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「あ、餌くれる人だ」魚も個々の人間を見分けられると判明!


独マックス・プランク研究所の研究により、野生の魚が個々のダイバーを見た目で識別し、特定のダイバーを選んで後をついていく能力があることが示されました。地中海での実験では、ダイバーが魚に餌を与えることで特定のダイバーを追うように訓練されました。トレーニングを通じて、魚はダイバーの装備の色や形を識別基準としていました。しかし、装備が同じだとどちらのダイバーにもついていくことが観察されました。この研究は、人間と魚との新たな関係構築の可能性を示唆しており、魚が細かな人間の特徴も識別できる可能性があることを示しています。

ダイビング中、野生の魚が自分の後をついてくる…

そんな不思議な体験をしたことはありませんか?

実はそれは単なる偶然ではなく、魚がちゃんとあなたを見分けている証拠かもしれないのです。

独マックス・プランク研究所(MPI)はこのほど、野生の魚に個々のダイバーを見た目から識別し、その人を選んで後をついていく能力があることを発見しました。

私たちは犬や猫と同じように、魚とも友情を築けるかもしれません。

研究の詳細は2025年2月19日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

目次

  • 野生の魚は人間を見分けられるのか?
  • 野生の魚がダイバーを見分けるように

野生の魚は人間を見分けられるのか?

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Credit: canva

一般的に、動物が人間を識別する能力については多くの研究が行われています。

例えば、犬やカラスなどの動物が特定の人間を見分けられることは広く知られています。

しかし魚にも同じような能力があるのでしょうか?

これまでの研究では、飼育下にあるテッポウウオがコンピューターで生成された人間の顔画像を見分けられることが示されています。

その一方で、これはあくまで実験で飼育された個体であり、野生環境にいる魚が人間を識別できるかどうかは不明でした。

そこで研究チームは今回、「野生の魚も人間の見た目を識別し、特定のダイバーを選ぶことができるのか?」を検証することにしたのです。

野生の魚がダイバーを見分けるように

実験は地中海にある研究施設の近く、水深8メートルの場所で実施されました。

この場所には以前から研究者たちがフィールドワークのために訪れており、野生の魚たちも人間の存在に慣れています。

実験ではまず、ダイバーが餌を与えることで魚を誘導し、魚が特定のダイバーを追うように訓練しました。

トレーニングでは、研究主任の一人であるカティンカ・ソラー(Katinka Soller)氏が視覚的に目立つ赤いベストを着用し、50メートルの距離を泳ぎながら魚に餌を与えました。

その後、徐々に視覚的に目立つ特徴を減らしていき、最終的には、普通のダイビング装備を着用して餌も隠し、魚が50メートルを追跡した場合のみ餌を与えるようにしました。

すると、特に2種類のタイが毎日積極的にトレーニングに参加するようになりました。

研究者たちは、識別しやすい20匹ほどの個体に名前をつけるほどでした。(背中に銀色のウロコが2枚光るバーニーや尾びれが少し欠けているアルフィーなど)

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タイの「バーニー」/ Credit: MPI –Wild fish study humans(2025)

次の段階では、同チームのメラン・トマセク(Maëlan Tomasek)氏も参加し、ソラー氏と異なるダイビング装備を着用して、別々の方向へ泳ぐ実験を行いました。

この場合、トマセク氏は魚たちに餌を与えません。

すると驚くことに、魚たちは餌をくれるソラー氏を正しく見分けて、後をついていくことがわかったのです。

そこでチームは、ダイビング装備の違いが魚の判断に影響しているかどうかを確認するため、ソラー氏とトマセク氏をまったく同じ装備にしてみました。

その結果、魚たちは2人を識別できなくなり、どちらにもバラバラについていくようになったのです。

これらの結果から、魚たちはダイバーの装備の色や形を手がかりに識別している可能性が高いことが示されました。

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左:異なる装備、右:同じ装備/ Credit: MPI –Wild fish study humans(2025)

水中では人間も同じように仲間を見分けるため、外見的特徴を手がかりにしています。

ソラー氏は「ダイビングマスクによって顔の形が歪んで見えるため、私たちは通常、ウェットスーツやフィン、その他の装備の違いを頼りにお互いを識別しているのです」といいます。

研究者たちは、時間をかければ魚たちもより微細な特徴(例えば、顔つきや体型、髪型、手の形など)を識別の手がかりにすることを学習できるかもしれないと考えています。

ソラー氏は「実際、魚たちが私たちの顔に近づき、体をじっくり観察する様子を何度も目にしました」と指摘。

その上で「私たちが魚を研究しているのではなく、魚が私たちをじっくり研究しているようでした」と話しています。

この研究は「魚と人間の関係」に対する新たな視点を提供します。

私たちは犬や猫などの哺乳類とは深い絆を築いてきましたが、進化的に遠く離れた魚とも何らかの関係を築ける可能性があるのです。

ダイビングを趣味にする方は同じスポットを頻繁に訪れていれば、そこに住む地元の魚たちがあなたを識別して、近寄ってくるようになるかもしれません。

また水族館に頻繁に通って、同じ水槽の魚たちに挨拶していれば、向こうもあなたを覚えてくれるようになるかもしれませんね。

こちらは研究の概要を説明した動画になります。(※ 試聴の際は音量にご注意ください)

全ての画像を見る

参考文献

Wild fish study humans
https://www.mpg.de/24151953/0211-ornr-wild-fish-can-recognize-individual-divers-987453-x

元論文

Wild fish use visual cues to recognize individual divers
https://doi.org/10.1098/rsbl.2024.0558

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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