REPOR●北秀昭(KITA Hideaki)
※注:国内での発売は未定
2012年にヨーロッパで発売されたホンダのオフロードモデル、CRF250L。2017年にはダカールレース仕様車をイメージしたアドベンチャーモデル、CRF250ラリーをラインナップ。今回発表された2021年モデルでは、軽量な車体に、排気量アップした286ccエンジンを搭載。パワーウェイトレシオは13%アップを実現している。
新排ガス規制「ユーロ5」に適合した水冷4ストロークDOHC 4バルブ286ccエンジンは、最高出力20.1kW(27.3ps)/8,500rpm。また、55mm→63mmのロングストローク化により、最大トルクは前モデルの18%増となる26.6Nm/6,500rpmにアップ。
※250の前モデルは最大出力18.2kW(24.7ps)/8,500rpm、最大トルク22.6Nm/6,750rpm
※250の国内仕様は最大出力18.0kW(24.5ps)/9,000rpm、最大トルク23.0Nm/6,500rpm
また、カムシャフトのプロファイルを見直し、吸排気バルブの開閉タイミングを変更して中速域でのトルクとパワーを大幅に向上。ミッションのギヤ比も見直され、高速域での巡行特性をアップ。アシストスリッパークラッチの導入により、急激なシフトダウン時のリヤタイヤのロックを回避し、クラッチレバーの負荷を20%削減しているのもポイントだ。
シリンダーはオフセット型を採用し、内部の摩擦損失を低減。ピストンには耐摩耗性に優れたモリブデンコーティングを実施。オイルポンプはオイルのエアレーションを防ぐ、内部リリーフ構造を採用。クランクシャフトにはハーフスプリットの圧入金属ベアリングを導入し、クランクベアリングは鋳鉄ブッシュを使用して振動を低減。
冷却システムとしては、車体左側に12.7kWの大容量ラジエーターを装備。また、空気の流れを改善するため、バッフル付きのポリプロピレングリルで保護。薄いガイドリング冷却ファンを使用して、渋滞やオフロード走行でのトリッキーな状況での均一な温度維持を実現しているの見逃せないところ。
フレームは新設計されたスチール製セミダブルクレードルを採用し、2.15kg軽量化。また、新しいアルミ製スイングアームにより、4kgのボトムヨークの軽量化に貢献。走行フィールを向上させるため、剛性バランスも変更されている。
ワンピースの鋳造アルミスイングアームは、550gの軽量化に加え、横方向の剛性を23%柔軟化。ピボットポイントのすぐ後ろで15mm狭くなり、滑らかな断面形状を使用して均一なたわみを作成しているのが特徴だ。チェーンアジャストカラーには、プッシュ型のアルミを使用。スチールボトムヨークはアルミ用に変更し、ステアリングの反応性をアップ。
Φ43mmのショーワ製倒立型フロントフォークは、ストロークを260mmに増やすとともに、スプリングの重量とダンピングの設定を変更して、幅広い地形と速度を正確に制御できるように進化。
プロリンク式のリヤサスペンションは、240mmから260mmのアクスルストロークを確保。ショーワ製ショックアブソーバーは、シングルチューブデザインを採用している。
下部フレーム、エンジンクランクケース、オイルドレンプラグの改良により、最低地上高は255mmから285mmに増加し、フレームとエンジンは20mmアップ。キャスター角とトレール長は27.6°/113mm→27.5°/109mmに変更され、ホイールベースは1455mmにロング化。回転半径は小回りの効く2.3mに設定された。
シングル式のフロントディスクブレーキには、Φ256mmローター(ラリーはΦ296mm)+2ピストンキャリパーをチョイス。リヤは220mmディスク+シングルピストンキャリパーを採用。リヤマスターシリンダーは軽量化され、デザインも変更。ディスクローターは、CRF250R/CRF450Rから継承されたウェーブデザインとしており、悪条件での卓越したセルフクリーニング機能を獲得。2チャンネルABSも標準装備済みだ。
前後ホイールに採用された軽量アルミリムは、バネ下重量をさらに軽減。2021年モデルには、アルマイト処理の表面に、光沢仕上げの研磨を実施。ブロックパターンのエンデューロスタイルのタイヤ(フロント80/100-21 51P、リヤ120/80-18 62P)は、幅広いライディングに対応。
21インチの前輪と18インチの後輪は、起伏の激しい地形での安定性をアップ。オフロード専用タイヤの装着も可能だ。機械加工されたリヤスプロケット、M8ボルト(M10の代わりに)、中空リヤアクスルを使用すると、それぞれ240g&160gの軽量化を実現。
シャープでエッジを効かせた車体には、スリムなタンクとシートを採用。ライディングポジションも変更され、オフロード走行や街中でも扱いやすい、軽快なステアリング特性を促進。メーターはポジティブLCDインストルメントディスプレイを新採用。
CRF300Lに採用された7.8Lの燃料タンクは、前方への移動を補助するため、前モデルよりも190g軽量化およびスリム化されており、前方のシートセクションが狭くなっている。リヤナンバープレートブラケットも大幅に削減され、300g軽くなり、アグレッシブな形状のフロントマッドガードも軽量化。
コントロール性能を促進するため、ライディングポジションは微妙に変更。ハンドルバーがわずかに引き戻され、フットレストが下げられて後ろに移動。重いオフロードブーツでのギアチェンジが容易になった。シート高は全モデルよりも5mm増加した、880mmに設定。
新設計されたメーターは、70g軽量されたLCDディスプレイタイプを採用。鮮明な白いディスプレイに大きな黒い数字が表示され、視認性もGOOD。メーターはスピード&回転計に加え、ギヤポジションインジケーター、燃費計、平均速度、ストップウォッチも設置。
CRF300ラリーは長距離走行にも耐えうる仕様に設計。CRF450ラリーにも採用されたフロントスクリーンや大型のサイドシュラウドは、ライダーの体を効果的にガードし、優れた防御性を確保。
左右のグリップ部に装備されたハンドガードは、手とブレーキレバー&クラッチレバーの両方を保護。エンジン下部を守るカバーに加え、リヤレバーは折り畳み式を採用。ヘッドライトはコンパクトな非対称のデュアルLEDユニットを採用。メーターのインジケーターもLEDとしている。
ナンバープレートブラケットは小型化し、前モデルよりも300g軽量。フロントマッドガードはアグレッシブな形状に変更し、さらなる軽量化を実現。燃料タンク容量は、前モデルよりも2.7L増加して12.8Lを確保。燃費は32.3km/Lを達成し、WMTCモードでは410kmを超える航続距離を実現。
写真上は2020年11月、フルモデルチェンジされた国内仕様の「CRF250L/Sタイプ」と「CRF250ラリー/Sタイプ」。国内において軽二輪に属する250モデルは、車検の必要がなく、維持費が安いのが大きなポイント。
外観は酷似した250と300。各車の主要諸元を比べてみよう。
※注:「CRF250L Sタイプ」「CRF250ラリー Sタイプ」は前後サスペンションの伸長により最低地上高を確保し、オフロード走破性を追求。専用形状のシートを採用し、オフロード走行時のライディングポジションの自由度を向上させたモデル。通常モデルの「CRF250L」「CRF250ラリー」は、オフロード走破性を高める最低地上高の確保と日常での扱いやすさに配慮した足着き性を両立したモデル。
【CRF250L】
排気量:249cc
全長×全幅×全高:2,210mm×820mm×1,160mm
車両重量:140kg
ホイールベース:1,440mm
最低地上高:245mm
シート高: 830mm
ボア×ストローク:76.0mm×55.0mm
圧縮比:10.7
最高出力: 18kW(24ps)/9,000rpm
最大トルク:23Nm/6,500rpm
燃料タンク容量:7.8L
【CRF250L Sタイプ】
排気量:249cc
全長×全幅×全高:2,230mm×820mm×1,200mm
車両重量:140kg
ホイールベース:1,455mm
最低地上高:285mm
シート高: 880mm
ボア×ストローク:76.0mm×55.0mm
圧縮比:10.7
最高出力: 18kW(24ps)/9,000rpm
最大トルク:23Nm/6,500rpm
燃料タンク容量:7.8L
《CRF250ラリー》
排気量:249cc
全長×全幅×全高:2,200mm×920mm×1,355mm
車両重量:152kg
ホイールベース:1,435mm
最低地上高:220mm
シート高:830mm
ボア×ストローク:76.0mm×55.0mm
圧縮比:10.7
最高出力: 18kW(24ps)/9,000rpm
最大トルク:23Nm/6,500rpm
燃料タンク容量:12L
《CRF250ラリー Sタイプ》
排気量:249cc
全長×全幅×全高:2,230mm×920mm×1,415mm
車両重量:152kg
ホイールベース:1,455mm
最低地上高:275mm
シート高:885mm
ボア×ストローク:76.0mm×55.0mm
圧縮比:10.7
最高出力: 18kW(24ps)/9,000rpm
最大トルク:23Nm/6,500rpm
燃料タンク容量:12L
【CRF300L】
排気量:286cc
全長×全幅×全高:2230mmx820mmx1200mm
車両重量:142kg
ホイールベース:1455mm
地上高:285mm
シート高:880mm
ボア×ストローク:76.0mmx63.0mm
圧縮比:10.7
最大出力:20.1kW(27.3ps) / 8500rpm
最大トルク:26.6Nm / 6,500rpm
燃料タンク容量:7.8L
《CRF300ラリー》
排気量:286cc
全長×全幅×全高:2230mmx920mmx1415mm
車両重量:153kg
ホイールベース:1455mm
地上高:275mm
シート高:885mm
ボア×ストローク:76.0mmx63.0mm
圧縮比:10.7
最大出力:20.1kW(27.3ps) / 8500rpm
最大トルク:26.6Nm / 6,500rpm
燃料タンク容量:12.8L
諸元上では、CRF300LとCRF250L Sタイプの全長・全幅・全高・ホイールベース・地上高・シート高は同寸。また、CRF300ラリーとCRF250ラリー Sタイプの全長・全幅・全高・ホイールベース・地上高・シート高は同寸。250と300のホイールサイズは前後とも同寸。タイヤはフロントが80/100-21M/C 51P、リヤが120/80-18M/C 62Pの同寸だ。
250と300とも、同系の水冷4ストロークDOHC 4バルブを採用。ボア径は76.0mmの同寸だが、ストローク長は250の55mmから、300は63.0mmにロングストローク化。これによりパワーアップと粘り強くてトルクフルな乗り味を獲得している。
国内仕様の250は、灯火類にすべてLEDを採用。一方、欧州仕様の300の場合、ラリーのヘッドライトにはLEDを採用しているが、Lのヘッドライトはオーソドックスなハロゲン、テールランプやウインカーはリーズナブルな電球を採用。ちなみにタイ仕様の300には、L&ラリーともフルLEDが導入されている。このあたりは、販売先であるお国事情がある模様。
諸元上、250と300のラリーには、燃料タンク容量に0.8Lの差あり。燃料タンク容量が異なるのか、はたまたリザーブタンク容量の記載の有無によるものなのかは不明。
※【カッコ内】はCRF300ラリー
エンジン:水冷4ストロークDOHC 4バルブ単気筒
排気量:286cc
ボア×ストローク:76.0mmx63.0mm
圧縮比:10.7
最大出力:20.1kW(27.3ps) / 8500rpm
最大トルク:26.6Nm / 6,500rpm
オイル容量:1.8L
燃料システム:PGM-FI電子燃料噴射
燃料タンク容量:7.8L【12.8L】
燃費:32.3km/L
CO2排出量WMTC:73g/km
バッテリー容量:12V-7AH
クラッチタイプ:ウェットマルチプレート、アシスト/スリッパークラッチ
トランスミッション:6速
メーター:LCD
全長×全幅×全高:2230mmx820mmx1200mm【2230mmx920mmx1415mm】
ホイールベース:1455mm
キャスター角:27.5°
トレール長:109mm
シート高:880mm【885mm】
地上高:285mm【275mm】
車両重量:142kg【153kg】
旋回半径:2.3m
フレームタイプ:スチールセミダブルクレードル
Fサスペンション:Φ43mm倒立型フロントフォーク
Rサスペンション:プロリンク式
FRホイール:アルミスポーク
Fタイヤ:80/100-21M/C 51P
Rタイヤ:120/80-18M/C 62P
ABSシステムタイプ:2チャンネルABS
Fブレーキ:Φ256mm【Φ296mm】x3.5mmディスク、2ピストンキャリパー
Rブレーキ:Φ220mmx4.5mmディスク、シングルピストンキャリパー