長約90センチ)も含まれており、モスラ・フェントニはその小型の近縁種とされています。

特に注目されたのは、モスラ・フェントニの体の後端にある多節の構造です。

最大で26の体節を持ち、これは過去に発見されたラディオドンタ類の中で最多だという。

研究者いわく、これはカブトガニやダンゴムシなどの現生の節足動物と似ており、体の後方にも呼吸器官を備えていたことを示すといいます。

チームはこの特徴がなぜ進化したのかは不明としていますが、モスラ・フェントニが特定の生息環境や行動特性に適応し、より効率的な呼吸を必要とした可能性があると述べています。

体の内側までクッキリ保存されていた!

画像
化石の画像/ Credit: Joseph Moysiuk and Jean-Bernard Caron., Royal Society Open Science(2025)

またモスラ・フェントニの化石は、他の化石ではめったに見られない内部構造の詳細まで保存されていました。

チームは化石から神経系や消化管、循環器系の痕跡を発見しました。 特に循環器系では「ラキュナ(lacunae)」と呼ばれる大きな内部空洞が明瞭に確認されました。

モスラ・フェントニは私たちのような動脈や静脈を持たず、今日の昆虫と同じく、心臓がラキュナに血液を送り込む「開放血管系」を持っていたようです。

ヒトを含む脊椎動物の血管系は、心臓から送り出された血液が動脈を通って、静脈に入り、そこから心臓に送り戻されます。

このように血液が決められた動脈と静脈、そしてそれらをつなぐ毛細血管の中を通るシステムを「閉鎖血管系」と呼びます。

対して、昆虫は動脈と静脈をつなぐ毛細血管がありません。

動脈から出た血液はそのまま開放されて、 直接的に体内の組織間を流れて静脈へと戻っていきます。

これを「開放血管系」と呼びます。

モスラ・フェントニのラキュナは体内からひれの先端にまで広がり、泳ぎながら効率よく酸素を取り込める仕組みだったと考えられています。

画像
体の各構造の復元図/ Credit: Joseph Moysiuk and Jean-Bernard Caron., Royal Society Open Science(2025)

さらに驚くべきことに、モスラ・フェントニは他のラディオドンタ類と比べ、体のサイズに対して最も高いエラ面積を持っていました。

これは酸素の少ない環境や活発な遊泳生活への適応だった可能性があります。

このように、モスラ・フェントニは小さいながらも、精巧かつ驚異的な環境への適応戦略を持っていたようです。

この発見は、節足動物の進化の初期段階においてすでに高度な多様化が始まっていたことを物語っています。

全ての画像を見る

参考文献

Manitoba Museum and ROM palaeontologists discover 506-million-year-old predator
https://www.eurekalert.org/news-releases/1083161

Ancient three-eyed ‘sea moth’ used its butt to breathe
https://www.popsci.com/environment/mothra-fossil/

元論文

Early evolvability in arthropod tagmosis exemplified by a new radiodont from the Burgess Shale
https://doi.org/10.1098/rsos.242122

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.