四駆系雑誌の元編集者という経歴を持つ吉田直志さんが選んだ「理想の2台持ち」は、スズキ・ジムニーとフォード・フィエスタ。実際に吉田さんが現在所有している2台なのだが、ここに行き着くまでの紆余曲折を辿ってみよう。




TEXT●吉田直志(YOSHIDA Naoshi)

いつかは絶対に乗りたいと思っていたヨーロッパフォード

2台持ちは理想であり、現在、実践しており、是非ともお勧めしたいスタイルだ。なので、ここでは理想だけ、妄想だけで、語るのではなく、自らが体験し、感じてきたことを書きたいと思う。

マツダの6代目ファミリア。写真は1.6Lターボ4WDのGT-X。

僕はスーパーカー世代だったこと、ロータリーエンジン搭載モデルを乗り継いできた父親の影響(しかもクーペだった)、そして、自らフィールドへ出掛けることを趣味としていたことから、そもそもクルマを1台に絞ることは難しかった。もちろん、若い頃は2台持ちなんて夢のまた夢。それゆえに、当初はクロカンヨンクテイストをもっているだけではなく初心者マークにもぴったりのスズキ・エスクードを選んだ。




しかし、道なき道を進むことができても、心のどこかで走りを求めていたようで、ストレスはたまる一方だった。と、そこで、スポーツマインドを満たし、たとえ、クロカンはできなくてもヨンクというキーワードをもったモデル、そしてWRCの影響もあって、マツダ・ファミリア 4WDターボ(6世代目)へとスイッチすることに。




ところが、最低地上高は乗用車レベルであってもヨンクだからと高を括っていたら、デート中に砂浜で大スタックするし、雪降る首都高では180度ターンをやらかすし始末。分かってはいたものの、クロカンヨンクとスポーツヨンクは別モノということを自ら悟り、求めているのは両方の性能であることを再認識。そう、まったく異なる性能を、1台で納得させようとするのには、無理があると、悟ったのだ。




ということで、ここから三菱ジープを加えての2台体制をスタート。やがて、クロカンヨンクのほうはトヨタ・ランクル70系となり、一方のスポーツヨンクは、三菱ランサーエボリューションを経てスバル・インプレッサWRX STIへと乗り換えており、気付けば、ともに、それぞれの性能を極めたモデルに乗っていた。ま、ある意味、理想の2台スタイルの完成形だ。

ジープの2代目グランドチェロキー。

ところが、ここに、ジープ・グランドチェロキー(2世代目)という誘惑が舞い込んできた。実は上がりのクルマとして考えていたのだが、海外試乗会での印象がとても良く、さらに、最高峰のパワーユニットとボトムのトリムラインを組み合わせたグレード(こういったグレードが好み)を日本に導入したこともあり、これは買わねばならないと購入。結果、このグランドチェロキーには14年以上、23万km以上乗ることになった。




大排気量エンジンがもたらすゆとりはスポーツ4WDの乗り味とは大きく異なったものの、スポーツカーのような走りをしない限りは、ワインディングでも愉しさが存在していたし、見た目によらずクロカン性能が高かった(2世代目までの走破性は抜群)こともあり、かつて感じたような不足を感じることはなかった。




できることならば修理してでも乗り続けていきたかったが、ATトラブルで100万円以上の出費となることを聞かされて、なくなく廃車に。

さて、次は何を選ぼうかと迷っていたところに、フォードジャパンが日本市場から撤退(編注:2016年のこと)することがアナウンスされた。実は、ヨーロッパフォードのモデルに深く感銘を受け、いつかはヨーロッパフォードに乗りたいと思っていたことから、これも今乗らなきゃいけないとばかりに、フィエスタを選択。

フォード・フィエスタ。写真は2008年登場の6代目のフェイスリフトモデル。

しかし、フィエスタではオフロードコースを走ることも、半ばラッセルしながらのスノードライブも不可能。




ということでオフロードを走れるモデルをプラスしての2台体制を考えたが、足繁く通っていたオフロードコースは難関コースを誇る山梨県のスタックランドフォームオフロードコースであり、つまり、乗用車ベースのヨンクじゃ太刀打ちできないし、いくらクロカン性能を誇ろうとも傷なんて簡単についてしまうコースゆえに価格の高いモデルも御法度。




さて、どうしようかと悩んでいた時に、知り合いが過走行気味のスズキ・ジムニー(当時は現行型)を手放すというので、半ば、オフロードコースを走るためだけでもいいと、譲ってもらうことになった。そう、傷つけても気にならないし、レベルは高くないとはいえ、前後リジッドサス+パートタイム4WDゆえの走破性への期待もあってのことだった。

スズキの先代ジムニー。

そして、これが現在の2台体制となっている。ちなみにそのジムニーは、前オーナーがレカロシート(しかも、初代ビッグホーン純正品)を組み込んでいたこと、これといった不調が見当たらないこともあって、快適至極で、さらに走らせて愉しいというおまけ付き。プライベートで石川県の能登半島へとよく遊びに行くのだが、冬はスタッドレスタイヤをはかせて、このジムニーで出掛けてしまうほどの活躍ぶり。しかも、ほぼ下道で。




もちろん、フィエスタにも満足しており、走りがいいから、ふらっと北アルプスの乗鞍温泉や、八ヶ岳までふらっと出掛けてしまうことも多くある。




ちなみに、自動車ライターという仕事をしている上では、自らが所有しているクルマに対して、こだわりという語りが出来ることも重要。そういう観点からすると、レカロシートを入れるだけですこぶる愉しくなるジムニーと、フォードジャパンの最終モデルであるフィエスタには、語れるネタがたくさんある。




そうそう、グランドチェロキーからこの2台にして、すごく良かったことがある。それが自動車税だ。グランドチェロキーのエンジンはV8・4.7Lゆえに8万8000円/年だったが、現在はジムニー(軽自動車)が7200円/年、フィエスタ(1.0Lターボ)が2万9500円で、合計しても3万6700円とグランドチェロキー時代の半分以下。けちくさい話だが、燃料費やメンテ代といったランニングコストも大幅に下げられた。




こうして、振り返ってみると(振り返るにはまだ早いのかもしれないが)、良いクルマを1台所有するというスタイルも愉しかったが、今の、この2台スタイルのほうが、身の丈にあっていると感じている。これは、50歳代という年齢もあってのことだと思う。若かりし頃には、想像できなかった2台持ちスタイルだ。

『理想の2台持ち』は毎日更新です!




1台でなんでもこなすよりも、目的を分けた2台を所有することで、カーライフはもっと豊かになる。ということで、自分のライフスタイルや好みに合わせた理想の2台の組み合わせを、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【理想の2台持ち|スズキ・ジムニー&フォード・フィエスタ】本格的な四駆と欧州コンパクトカー。2台足しても自動車税は3万6700円!(吉田直志)