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数千人がアクセス不能!元開発者の置き土産「復讐のプログラム」が企業を窮地に追い込む


米国オハイオ州のEaton Corporationで、元エンジニアのデイビス・ルー氏が、自身の降格に対する不満から企業システムにキルスイッチを仕込みました。このプログラムは、ルー氏の退職と同時に発動し、会社のITインフラをクラッシュさせ、数千人の従業員の業務を止めました。事件発覚後、ルーは情報破壊の罪で有罪判決を受け、最長10年の禁固刑が見込まれています。この出来事は企業にとって内部からの攻撃へのセキュリティ対策強化の必要性を浮き彫りにしました。

企業にとっての最大の脅威は外部からの攻撃ではなく、内部の従業員による破壊行為かもしれません。

今回紹介する事件では、長年企業に貢献してきた一人のエンジニアが、自身の降格に不満を抱き、会社のシステムに“キルスイッチ”を仕込むという衝撃的な行動に出ました。

その結果、企業全体の業務が麻痺し、世界中の従業員がログイン不能となる前代未聞の混乱が発生。

この事件の詳細は、アメリカ合衆国司法省(U.S.Department of Justice)の2025年3月7日付のプレスリリースで発表されました。

目次

  • 降格が1人のエンジニアに恨みと狂気を植え付ける
  • 「キルスイッチ」の発動で企業が窮地に!「内部からの攻撃」への対策が課題

降格が1人のエンジニアに恨みと狂気を植え付ける

ある日突然、ある会社の世界中の従業員がシステムにアクセスできなくなりました。

この前代未聞のシステム障害は外部からのハッカー攻撃ではなく、社内のエンジニアによる報復行為でした。

なぜ、このような事件が生じたのでしょうか。

犯人は、アメリカ・オハイオ州のEaton Corporationで働いていたデイビス・ルー氏です。

彼は2007年11月から2019年10月まで、Eatonのオハイオ州ビーチウッド事業所でソフトウェア開発者として勤務していました。

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降格させられたソフトウェア開発者が、企業に恨みを抱く / Credit:Canva

Eatonは電力管理装置の分野で世界的な企業ですが、2018年の企業再編によりルー氏の役職が降格され、職務権限も大幅に制限されました。

この降格に納得がいかず、強い不満を抱いていたルー氏は、約1年をかけてシステム破壊用のコードを開発し、退職後に自動的に発動するキルスイッチを仕込みました。

このキルスイッチは、ルー氏のユーザーアカウントが無効化されると、会社のシステムがクラッシュするよう設計されていたのです。

そして2019年9月9日、ルーの退職と同時にキルスイッチが発動しました。

ルーが仕掛けたコードは、サーバーの処理能力を意図的に圧迫し、システムをクラッシュさせました。

世界中の数千人の従業員がシステムにログインできなくなり、業務が完全に停止する事態になりました。

「キルスイッチ」の発動で企業が窮地に!「内部からの攻撃」への対策が課題

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キルスイッチや複数のプログラムが企業を窮地に追い込んだ / Credit:Canva

ルー氏が残したプログラムは「IsDLEnabledinAD」と名付けられました。

これは、「Is Davis Lu enabled in Active Directory(デイビス・ルーはアクティブディレクトリで有効か?)」という言葉を略したものです。

このキルスイッチは、彼が会社を離れた瞬間に作動し、EatonのITインフラに大規模な影響を与えました。

さらにルーはキルスイッチだけでなく、「Hakai(日本語で破壊を意味する)」や「HunShui(中国語で昏睡を意味する)」といったプログラムを作成し、同僚のユーザープロファイルを削除したり、会社の暗号化データを消去したりしました。

事件後の調査では、ルー氏の使用した端末から、管理者権限の昇格やファイルの削除方法に関する検索履歴が見つかりました。

さらに、問題のプログラムは彼のユーザーIDを通じて実行されており、犯行の決定的な証拠となりました。

FBIの捜査官であるグレッグ・ネルセン氏は、「デイビス・ルーは自身の知識やスキルを悪用し、企業の事業運営を故意に妨害した」とコメントしています。

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復讐のプログラムを作成したルー氏には、最長10年の禁錮刑が科せられる見通し / Credit:Canva

またEaton側は、この事件による被害額が数十万ドルに上ると主張しています。

そして2025年3月7日、クリーブランドの連邦地方裁判所は、ルー氏に対し、保護されたコンピューターに故意に損傷を与えた罪で有罪判決を下しました。

ルーには最長10年の禁錮刑が科せられる見通しですが、量刑判決の期日は未定です。

この事件は、企業にとって内部犯行の危険性を浮き彫りにしました。

外部からのサイバー攻撃に対する防御策を講じることはもちろん、企業内部の従業員による脅威も無視できません。

企業がこうした内部の脅威を防ぐためには、システムへのアクセス権限を厳格に管理しなければいけません。

また、退職時のアカウント削除や監査を徹底し、社員のメンタルヘルスや職場環境を改善することも重要でしょう。

Eatonのような大企業でさえ、たった一人の開発者による仕掛けで大規模な業務停止に追い込まれました。

技術が進化し、企業のデジタル依存が高まる現代では、内部からの攻撃を防ぐためのセキュリティ対策の強化が不可欠なのです。

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参考文献

Texas Man Convicted of Sabotaging his Employer’s Computer Systems and Deleting Data
https://www.justice.gov/opa/pr/texas-man-convicted-sabotaging-his-employers-computer-systems-and-deleting-data

Former Eaton Corp. employee found guilty of sabotaging company’s computer systems
https://www.cleveland.com/court-justice/2025/03/former-eaton-corp-employee-found-guilty-of-sabotaging-companys-computer-systems.html

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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