TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
心を穏やかにしてくれる自然物の代表のひとつに滝がある。華厳の滝、那智の滝、温泉の流れてくる滝もある。北海道のカムイワッカの滝、オンネトー湯の滝。アイヌの言葉でカムイは神、オンネトーは老いた沼と記憶している。カムイワッカの滝は川をさかのぼり、ちょうど良い温度の滝壷はかなり上流にある。30分は登るだろうか。たまたま知り合ったバイクツーリングの人と登り、風呂に入る。かなり深い。滝壺の淵に掴まって入浴するという感じだ。ふざけて彼を奥へ押したら、彼は沈んでなかなか出て来ない。後で聞いたら、彼は泳げなかったらしい。無事で何より。
オンネトーの湯の滝は現在は入れない。天然のマンガンが発見され、2000年に特別天然記念物に指定された。ここは、滝の上が湯船になっていて、滝を見下ろしながら温泉に浸かれる素晴らしい場所だった。特別天然記念物に指定されるはるか以前ではあるが、利用させてもらった。それも何日も風呂に入らない放浪生活で。申し訳なくもあり、自慢でもある。
水の国、日本には大小多くの滝がある。そして昔から、日本人は滝を神聖な物と感じ、名前を付けて大切にして来た。それぞれの滝がその地形で形を作り、個性がある。身近な所でも探してみると、きっとお気に入りの滝が見つかるはずだ。
今回はジムニー(JA71)にドローンを積んで出掛けてみる。小さなヘリポートをジムニー(JA71)のボンネットに作る。約750円。直径75cmのヘリポートだ。これをオレンジのガムテープで貼付ければ、できあがり。ボンネットは少し前にスラントしているので、ボンネットオープナーを引き、ボンネットを少し上げてなるべく水平にする。四角いジムニー(JA71)ならではかな。ジムニー(JA71)のサイドには秘密基地のようにタープを張る。ここでドローンの充電も、食事も出来る。小さいながら、陸の航空母艦。子供の頃の憧れ、秘密基地の再現だ。
ただし、ここからドローンを飛ばして、滝を撮影するのは、僕の技量では無理なので、周囲の状況を確認するだけに留める。目視出来ない所まで、飛ばすことは規定で制限されている。徒歩でゆっくりと滝を目指しながら場所を探し、どこにドローンをホバリングさせどう写真を撮るかを、考えるのが楽しい。もう少し左だな、少し上に上げようか。途中の滝以外のせせらぎや、岩や苔、それを肌で感じるのも間違いなく魅力的だ。
滝の遊歩道の手前まで、本来はクルマで行けるのだが、長雨や台風で道は流れに浸食され、大きな溝となっている。チャレンジだ。手前にジムニー(JA71)を停め、クルマから降りて、徒歩でどうジムニー(JA71)を走らせるか、イメージを探る。左前輪の位置は?内輪差で右後ろはこの辺りでアタックとなるか?空転させないように、車体の横への傾きは最小限に。そして止まった時の脱出方法も頭に入れておく。幸い一回のアタックで、無事に通過。スタックという面倒な事も起こりえるが、やってみたいと思う心は抑えられない。久しぶりの4Lだ(写真は帰り道。昇りでのこの位置での停車は、リスクが増すので、避けておきたい)。JA71は小排気量であるが、車体が軽いので、扱いやすい4WDなのが魅力だ。ただ、最近のSUVの伸びる足、そして空転時に他の車軸へ動力伝達するシステムは素晴らしい。
ドローンは毎年のようにモデルチェンジされ、GPSやセンサーが装備されて、高性能になっていく。写真よりも、動画向きのアイテムであるが、ホバリングさせて構図を決めて静止画を撮るのにも、充分な性能を発揮してくれる。個人ではできなかったこと、テレビでの世界、あこがれた探検家達、海洋ではあるが、調査船カリプソ号のクストー。そんな彼らの心を、安全にちょっとだけ味わうには、良いアイテムとだと思う。知らなかった世界、気付かなかった美しさが、身近な、そこにもある。法規を守り安全に、そしてドローンロストにならぬように、最大限の注意を払うことが重要である。多くの人が長く楽しむためには、事故はあってはならない。
小さな発見、冒険の後は、ゆったりと秋を楽しもう。秋の味覚を揃えてみた。ダッチオーブンは、錆びさせないように手入れは少し面倒だが、火を入れてしまえば、たまに様子を見るだけで手間要らずだ。ダッチオーブンを使う時は、僕はバーナーはガソリンを選ぶ。また今日もいつものように時を忘れて、ランチの時間は遅れてしまう。秋の気配の涼しい風が、街の、そして人の温もりを思い出させる。