そのブランドのファンや関係者ならずとも、そう憤慨したくなるような日本未導入モデルは、グローバル化がこれだけ進んだ今なお、数え切れないほど存在する。
そんな、日本市場でも売れるorクルマ好きに喜ばれそうなのになぜか日本では正規販売されていないクルマの魅力を紹介し、メーカーに日本導入のラブコールを送る当企画、今回は2021年にPSAのもとで日本市場への再参入を予定しているオペルのDセグメントFF5ドアセダン&ワゴン「インシグニア」を紹介したい。
TEXT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●PSA
インシグニアは、日本でも初代から最後の三代目まで販売されていた「ベクトラ」の後継モデルで、初代は2008年にデビュー。4ドアセダン、5ドアセダン、ステーションワゴン「スポーツツアラー」と、スポーツツアラーにSUV風のスタイルを与えた「カントリーツアラー」の4種類を設定していた。
現行二代目インシグニアは、2017年3月のジュネーブモーターショーで世界初公開。4ドアセダンは廃止され、かつこの時点では5ドアセダンの「グランドスポーツ」とステーションワゴンの「スポーツツアラー」の二種類に絞られていたが、同年9月のフランクフルトモーターショーで「カントリーツアラー」を発表。また同年に、ホットバージョンの「GSi」をグランドスポーツとスポーツツアラーに用意している。
2020年7月にはマイナーチェンジを行い、パワートレーンのラインアップを変更。従来からの200ps/4250-6000rpm&350Nm/1500-4000rpm仕様およびGSi用230ps/5000rpm仕様(最大トルクは同値)の2.0L直列4気筒ガソリンターボエンジン+9速ATに加え、GM由来の新世代1.5ℓ直列3気筒(122ps/3250rpm&300Nm/1750-2500rpm)および2.0ℓ直列4気筒(174ps/3500rpm&380Nm/1500-2750rpm)ディーゼルターボエンジン+6速MTor8速ATを設定した。
なお、「カントリーツアラー」はこの際に販売が停止されているが、こちらもやや遅れてマイナーチェンジされることだろう。
内外装も一部が変更され、より一層洗練されているのだが、何はともあれエクステリアの写真をご覧いただきたい。グランドスポーツで全長×全幅×全高=4897(GSiは4910)×1863×1455(同1445)mm、スポーツツアラーで4986(同4998)×1863×1500(同1490)mm、ホイールベースは全車共通で2829mmという、伸びやかかつワイドで低重心なプロポーションに、鋭くも要素の少ない整ったデザインが見る者をその瞬間に魅了する。
一方で実用性も充分以上に高く、後席使用時の荷室の奥行きおよび容量は、グランドスポーツが1133mm&490ℓ、スポーツツアラーが1178mm&560ℓ。後席の背もたれを倒した場合は、グランドスポーツが1940mm&1450ℓ、スポーツツアラーが2005mm&1665ℓと、アウトドアレジャーやビジネス用途にも充分使える広大さだ。
オペルと言えば、かつて日本で販売されていた頃から、ドイツ車らしい質実剛健な造りを持ちながらも適度に肩の力が抜けたお洒落さも兼ね備えており、1990年代には低い価格設定やヤナセの販売力も追い風となって、1995~97年には年間3万台以上を販売した。だが2000年代に入ると販売体制の変更もあり、販売は急減。2006年に日本市場から撤退している。
この3車種もスタイリッシュではあるのだが、オペルを知らない、あるいはかつてのオペルにネガティブなイメージを抱くユーザーに強烈なインパクトを与えるには、もう一押し欲しいところ。
そこで、このインシグニアを導入すれば、直接的な販売台数や利益の面で大きく貢献するのは難しいものの、日本でのブランドイメージを回復させる旗振り役となるのは間違いない。GM時代に開発された最後のモデルだけに、サービス体制などの面で難しい所もあると思われるが、グループPSAジャパンの英断を大いに期待している!
■オペル・インシグニア スポーツツアラーGSi(F-AWD)*ドイツ仕様
全長×全幅×全高:4998×1863×1490mm
ホイールベース:2829mm
車両重量:1735kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリンターボ
総排気量:1998cc
最高出力:169kW(230ps)/5000rpm
最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
トランスミッション:9速AT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 前後:245/35R20
乗車定員:5名
車両価格:4万9689.92ユーロ(約630万円)