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ADHDの人は「カフェイン摂取」で集中しやすくなる!


現在では大人のADHDが世界的に増加しています。

「遅刻やうっかりミスが多い」「集中力が途切れがち」「私生活で物忘れが激しい」といった悩みがある方は、ADHD傾向があるかもしれません。

ADHDは軽度の症状を含めかなりの人が該当するため、もはや個性の1つと考えるべきという意見もありますが、社会生活において不利になることに変わりはありません。

では、少しでも症状を改善する簡単な方法はないのでしょうか? その手軽な方法として挙げられるのが、コーヒーや緑茶に豊富に含まれる「カフェイン」の摂取です。

実はいくつかの研究で、ADHD傾向を持つ人はカフェインの恩恵を受けやすいと報告されているのです。

しかし、なぜカフェインがADHDの症状に効くのでしょうか?

以下で詳しく見てみましょう。

目次

  • ADHD症状が起こる原因はどこにある?
  • カフェイン摂取でADHD症状は改善するが、注意すべき点も!

ADHD症状が起こる原因はどこにある?

これまでの研究で、ADHD症状が起こる根本原因は脳の神経学的な異常にあることが示されています。

例えば、ADHDを持つ人によく見られるのは、脳の「実行機能」に関わる領域の異常です。

実行機能とは、あるタスクを完遂するために必要な一連の脳機能であり、具体的には、注意の持続や時間の管理、感情のコントロール、ワーキングメモリ(作業記憶)の働きなどを司っています。

この領域に障害があると、「集中力の欠如」「感情調節の困難」といったADHDに特有の症状が起こりやすくなるのです。

実際に過去の研究では、実行機能に深くかかわる前頭前野や前頭葉の神経結合が少ない人ほど、集中力が不安定で、感情の自己管理が難しく、計画の立案と実行が困難になりやすいことが判明しています(Journal of Research in Personality, 2021)。

ADHD症状の原因は脳にある?
ADHD症状の原因は脳にある? / Credit: canva

それから、もう一つの重要な点は「ドーパミンの機能障害」です。

ドーパミンは集中力や意欲を高める働きをする脳内の神経伝達物質ですが、ADHD患者ではドーパミン分泌が非常に不安定になっていることが知られています。

例えば、自分からは進んでやりたくない作業や周囲から強制されるタスクに対してはドーパミンが分泌されないので、集中力が続かなかったり、ミスも多くなります。

しかし、自分の好きな趣味に没頭するときなどは逆にドーパミンが出過ぎてしまい、周りが声をかけても聞こえないほど、過度な集中力を発揮するのです。

「仕事ではすぐに気が散るけど、プラモデルを作っているときは寝食も忘れるほど没頭してしまう」という方もいるのではないでしょうか。

こうした脳の神経メカニズムの異常がADHD症状の発症に大きく関与しているとされています。

これを踏まえると、なぜカフェインがADHDに有効なのかも見えてきます。

カフェインは脳内のドーパミン分泌を促すので、ADHDに特有の「不安定な集中力」や「注意散漫」の抑制に役立つため、ADHDの人はコーヒーやエナジードリンクを飲んだ際の恩恵が特に大きく感じやすいのです。

カフェイン摂取でADHD症状は改善するが、注意すべき点も!

カフェインは脳の中枢神経を刺激して覚醒を促す化合物です。その仕組みは以下の通り。

体内に摂取されたカフェインはまず、「アデノシン」という化合物の受容体を阻害します。

アデノシンとは、神経活動を穏やかにする作用を持ち、眠気やリラックス作用を促す物質です。

カフェインはこのアデノシン受容体をブロックすることで、神経活動の抑制作用を低下させ、意識や気分が緩んでしまうのを防ぎます。

それと同時に、カフェインは興奮性の神経伝達物質であるドーパミンの分泌を促し、神経活動を活発化させます。

こうした働きにより、脳の覚醒作用、集中力の向上、気分の改善などの効果が引き起こされるのです。

ドーパミン分泌を促して、ADHD症状を改善する
ドーパミン分泌を促して、ADHD症状を改善する / Credit: canva

つまり、カフェインの摂取はADHDによく見られる「不安定な集中力」や「注意散漫」を改善するのに最適と考えられるのです。

ADHDに対するカフェイン摂取の有効性を実証した研究はまだ少ないですが、5〜15歳の104名を対象とした2023年の研究では、プラセボ群に比べてカフェインを摂取した群で、不注意や多動性の有意な減少が確認されました(brain sciences, 2023)。

同じ効果は大人でも見られると考えられており、カフェインを豊富に含むコーヒーや緑茶、エナジードリンクの定期的な摂取がADHD症状の改善に役立つと期待できます。

カフェインの摂りすぎには注意!

このように、カフェインは手軽にADHD症状を抑えるのに有効な手段となり得ますが、一方で注意すべき点もあります。

というのもカフェインは中枢神経を活発化させる刺激物であるため、摂りすぎると今度は逆に健康への悪影響が出始めてしまうのです。

例えば、中枢神経の過剰な活発化により、眩暈(めまい)や興奮、心拍数の増加、体の震え、血圧の上昇などが引き起こされます。

さらにカフェインの慢性的な過剰摂取が続くと、吐き気や疲労感、ストレスレベルの増加、不安症や不眠症の発症にもつながりかねません。

それに加えて、カフェインには中毒性があるため、頻繁な摂取を繰り返していると、カフェインの摂取がやめられなくなります。

そして人体はカフェインへの耐性を持つようになるので、以前と同じ摂取量では効き目がなくなり、カフェインを摂る量がどんどん増えてしまいます。

そうなるとカフェインによる健康へのデメリットの方が大きくなり、ADHD症状の改善効果は獲得しづらくなるのです。

カフェインに頼らない「セルフマネジメント」も有効

そこでやはり、ADHD症状とうまく付き合っていくには、カフェインだけに頼らない「セルフマネジメント」も大切になってくるでしょう。

例えば、集中力が長続きしにくいのであれば、「タスクを細かく分割する方法」が有効です。

一つの大きなタスクを一気に片付けようとすると、途中で集中力が切れてしまいますが、大きなタスクをいくつかの小さなタスクに分割すれば、作業へのハードルも低くなり、集中力も高いままコントロールできます。

また作業中に注意散漫になりやすいなら、周りから「気が散るものをなくす」ことも有効です。

ADHD傾向にある人はスマホやゲーム、漫画などに気を惹かれやすいので、作業に入る前にスマホをミュートにしたり、ゲームや漫画を視界に入らない場所に片付けるといいでしょう。

セルフマネジメントも有効
セルフマネジメントも有効 / Credit: canva

それから、作業への気分や意欲を高めたいなら「ご褒美の設定」も効果的です。

例えば、あるタスクを片付けたら「10分間ゲームしてよし」とか「デザートを食べてよし」などと自分にご褒美をあげるのです。

タスクの先にご褒美が待っているとわかっていると、作業へのモチベーションも上がり、集中力も高いまま維持できます。

こうした方法にはカフェインのような過剰摂取による副作用がありません。

ADHD症状のせいで仕事や私生活に支障が出ているという方は、適度なカフェイン摂取にセルフマネジメントを組み合わせてみるといいかもしれません。

なぜADHDの症例数が世界的に急増しているのか?

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参考文献

How Does Caffeine Affect People With ADHD?
https://www.verywellmind.com/how-does-caffeine-affect-people-with-adhd-5217867

元論文

Effects of Caffeine on Main Symptoms in Children with ADHD: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials
https://doi.org/10.3390/brainsci13091304

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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