2017年度から開始したNEDO事業では,鹿児島県鹿児島市の既存施設とタイ王国サラブリ県に新設したパイロット屋外培養施設を使い,大規模培養からSAF製造までの一貫製造技術の確立に取り組んだ。また,バイオジェット燃料の商用飛行に必要な国際規格「ASTM D7566 Annex7」を取得するとともに,製造したSAFがこの規格に適合することを確認した。
今回,これらの成果を踏まえ,完成したSAFを東京国際空港(羽田空港)出発の定期便に供給した。なお,「ASTM D7566 Annex7」および「ASTM D1655」の規格に基づく燃料を搭載した航空機の飛行は今回が世界初となる。
(1)
日付:2021年6月17日
便名:日本航空515便
区間:東京国際空港(羽田)発 新千歳空港行き
機材:エアバスA350-900
微細藻類由来SAFと木質バイオマス由来SAFを同時搭載
(2)
日付:2021年6月17日
便名:全日本空輸031便
区間:東京国際空港(羽田)発 大阪国際空港(伊丹)行き
機材;ボーイング787-8ASTM D7566
Annex7規格に準拠する燃料を搭載した初の飛行
IHIは2050年カーボンニュートラル実現に向けて,バイオジェット燃料の燃料製造・供給に向けたサプライチェーンを構築する検討を進めていく。さらに,航空分野におけるCO₂等温室効果ガス排出量のさらなる削減にむけた技術開発を促進していく。
※1 SAF
Sustainable Aviation Fuelの略で,持続可能な代替航空燃料のこと。
※2 NEDO事業
事業名:バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験/高速増殖型ボツリオコッカスを使った純バイオジェット燃料生産一貫プロセスの開発
事業者:IHI(事業期間 2017年度~2021年度)
神戸大学 (事業期間 2017年度~2018年度)
※3 ASTM D7566 Annex7
ASTM International(旧称American Society for Testing and Materials: 米国試験材料協会)が定める航空用代替ジェット燃料に関する規格。Annex7は,微細藻類ボツリオコッカス・ブラウニー (Botryococcus braunii) から抽出した粗油(炭化水素を主成分とする)を水素化処理で合成した液体炭化水素燃料を規定。IHIが独自にASTMに規格申請し,2020年5月に承認された。
※4ASTM D1655
ASTM Internationalが定める既存の航空用ジェット燃料に関する規格。
※5 高速増殖型ボツリオコッカスHGBb (Hyper-Growth Botryococcus braunii)
培養速度を向上するべく改良された油分の多い微細藻類。株式会社GGT(本社:大阪府茨木市,代表取締役:榎本平 氏)が保有する株。