まずは電動化について。レクサスは2005年のRX400hの発売以来、20年末までに約193万台のHVやEVなどの電動車を販売してきた。現在では、世界約90の国と地域で9車種の電動車を展開している。
25年までに約20車種の新型・改良モデルを投入するが、そのうち、電動車は10以上を占める予定だ。また、25年までには全車種に電動車を設定し、電動車の販売比率がガソリンエンジン車の比率を上回ることが目標だ。また、50年には走行のみならず製造から廃棄、リサイクルまでを含めたライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを目指すという。
そうしたクルマづくりの拠点とすべく、レクサスは24年3月に新たな事業所を開設する。場所はトヨタテクニカルセンター下山(愛知県豊田市)だ。
この事業所は、レクサス棟とメッセ棟で構成される。
レクサス棟は開発の中心となり、1階にガレージエリア、2階にオフィスエリア、3階にデザインエリアが設けられる。
ガレージエリアでは、ニュルブルクリンクのピットのように、あらゆる機能のメンバーがプロジェクトごとに集まり、現場でのリアルなクルマづくりと最先端のデジタル機能を融合させ、アジャイル開発を進めていくという。
デザインエリアでは常にクレイモデルを前にデザインを行うなど創造性を引き出す工夫を随所に施すほか、デザイナーのみならず生産技術や空力など実験部のメンバーもデザイン開発において新しいアイデアを議論できる環境を整える。
一方のメッセ棟は、社外のビジネスパートナーとの共創の場となるという。そのために、クルマに触れながらコミュニケーションの取れるガレージや多目的ホールを設ける。
レクサスが掲げる今後のブランド変革を象徴するコンセプトカーが、「LF-Z Electrified」だ。
プラットフォームはEV専用のもので、モーターを前後に搭載した四輪駆動モデル。その制御には「DIRECT4」という新技術を採用している。FF、FR、AWDといった具合に、走行状況に応じて駆動方式を適宜切り替えることも可能だ。
デザインにも新しい考え方が取り入れられている。レクサスといえば、糸を巻き取る紡錘をイメージしたスピンドルグリルが特徴だ。ラジエターグリルが不要となるEVでは、スピンドル形状をボディ全体の造形として表現する「スピンドルボディ」に挑戦したという。
インテリアにも「Tazuna」と称する新コンセプトを導入した。ARヘッドアップディスプレイを採用してステアリングスイッチと高度に連携させ、視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく、運転に集中しながらナビやオーディオ、ドライブモード選択などの操作が可能となっている。人と馬が手綱で意思疎通を図るのが発想のヒントとのことだ。
また、AIによる音声コミュニケーション、スマホでドアロック開閉が可能となるデジタルキー、前席と後席をつなぐルーフセンターのタッチパネル、次世代のマークレビンソンオーディオ、室内の静粛性を向上させるノイズキャンセリングなど、先進機能が満漢全席となっている。
レクサスは今年、2車種の新型モデルを発表する予定だ。また、25年までに投入するニューモデルの中には、スポーツモデルやこれまでにない新ジャンルのモデルも含まれるという。変革の時を迎えようとしているレクサスの今後が楽しみになってきた。
【LF-Z Electrified・主要諸元】
全長(mm):4,880
全幅(mm):1,960
全高(mm):1,600
ホイールベース(mm):2,950
重量(kg):2,100
航続距離[WLTP](km):600
バッテリー容量(kWh):90
充電電力(kW):150
電池:リチウムイオン電池
冷却方式:水冷
0-100km加速(秒):3.0
最大速度(km/h):200
最大出力(kW)/最大トルク(Nm):400/700