今回の生産終了の大きな要因は、法規制の強化に対応するのが困難なこと。例えば、自動ブレーキ搭載の義務化。S660はホンダのラインナップの中で、数少ない安全運転支援システム「ホンダセンシング」の非搭載モデルだ。ホンダセンシング搭載のためにS660をモデルチェンジしたとしても、その投資に見合ったリターンが見込めないということなのだろう。
ちなみに自動ブレーキ搭載の義務化は21年11月から新型車に適用されるが、既存車は25年12月からが対象。だからS660にはまだ猶予があるはず…なのだが、22年3月に生産終了が決定したのはちょっと残念だ。
S660は特殊な作りの少量生産モデルなので、ホンダオートボディー(旧八千代工業の車両組み立て部門)で生産している。そういった事情も今回の早すぎる生産終了に関係しているのかもしれない。
そんなS660の生産終了のアナウンスと同時に発表されたのが、特別仕様車「S660モデューロX バージョンZ」だ。
S660モデューロXは専用サスペンションや空力パーツを採用する、ホンダアクセスが開発したコンプリートカーだ。元レーシングドライバーのドリキンこと土屋圭市さんが開発アドバイザーを務め、スポーティなハンドリングと上質な乗り心地を両立した走りに仕立てられている。
今回登場するバージョンZは、そのモデューロXをベースに内外装に専用装備が施された特別仕様車だ。”Z”はアルフベットの最後の文字で、S660を締め括るという意味が込められている。そういえば、ビートの最後の特別仕様車の名前もバージョンZだった。
S660モデューロX・バージョンZは6速MTのみの設定で、価格は315万400円。特別装備の数々は、以下のとおりとなっている。
【エクステリア】
・特別色「ソニックブレー・パール」を設定
・エンブレムをブラッククローム調に変更
・専用アクティブスポイラーをブラック塗装に変更
・アルミホイールの塗装をステルスブラックに変更
【インテリア】
・メーターバイザーパネル、助手席エアアウトレットパネル、センターコンソールパネルをカーボン調に変更
・ドアライニングパネル[スエード(ブラック)×合皮(ボルドーレッド)×グレーステッチ]
・専用シートセンターバッグ(Modulo Xロゴ入り)
・専用アルミ製コンソールプレート(Verzion Zロゴ入り)
なおホンダではS660の生産終了に際して、オーナーとともにつくりあげるコンテンツ「#WELOVES660」をホームページで実施する。S660との動画や写真をSNSで投稿してもらい、それらを繋ぎ合わせたスペシャルムービーを公開予定だという。また、S660のオーナー・開発者・製造者のエピソードやメッセージを「S660 History」としてホームページで公開予定なので、こちらも要チェックだ。
「#WELOVES660」 https://www.honda.co.jp/S660/WELOVES660/「S660 History」 https://www.honda.co.jp/S660/history/S660の発表時に大きな話題となったのは、開発責任者の椋本陵さんが20代の若さだったこと。今回、S660生産終了の発表に際して椋本さんは「私がオーナーズミーティングに参加した際は、お客様から『S660を作ってくれてありがとう』とお礼を言われることがありました。S660が生産を終了するのは残念ですが、あと1年ありますので、購入を迷われている方はぜひ後悔のないようご検討ください」とビデオメッセージを寄せてくれた。