TEXT●山崎友貴(YAMASAKI Tomotaka) 写真協力●PIVOT/BLITZ/工藤自動車
以前にもこのコーナーでお伝えした通り、現行型のジムニー/ジムニーシエラ(JB64/74型シリーズ)から、様々な電子制御が行なわれるようになった。電子制御は現代のクルマには欠かせないものだ。エンジンの出力制御をはじめ、燃費や環境性能、自動ブレーキなどの安全性能装置、トラクションコントロールといったものを、ECUが各部のセンサーからの情報を分析して、統合的に制御する。
なにせ先代のJB23/43型シリーズは、基本設計が20数年前のものだったために、こうした現代的な性能を持ち合わせていなかった。しかし、特段にそれで不便を感じることもなかったし、オフロードに特化したカスタムを施す場合などは、かえって好都合であったのである。
こうしたECUの制御も、かつては中のデータを解析して、燃調マップの一部を書き直すことで改善することができたのだが、昨今のクルマはそう簡単にはいかない。なぜなら、アクセル開度と燃料調整だけでなく、そこにトラクションコントロールやら安全性能装置やらと、様々なデバイスが複雑にからみ、もはやマップのどの部分をいじればいいか分からないほどラビリンス化しているというのだ。
ジムニーの開発者に聞いた話では、同車のECUデータはブラックボックスの部分が多く、おそらくアフターパーツ業界では解析できないだろうということだった。実際、多くのチューナーがECUの解析に挑んでいるが、現在のところ成功したという話は聞かない。
弁当箱(ECUの俗称)の交換がダメでも、現行型ジムニーのドライブフィールを改善する手がないわけではない。何かというと、パワーコントローラー(パワコン、サブコンとも)とスロットルコントローラー(スロコン)の使用である。昨今の電子スロットル車のチューニングに欠かせないアイテムだ。
ジムニーのチューニング業界でもJB64に多用されており、昨今では定番メニューになっている。吸排気系のチューニングのみでもトルクアップやレスポンスアップを実感することができるが、逆にパワコンやスロコンを付ければ、ノーマルの吸排気系でも十分な効果を体感することができる。
ではパワコンやスロコンとは何なのか? パワコンは、ターボのブースト圧を計測するエアフロセンサーに擬似的な信号を送ることで、ブーストアップとパワーアップを図るパーツだ。かいつまんで言えば、センサーに“偽のデータ”を送って、ECUがブーストアップするように騙すのである。
パワコンがブーストアップを促すパーツであるのに対して、スロコンは燃料の噴射量を強制的に変えさせるパーツだ。スロットル開度の疑似信号をECUに送ることで、実際よりもアクセル開度が低いようにECUを騙すのである。その結果、同じアクセル量でもスロコンを通すと、ECUはノーマル状態よりも多い燃料噴射(多めのスロットル開度)を行い、結果、アクセルレスポンスが向上するという仕組みだ。パワー&トルクが上がるわけではないが、まるでエンジン性が上がったように感じる。
こうしたパーツは2〜3万円程度のプライスが多く、取り付け工賃を考えても5万以内で済むものが多い。その費用のわりには効果が高く、満足度が非常に高い商品と言えるだろう。
価格的に手軽なのは、やはりスロコンだ。
ジムニー業界の中でもメジャー商品になっているのが、PIVOT「3-drive・PRO(2万4000円・税別)」。取り付けも比較的簡単で、アクセルに接続されているコネクターからハーネスを抜き、同商品を間に入れる。後は本体ユニットとコントローラーを、適宜な場所に設置するだけだ。4モード17段階のスロットル調整が可能で、ノーマルよりも燃費がいい「ECOモード」も備えている。
BLITZ(ブリッツ)と言えば、チューニング業界ではメジャーなブランドだが、同社もジムニー用のリカバリーアイテムを出している。「パワスロ(6万円・税別)」という商品で、パワコンとスロコンがセットになっている。アクセルレスポンスの改善に加えて、パワーアップが望めるので、ジムニーのR06A型エンジンが持つ潜在性能を引き出すことができるというわけだ。
パワコン+スロコンを付ければ、効果が高いのは当たり前のことで、もはやエンジンルームのスープアップを行なう必要などないのではないかと思ってしまうくらいだ。
ちなみに日本のブランドの製品であれば心配はないと思うが、海外製の安いものを装着すると大きな故障につながることがあるので注意した方がいい。
アクセルレスポンスを向上させるパーツのなかには、こんな製品もある。それが工藤自動車の「ディープフリーズヒュージブルリンク」と「アイスフューズ」だ。周知の通りクルマというのは電力を消費しており、特に昨今のクルマはハーネスだらけだと言われている。電制御化が進むほど電気系統も多くなるわけだが、となるとそれだけ電流にロスが出てくる。
このふたつの製品はいわゆるヒューズで、ロスの要因のひとつになっているヒューズを高効率なものにして、電気がスムーズに流れるようにするというパーツだ。電気がスムーズに流れると、センサー類の精度が高まるため、結果的にレスポンスが上がるのだという。ちなみに同製品は−196℃の液体窒素にひたすことで、原子配列を整えているのだという。
筆者はまだこの商品を使ったことがないのだが、ジムニーユーザーの間で“効果がある”と評判のようだ。ちなみに、メーカーによると、電子制御の塊のような現行型ジムニーよりも、JB23やJA11といった古いジムニーの方が、より大きな効果を実感できると言う。
今回は、ジムニーの不満を解消するチューニングの方法をお伝えしたが、効果は確実にあるのでぜひ試していただきたい。特にタイヤのサイズアップをしている車両は実感度が高いはずなので、オススメしたい。