プリウスは初代から一貫して高膨張比サイクルを受け継ぐが、3代目では排気量は1.5ℓから1.8ℓに拡大。 「より一層の低燃費化」が狙いだが、それはカタログを飾るモード燃費だけでなく、実用燃費をも含んでいる。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)

なぜ、排気量を大きくしたのか。開発者の回答は、「高速実用燃費を良くするため」である。高速道路を一定のスピードで巡航する場合、ハイブリッドシステムを搭載するメリットが生かせない。EV走行には向かない速度域だし、回生ブレーキを効かせてエネルギーを回収する機会もない。単純に、エンジンの効率×伝達効率で決まってしまう。




では、どうやってエンジンの効率を上げるのか。開発サイドが導き出した回答は、300ccの排気量アップだった。排気量を引き上げることによって必然的に出力は向上するため、高速クルージング(120km/hを基準とした)ではエンジン回転数を20%低く抑えることができる。

2代目プリウス(青のエリア)と3代目(緑)の燃料消費率を比較したグラフ。吸気バルブタイミングを遅角させるのに加え、クールドEGRの採用によって実圧縮比が向上。より広範囲でエンジン効率が上がり、市街地燃費を引き上げた。

気筒数を変えずに排気量を引き上げると、シリンダーあたりのSV比(表面積/体積比率)が低くなり、外に奪われる熱が小さくなって冷却損失が少なくなる。コンベンショナルなクルマの場合、排気量を拡大すると燃費が悪くなるというイメージと結びつくが、ハイブリッドとして使う場合はそうはならない、と開発に携わったエンジニアは説明する。




「エンジンの排気量を上げると効率が悪くなるのは、軽負荷での効率が悪くなるからです。それは、スロットルで絞っているから。ところが、プリウスの場合、そこはEV走行をしていますから、使わない領域。だから、排気量を拡大しても燃費は悪くなりません」




プリウスの車格を考えた場合、排気量のアップ分は300ccが妥当との結論になった。

2ZR-FXE型エンジンを車両右前方から眺めたところ。インテークマニフォールドは樹脂製。ポート長の最適化による性能向上と、サージタンクの小型化によるエンジン再起動時の吹き上がり(必要以上に回転数が上がる)防止を狙った。EGRチャンバーはインテークマニフォールド内に内蔵し、各気筒への分配均一化を図っている。

電動ウォーターポンプの採用によって補機ベルトレスになったのも大きな変更点。




「すべて電動化し、Vベルトを廃しました。今回、電動ウォーターポンプにすることで最適なヒートマネージメントができるようになったメリットに加え、ベルトレスになったことで、“泣き”からも解放されることになりました。車検時にベルト交換をする必要がなくなった付随効果もあります」

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | トヨタ・プリウスはなぜ300cc排気量を拡大したか