This is Huangluo, a village in China where women only cut their hair once in their lives at 17 as a rite of passage.pic.twitter.com/j7O7yiMWRS
— Massimo (@Rainmaker1973) January 21, 2025
長い髪は、多くの国や文化で、女性らしさや美の象徴だと考えられています。
アニメ映画『塔の上のラプンツェル』では、「長い髪に魔法の力が宿っている」ことが物語の重要な要素となっていますが、実際人類の中には「髪には神秘的な力が宿っている」と考えて、あえて切らないようにしてきた人々がいます。
そして世界の中には、女性たちが人生で1度しか髪を切らない「世界一髪の長い村」が存在します。
その村とは、中国南部の山間部に位置する黄洛瑶（ホアン ルオ ヤオ：Huangluo）村であり、現在注目が集まっています。
本記事では、この村で暮らす紅ヤオ（瑶）族の人々とその文化を解説します。
目次
- 世界一髪の長い村「黄洛瑶村」
- 髪がつなぐ伝統と現代―文化の発展と科学の視点
世界一髪の長い村「黄洛瑶村」
This is Huangluo, a village in China where women only cut their hair once in their lives at 17 as a rite of passage.pic.twitter.com/j7O7yiMWRS
— Massimo (@Rainmaker1973) January 21, 2025
黄洛瑶村は、中国の桂林市竜勝各族自治県に位置する山間の小さな村です。
この地域は中国南部にあり、美しい棚田や山々に囲まれ、周辺は観光地としても知られています。
豊かな降雨量と肥沃な土地に恵まれており、農業が盛んです。
そしてこの黄洛瑶村に住む紅ヤオ族は、少数民族の一つで、独自の文化と伝統を持っています。
ヤオ族自体は中国湖南省から雲南省、東南アジア北部の山地に広く住む民族ですが、彼らにはサブグループがあり、黄洛瑶村の紅ヤオ族もその1つです。
紅ヤオ族において特に注目されているのが、女性たちの長髪文化です。
黄洛瑶村の女性たちには、18歳の成人式で一度だけ髪を切り、それ以降は髪を伸ばし続けるという習慣があるのです。
（幼いころに1度だけ髪を切るため、正確には人生で2度髪を切っています）
成人式で切られた髪は特別なウィッグとして保存され、祭りや儀式の際に使用されます。
村の女性たちは、髪の長さが1.4メートルを超えることで有名であり、中には2メートルを超える長髪の女性も存在するのだとか。
こうした珍しい伝統により、現在でも集落に住む200人以上の紅ヤオ族の女性が、非常に長い髪を持っています。
最近では、彼女たちの存在が次第に話題となり、黄洛瑶村は「世界一髪の長い村」として知られるようになりました。
ではなぜ、黄洛瑶村の女性たちは髪を伸ばすのでしょうか。
紅ヤオ族のパン・ヨンアン氏は、「古来より、長い髪は美しさの象徴だと信じられてきました」と話します。
またこの紅ヤオ族の伝統文化は、3000年の歴史をがあると言われており、髪が神聖なものとされ、切らずに伸ばすことで幸運をもたらすと信じられてきました。
現代でもその文化と習慣は引き継がれており、女性たちは長い髪を大切にする習慣を次の世代に引き継げることを誇りに感じています。
髪がつなぐ伝統と現代―文化の発展と科学の視点
長髪の文化は、現在では黄洛瑶村の観光業を支える重要な要素です。
現在、この「世界一髪の長い村」は国内外から注目を集めており、年間27万人以上の観光客が訪れる観光地となっているのです。
観光客は、壮大な棚田の風景を眺めたり、紅ヤオ族の伝統的な生活様式を体験することができます。
地元の市場では、手作りの工芸品や刺繍製品を購入することもできます。
また劇場では、民族衣装をまとった女性たちが歌や踊りを披露し、長髪の文化やその手入れ方法を紹介するデモンストレーションも行われます。
それでも、この観光業が発展したのはごく最近のことです。
なぜなら、黄洛瑶村では1980年代まで、女性の髪を見ることが許されるのはその家族だけだったからです。
普段、女性たちの髪は隠されており、もし男性がある女性の髪を見ることがあるなら、それは家族を巻き込んだ大事件へと発展しました。
その男性は、婿として、女性の家族と3年間一緒に過ごさなければいけなかったのです。
もちろん、現在ではこうした独特のルールは廃止され、多くの観光客が女性たちの長い髪を見て楽しむことができます。
加えて、ヘアケアの視点からも、この文化の価値が再評価されています。
中国の桂林理工大学（Guilin University of Technology）の2021年の研究によると、黄洛瑶村では、棚田で収穫できる米に加えて、特定の果物やハーブが育てられており、女性たちはヘアケアにこれらを用いています。
彼女たちは、米のとぎ汁にハーブやザボンの皮を入れた伝統的なシャンプーを使って髪を洗っているのです。
このシャンプーには、抗酸化物質やミネラル、ビタミンEが豊富に含まれており、人々は「紅ヤオ族の女性たちが高齢になっても白髪が少ない理由はここにある」と考えています。
現代のヘアケア市場において、自然由来の成分を活用した製品は人気が高くなっており、こうした背景からも紅ヤオ族の知恵に注目が集まっているのです。
このように、黄洛瑶村の長髪文化は、美と伝統、そして自然との共生を象徴するものです。
文化全体が、自然の恵みと世代を超えて価値あるものを受け継ぐことの大切さを教えているのかもしれません。
この場所に訪れる人は、その独自の文化に触れることで新たな視点を発見できるでしょう。
参考文献
Huangluo | Inside China’s village of real-life Rapunzels
https://greatbigstory.com/huangluo-inside-chinas-village-of-real-life-rapunzels/
元論文
Study on regional characteristics of plant landscape in yao village of longsheng county
https://doi.org/10.1051/e3sconf/202129303009
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部
