TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンは4月6日、「パサート」「パサート・ヴァリアント」「パサート・オールトラック」のマイナーチェンジ版を発売した。ヴァリアントTDI R-Line(車両本体価格584万9000円)をサンプルに、変更点を確認していこう。
マイナーチェンジ版には、最新のフォルクスワーゲン(VW)デザインが与えられている。フロントマスクの基本構成はマイナーチェンジ前を受け継ぐが、バンパー下部には「への字」のキャラクターラインが加えられ、フォグランプのベゼルが際立っている。細部の処理は異なるが、T-CrossやT-Rocが漂わせる雰囲気に近づいた印象だ。従来、フロントグリルやバンパーは横方向のラインが目立っていたが、マイナーチェンジ版は明確な格子状になっている。
遠くからだとはっきりわからないが、VWのバッジは最新のフラットなデザインが採用されている。リヤはそのVWバッジの下に「PASSAT」の車名ロゴが配置された。フロントもリヤも大がかりな変更ではないが、充分に新しさを感じさせる。ヘッドライトは最新のLEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT」に置き換えられた。フロントカメラで対向車や先行車を検知し、LEDを個別に制御することで最適な配光を提供する。いわゆるアレイ式のADB(可変配光システム)だ。左右の方向指示がダイナミックターンシグナルになったのも、新しさを感じさせる要素である。
インテリアもエクステリアと同様に、基本構成を受け継いでいる。小さな変更が施されているに過ぎないが、鮮度を高める効果は高いと感じた。例えば、ダッシュボードの中央にはこれまでアナログ時計が鎮座していたが、マイナーチェンジ版はバックライト付きのPASSATロゴに変わっている。たったそれだけのことだが、ずいぶん垢抜けたムードになった。
ステアリングの奥にあるメーターは従来からデジタルの設定があったし、センターのインフォテインメントシステムは地図の拡大/縮小を物理ダイヤルで行なうのではなく画面に触れて行なうタイプで、これも従来どおり。ただし、常時コネクテッドに進化している。マイナーチェンジ版はエアコンの操作パネルから物理ダイヤルがなくしてタッチパネル式とし、一段とデジタル度が増した。ダッシュボードに使っている素材は従来どおりのようだが古くささは感じさせず、充分に鮮度を保っていると感じた。
EA288型の2.0ℓ直列4気筒ディーゼルエンジンは従来どおりだ。新しい生産モジュールのMQBと同時に導入されたこのエンジンは、片側に吸気バルブと排気バルブが交互に並んでいるのが特徴だ。通常は片側に吸気バルブが一列に並び、反対側に排気バルブが一列に並んでいる。ところが、EA288は吸気、排気、吸気、排気の順に並ぶ「ローテーテッド」のバルブレイアウトを採用している。1本のカムシャフトが吸気と排気両バルブの開閉を受け持つわけだ。
そのうえで、片側(吸気マニフォールド側、搭載状態で車両前側)に可変バルブタイミング機構(VVT)を採用。冷間時の始動性を確保すると同時に、部分負荷ではNOxと煤の発生量を減らすような制御を取り入れている。NOxの浄化に関してはAdBlueを用いた後処理装置を備えているが、(高圧/低圧EGRも含め)燃焼そのもので有害物質の発生を抑える努力もしているということだ。
最高出力は190ps(140kW)/3500-4000rpm、最大トルクは400Nm/1900-3300rpmを発生。数値に変更はない。マイナーチェンジで変わったのは、トランスミッションだ。従来は6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション、VWの呼称ではDSG)を搭載していたが、マイナーチェンジ版は7速DCTを搭載する。6速では1700rpm前後だった100km/h走行時のエンジン回転数は、7速化によって1400rpm前後になった。燃費の向上しろまでは確認できていないが、常用回転数が低くなっているのだから、悪くなってはいないだろう。低回転化はエンジン音の車室内への侵入に関しても恩恵をもたらす。高速巡航時はほとんど、いや、まったくといっていいほどディーゼル特有のノイズは気にならない。
シフトレバーの左側にある「MODE」切り替えのボタンを押すと、アダプティブシャシーコントロールのDCCを「エコ」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」に切り換えることができる(TDI R-Lineにのみ標準装備)。「スポーツ」を選択したときの効果はわかりやすく、スポーツグレードにふさわしい引き締まった脚に早変わりする。
ちなみに、ガソリンエンジン仕様は従来の1.4TSI(1.4ℓ直4直噴ターボ)から、1.5TSI(1.5ℓ直4直噴ターボ)に置き換わっている。見た目の刷新だけでなく、動力性能や安全性能、ITの点で技術の刷新を行ったのがパサートのマイナーチェンジだ。現行世代の国内デビューから約6年が経過しているが、充分に鮮度を保っているのは、最初の段階での作り込みがしっかりしているからだろう。最新技術を取り入れたことにより、一段と魅力を増している。
VWパサート ヴァリアントTDI R-Line
全長×全幅×全高:4785mm×1830mm×1510mm
ホイールベース:2790mm
車重:1610kg
サスペンション:
F|マクファーソンストラット式
R|4リンク式
タイヤ&ホイール:235/40R19
駆動方式:FF
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHCディーゼルターボ
型式:DFH型(EA288型)
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0mm×95.5mm
圧縮比:9.3
最高出力:190ps(140kW)/3500-4000rpm
最大トルク:400Nm/1900-3300rpm
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射(DI)
燃料:軽油
燃料タンク:66ℓ
燃費:
WLTCモード燃費 16.4km/ℓ
市街地モード 13.2km/ℓ
郊外モード 16.2km/ℓ
高速道路モード 18.4km/ℓ
トランスミッション:7速DCT
車両本体価格:584万9000円