犬の数え方って「頭」?それとも「匹」?
Gelpi/shutterstock.com
「1頭の牛」「1羽の鳥」「1匹のカエル」など、生き物によって数え方が違うのが日本語の面白いところですね。ウサギにいたっては「1羽」という数え方があるんですよ。長い耳が鳥のようだから間違えちゃったのでしょうか?
さて犬の場合は「1匹」と数えることが多いかもしれませんが、中には「1頭」と数える場合もあります。どちらが正しいのでしょうか?それぞれに何か違いやルールのようなものがあるのでしょうか?今回は犬の数え方についてまとめてみますね。
犬の数え方だけでなく、他の動物の数え方も例としてまとめますので参考にしてください。数え方といえば、犬の年齢の数え方も気になりますよね。「愛犬は今年で5歳になったけれど、人間でいったら何歳くらいなんだろう?」などという疑問にも答えちゃいますね!
犬の正しい数え方とは?
Eric Isselee/shutterstock.com
「1匹の犬」と「1頭の犬」だとどちらのほうがしっくりきますか?人によって答えは違うかもしれませんが、実はどちらも間違っていません。そのため犬に関するいろいろな資料を調べていくと、「匹」が使われている場合と「頭」が使われている場合があるんです。
では、どのように使い分ければいいのでしょうか?「匹」と「頭」には原則的に大きさによる使い分け方があるようです。つまり、小さな犬は「匹」で大きな犬は「頭」というわけです。この大きさはどのように線引きをすればいいのでしょうか?意見は様々ですが、数え方の辞典では「人間が抱きかかえられる程度の大きさ」が基準になります。
小型犬や中型犬は人間が抱きかかえることができますよね。なので数えるときは「匹」を使います。大型犬や超大型犬はさすがに人間が抱きかかえるのには無理があります。その場合は「頭」を使います。何となくイメージできたでしょうか?
犬種でいうと、チワワやヨークシャーテリアは「匹」で数えるということになりますね。大型犬だとラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーが人気ですが、これらの種は「頭」で数えるということになります。人気大型犬のランキングを見てみるとその中にダルメシアンもいますが、ここで疑問が生じます。
ダルメシアンといえば有名なディズニー映画の「101匹わんちゃん」ですが、大型犬なのに「匹」が使われています。ダルメシアンは大型犬なので厳密にいえば「101頭わんちゃん」になるはずですよね?ポンゴとパーディタ、そして99匹の子犬が登場しますが、抱きかかえられる大きさの子犬が大多数だからまとめて「101匹」となったのでしょうか?
大きさで「匹」と「頭」を使い分けるのはあくまで原則であって、例外もあります。例えば警察犬、盲導犬、救助犬、麻薬捜査犬などはサイズに関係なく数えるときには「頭」が使われます。人間によって訓練された犬の場合は「頭」を使うということがわかりますね。
警察犬といえばジャーマンシェパードやゴールデンレトリバーのような大型犬が主流なので「頭」を使うことはしっくりきますね。でも、小型警察犬というのもいるんですよ。例えばミニチュアシュナウザーは理解力が高く訓練しやすいため、またチワワは小さくても勇敢さと大胆さを備えていることから警察犬として訓練されることがあります。
他にも、猟犬だった柴犬は忠誠心が高くしつけやすいため、ジャックラッセルテリアは忠実でしつけやすく粘り強さや闘争心も持っていることから警察犬に向いているとされています。そしてテレビでも話題になったトイプードルの「アンズ」ちゃんも小型警察犬として活躍しています。これらの小型犬も、警察犬として訓練されれば「頭」で数えられるようになります。
ちなみに、ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種別犬籍登録数では2018年の時点で132犬種292,906頭が登録されていますが、全犬種が「頭」で数えられていて大きさによる数え方の区別はされていません。原則として「匹」と「頭」の使い分け方はありますが、それほど気にする必要はないのかもしれませんね。
なかには犬のことを「1わん」、猫のことを「1にゃん」なんて数えているユニークな飼い主さんもいますよ。面白いですね。
「匹」の由来
そもそも動物を数えるのに「匹」が使われるようになったのはなぜでしょうか?そのルーツには「馬」が関係しているんです。昔から人間の生活に密接に関わりを持ってきた馬は、移動手段や農業などで大活躍してきた動物です。馬のお尻はちょうど人間の目の高さにありますが、馬を数えるときにお尻が真っ先に目に入ることになりますよね。
馬のお尻は2つに割れていますが、そこから「2つのものが対になっている」という意味の「匹」が使われるようになったと言われています。ということは、当時は大きな動物である馬も「匹」で数えられていたということになります。もちろん犬を含めた多くの動物が「匹」を使って数えられていたんです。
「頭」の由来
「頭」を使った数え方がされるようになったのは明治時代からだと言われています。明治末期に日本人は外国人と交流するようになりましたが、その時に牛を数えるのに「head」が使われていたのでその影響を受けたようです。外国では牛のお尻ではなく頭を数えていたということですね。
「head」を日本語に訳すと「頭」になるので、牛を数えるときは「頭」を使うようになったわけですが、その際に牛と同じ大きな動物も「頭」で数えるようになりました。今までは「匹」使っていましたが、明治末期に大きな動物には「頭」が使われるようになったんですね。
ほかにもあった「一犬」という数え方
ユニークな犬の飼い主さんが「1わん」と数えることがあると述べましたが、これに通じているのでしょうか、「一犬」という数え方があることもわかりました。犬に関連する故事成語に「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」というのがあります。なるほど、ここでは1匹の犬のことを「一犬」としています。
ちなみにこれは、一人がでたらめやいいかげんなことを言うと、みんながそれを真実なこととして広めてしまうことをたとえています。1匹の犬が吠え始めると他の犬までが一斉に吠える様子を見て故事成語となったのでしょうか。
その他の動物の数え方
基本的に動物全般は「匹」を使って数えることができますが、前述の通り大型の動物は「頭」を使って数えます。ゴリラなど人間の知能に近い動物も「頭」で数えます。鳥は「羽」で数えますが、小鳥を「匹」で数えることもあります。また「3匹の子豚」のように、子豚の時は「匹」を使いますが、親豚になると「頭」が使われることもあります。
魚は「匹」を使って数えますが、「尾」を使うこともあります。イカやタコも「匹」で数えますが、スーパーマーケットで売られているものは「杯」が使われます。なんとなく使っている数え方ですが、いろいろあって面白いですね。
ちなみに先ほど例に挙げたウサギですが、「羽」が使われることもあります。これにはいろいろな説がありますが、獣肉を食べることを禁じられていた僧侶が、ウサギを鳥類として食べるための言い訳として「羽」を使うようになったとか、ウサギの長い耳が羽のようだから「羽」が使われるようになったとか言われています。それでも最近はウサギも「匹」で数えるようになってきました。