閑話休題。さてベスパP125Xのタイヤ交換をしよう。まずはホイールからタイヤを外すのだが、P125Xには10インチの合わせホイールが採用されている。合わせホイールならカンタンでしょ、と思うだろう。まずは続きをご覧いただきたい。
タイヤを外すには、まずタイヤからエアを抜く。バルブへ写真のように細いドライバーなどを差し入れエアを抜くのだが、できるだけ早く抜きたいのでタイヤの端を足で踏みながらだといい。ただP125Xはホイールが合わせタイプなのでタイヤにチューブが入っている。タイヤをつけた状態だと完全には抜けないことを忘れずに。
バルブからシューシュー言わなくなったら、合わせホイールを外すため5個所で固定しているナットを外そう。P125Xには13mmのナットが使われているので、工具を間違えないようにしたい。またナットにはスプリングワッシャーが付いているので紛失に注意しよう。今回外して発覚したのだが、このP125Xは以前にタイヤ交換をしているらしく、このスプリングワッシャーが1個所だけなく、普通のワッシャーが使われていた。これは完全にNGなのでスプリングワッシャーを用意しておこう。
ホイールからタイヤを外すのにタイヤレバーは必需品。マイナスドライバーで代用する例もあるようだが、圧倒的に効率が悪いので素直にタイヤレバーは用意しておこう。まずエアが抜けたタイヤとホイールの隙間へタイヤレバーを入れる。タイヤレバーでタイヤがホイールの内側へずれるように力を入れると、合わせホイールの裏表に若干隙間が生まれる。この隙間へもう1本のタイヤレバーを入れておいて、もう1本のタイヤレバーでタイヤ全周を広げていくのだ。
この時のポイントは合わせホイールの表側から作業すること。表側は裏側よりリムの幅が狭いので比較的抜きやすいのだ。ホイールからタイヤがズレたら、あとは根気よくタイヤレバーでタイヤを抜いていこう。
ホイールの表側は比較的カンタンに外すことができる。なぜならリムの幅が狭いから。問題なのはリムの幅が広い裏側で、こちらはそうカンタンには抜けてくれないので気合を入れていこう。その前にタイヤからチューブを抜いておく。
前述したようにチューブはタイヤが付いた状態だと完全にエアが抜けない。そこでもう一度バルブにドライバーを刺してチューブを手で掴むようにしてエアを抜いていくのだ。L字型のバルブを抜くにはコツのようなものが必要だが、こればかりは自分で覚えるしかない。抜けないことはないのでチューブを傷つけないように注意して行おう。
裏側のホイールからタイヤを外すため、まずはタイヤレバーを使って表側と同様にタイヤのビードを落とす。この時、「バリッ」という感じの音がするのでビードが落ちると誰でも気がつくことだろう。今回は1本目を外すのに15分くらい格闘しただろうか。コツはタイヤを立ててタイヤレバーを入れつつ潤滑剤を吹く。5〜10センチ間隔ずつレバーをズラしてビードを落としていくことだろうか。
だが悪魔は2本目に潜んでいた。全然ビードが落ちてくれないのだ。数分頑張っては数分休むこと4回ほど。ここでタイヤレバー作戦は諦めた。ではどうする。写真のようにタイヤレバーで隙間を押し広げた状態を片手でキープしつつ(これが結構タイヘン)、レバーの両脇へマイナスドライバーを差し込むのだ。格闘時間は実に1時間近くになってしまった……。
またしても腰に悪い作業となってしまったが、まだ元気なので続きを行う。2本のタイヤ+ホイールを分解したら、お次は恒例のサビ落としだ。先ほどビード落としに苦労したと書いたが、これはホイールがサビによりタイヤと固着していたから。このまま新品タイヤを組むと、次の時はさらにサビが広がり苦労するのは目に見えている。そこでサビを落としておこう。
モノが大きいので今回はサンドブラストでサビを落とすことにした。以前の記事でも書いたが我が家の場合、コンプレッサーの容量が少ないのでサンドブラストがなかなか思うように役立たない。今回気長に作業して判明したが、コンプレッサーの圧力よりタンクの大きさが肝心のようだ。タンクが小さいので1分使うとエアが足りなくなり、次の作業まで4〜5分待たなければならない。だから時間がかかるが、手でシコシコとサビを落とすにはタイヤ外しで体力を使いすぎた。
なんとも困ったサンドブラストだが、結局1日で2本分のサビを落とすのは無理だった。というわけで2日目に突入。これだけ長い時間かけたので、作業中はマスクを着用した。マスクといってもコロナ対策のものではなく、防塵用のいわゆるプロ仕様。サンドブラスト中、キャビネットからはどうしてもブラスト用メディアが吹き出る。素顔だとメディアをそのまま吸い込むことになるからだ。
ブラストを終えて顔を拭くと、まぁ見事に汚れている。プロ仕様のマスクをしていても、やはり鼻の中まで汚れは侵入していて、写真を載せるのは自主規制するほどティシュペーパーが汚れていた。
ブラストを終えたホイールをパーツクリーナーで脱脂したら、まず下地としてプラサフをスプレーする。これが乾燥したらホイール用の銀スプレーを吹くのだ。さらにクリアを吹くと保護にもなるが、割と輝きがあるスプレーなので今回はクリアなしで仕上げた。
缶スプレーは寒い時期だと作業性が悪い。できれば暖かい時期が理想だが、寒い場合はお湯を張った鍋にスプレーを入れて温めるなんて裏技もある。また、できるだけスプレー缶を振ってから作業したい。
ホイールからタイヤを外してサビを落とし缶スプレーしただけなのに、丸2日もかかってしまったが、まずまず満足できる仕上がりになった。またいずれサビは出るだろうが、リムの内側もここまで塗装できればしばらく大丈夫だろう。次回はタイヤを組んでワイヤー関係をなんとかしたいと思っている。